梅雨から夏にかけては、とくに臭い(におい)が気になる季節。仕事で疲れて帰ったら「リビングに入らないで、すぐにお風呂に入って!」とママや子どもに言われたら…パパとしてはショックですよね。そんなニオイが気になるパパたちのために、「五味クリニック」の五味常明先生にお話を伺いました。
本来の汗は無臭!ニオイのもとは雑菌の繁殖と「悪い汗」

「かきたての汗は無臭なんです。それを放置すると、雑菌が繁殖してニオイの元になる。汗をすぐに拭き取れば、ニオイにはなりません。」と語るのは五味先生。
そもそも、汗は体温調節のための自然な現象なんですね。ただし、五味先生によると、問題なのが「悪い汗」とのこと。
「汗が無臭な理由は、汗を分泌する『汗腺』のろ過機能が働いているから。汗腺が健全に機能していないと、本来は血液中に戻されるはずのミネラル分が、汗として出てきてしまいます。」
この汗はベタベタしていて養分が豊富で雑菌が繁殖しやすく、さらにはミネラルを体外に出してしまうので、慢性疲労などの不調を引き起こしやすいものなのです。まさしく「悪い汗」ですね。
「冷房の効いた部屋で、体を動かさずに仕事をする現代人のほとんどが『悪い汗』をかいている状態です。汗腺の機能不全は、生活習慣が原因。冷房を弱め、ストレッチやウォーキングなどの軽い運動をすることで改善します。風呂上がりはすぐに服を着ないで、汗が自然に引くのを待つ。半身浴でゆっくり汗をかくのも汗腺のトレーニングになります。」
汗のニオイをおさえるには、日頃から「いい汗」をかく習慣が必要なんですね。
制汗剤の使用には注意が必要!?
汗の発生を抑えるのに便利な制汗剤。しかし、制汗剤の使用には注意が必要だと五味先生は言います。
「制汗剤を使ってもいいのは、わきと足だけ。その2カ所は密閉されているので、体温調節に関係しません。それ以外の場所に制汗剤を使って汗を抑えてしまうと、ヘタをすれば熱中症になってしまいます。殺菌作用のあるアルコールシートなども、皮膚の常在菌を殺してしまうので広範囲の使用は控えましょう。ベストは水で濡らしたタオル。それで十分です。」
次に、汗と同様に気になる「アノ場所」の臭いについても伺いました。
気になる足や頭皮のニオイも、日々のケアでサヨナラ!

「足の臭いの最大の原因は、『蒸れ』。足の裏は体で最も汗腺が多く、背中や胸などの5〜10倍といわれています。靴で密閉されて温度が高く、分厚い角質が栄養にもなる、雑菌の繁殖にとっては理想的な環境です。」
とはいえ、働くパパの足は、日中のほとんどが靴の中です。
「1日履いた靴は乾燥剤を入れて陰干しし、できれば2日は休ませてください。そのためにも最低3足は靴を用意しましょう。通気性のいい靴や靴下を選び、汗を吸収するインナーソールを使えば臭いは軽減されます。金属の消臭効果を利用して、10円玉や使用済みのカイロを入れるのも効果的です。」
「入浴の際には指の間までしっかりと洗い、それでも気になる時は、木酢液の足湯も試してみてください。バケツに40度〜42度くらいのお湯を七分目まで入れ、木酢液をコップ一杯加えて15分ほど足を浸けましょう。外出の前後に行うと効果的です。」
シャンプーは2日〜3日に一度が適正!
頭皮の臭いも汗による雑菌の繁殖が主な原因。ただし、シャンプーのしすぎは逆に臭いの原因となってしまうとか。
「シャンプーを使いすぎると、頭皮の常在菌が減って雑菌が繁殖してしまいます。毎日髪を洗うなら、シャンプーは2日〜3日に一度。それ以外は温水で流すだけで十分です。」
また、生乾きの状態で出かけると周囲の臭いを髪の毛が吸収してしまうため、朝シャンはおすすめできないそう。時間のある夜に洗髪し、やさしくゆっくり、そしてしっかりと乾かすことが秘けつだそうです。
口臭予防には緑茶や梅干しが効果的!

ニオイといえば、汗や足と同様に気になるのが「口臭」です。口臭の原因とニオイの対策はどのようにすればいいでしょうか。
「口臭の主な原因は、唾液の分泌不足で雑菌が増えること。空腹時やストレスを感じたときに唾液が減るため、無理なダイエットは口臭のもとです。規則正しい食事をとり、できるだけストレスを感じないようにしてください。睡眠中は唾液の分泌量が減るため、起き抜けに口臭が気になるのは自然です。唾液の分泌を促進するためにも、朝食はしっかりととりましょう。」
食後はコーヒーではなく、お茶がおすすめ。とくに、緑茶に多く含まれるカテキンは抗菌力が強く、口の中の雑菌を抑えてくれます。
「さらにおすすめなのが、梅干しです。クエン酸が雑菌の繁殖を抑制するとともに、酸味で唾液の分泌を促進。朝食がとれない朝でも、梅干しを1つ口にするだけで口臭が消えます。口臭予防にかけて、梅干しに勝るものはありません。」
それでもまだ口臭が気になるときは、何か病気のサインかもしれません。一度、病院で検診を受けてみてもいいでしょう。
加齢臭は、ニオイよりも健康状態に気をつけて
中高年特有のニオイとして知られる「加齢臭」。これは、年齢とともに皮脂の中で生成される「ノネナール」という物質によるものです。
「『ロウソク』や『古い本』にも例えられるノネナールのニオイは、一概に悪臭とはいえません。三世代同居が当たり前だった時代には、誰も気にも留めなかった程度のものです。」
では、加齢臭を気にしなくていいのかといえば「そうではない」そうです。
「ノネナールは、皮脂を分泌する皮脂腺の脂肪酸と過酸化脂質と呼ばれる物質が結びついて生まれるもの。脂肪酸が増える原因は、肉中心の食生活や運動不足、不規則な睡眠、そしてストレスです。これらは、すべて生活習慣病の原因。加齢臭を強く発したら、生活習慣病のリスクが高いとも考えられるのです。」
もし加齢臭が気になったら、ニオイそのものより、その背景にある健康状態を心配してみてください。
ニオイを当たり前のもとして付き合う
「幼児期の子どもにとって、親のニオイを覚えさせることも大切。子どもが親をクサいと思うのは、父親不在で『ニオイのすり込み』が行われていないことも原因の1つです。さらに、思春期の女の子が父親のニオイを嫌うのは自然なことと理解してください。動物には、自分と近い遺伝子を持つ相手との結婚を避ける本能があります。ニオイもそれを見分けるための要素。父親のニオイを不快と感じるのは、自立し始めている証拠です。それを否定してはいけません。」
確かに、ことさらニオイに過敏になれば、ストレスでさらに悪臭を放つ負のスパイラルになりかねません。正しい食生活と適度な運動、ゆったりとした入浴、ストレスの改善など、生活そのものを変えていけば、自然と「ニオイ」が気にならなくなっていくでしょう!