手軽に「木登り」を楽しめる「ツリークライミング」が今、新たなアクティビティとして人気です。今までとは違う目線で森を見渡したり、虫や鳥、小動物たちの痕跡を見つけたり、自分の力で木を登る達成感は子どもの成長にもよい影響を与えます。
そんな「新世代の木登り」の楽しみ方を、全国で体験会を開催している「ツリークライミングジャパン」に伺いました。
人間の感性をフル活用して、自然との一体感を楽しむ!

そもそも、「ツリークライミング」とはいったいどんなものなのでしょうか? 普通の「木登り」との違いも気になるところです。
「専用ロープとサドルを使って、安全に木登りを楽しむのが『ツリークライミング』です。私たちの体験会は、全国の森林公園などで開催しています。10m〜20mくらいの木を選び、登るのは大体7〜8mくらいの高さまで。」
「鳥と同じ目線で景色をながめたり、頬をなでる風を感じたり、その風で木の葉がこすれる音に耳を傾けたりと、何気なく通り過ぎている樹上の世界は、想像以上に心地いいんですよ。」
また、身近にありながら、普段は目に入らない自然の姿を見つけることも楽しみのひとつだといいます。
「木のくぼみにリスが隠したドングリを見つけることもあれば、ムササビのフンの跡を発見することもあります。木の種類にもよりますが、カブトムシやクワガタムシと出会うことも。そんな小さな発見の積み重ねが、木や森、自然との一体感を感じさせてくれるんです。」
自然と触れ合うことで人間のさまざまな感性を刺激するツリークライミングは、まさに「新世代の木登り」なのです。
6歳〜80歳以上まで、誰でも簡単に木登りが楽しめる!

専用の道具を使って木に登る「ツリークライミング」。ロープやサドルは、誰でも簡単に使いこなせるのでしょうか。
「体験会では、ツリークライミングに必要なロープなどのセッティングをあらかじめ木にしています。設置されたサドルに座り、ノットと呼ばれるロープの結び目を手でギュッと上に押し上げ、もう一本のロープに作られた小さな輪をグッと足で踏み込む。単純な動作の繰り返しなので、誰でも驚くほど簡単に登っていけますよ。」
ツリークライミングジャパンの基準では、体験会の対象年齢は6歳から。小さな子どもたちが果敢にチャレンジし、スルスルと登っていくそうです。なんと87歳のおじいさんが、お孫さんと一緒に挑戦したこともあるとか! 年齢を問わずに楽しめるところも魅力といえるでしょう。
ツリークライミング専用サドルは、とっても快適!

ツリークライミングは、サドルに座った状態で木を登っていくのが特徴。長時間サドルに座っていると、お尻が痛くなりそうですが、そんな心配は無用だそう。
「ツリークライミング専用のサドルは、ももの後ろに食い込んだりせず、長時間座っていても心地よいデザインに設計されています。木登りの途中で、みの虫のようにブラーンとぶら下がってみるのもツリークライミングの醍醐味。そのまま時間を忘れて景色をながめたり、ちょっとしたおやつを食べたりするのも楽しいものです。」
ただぶら下がっているだけでも楽しい。写真の笑顔を見れば、それも納得ですね。
樹上のハンモッグでいこいのひとときを!

樹上でのお楽しみは、なんといっても「ツリーボート」。ツリーボートとは、木の上にかけるハンモックのことです。
「『ツリーボート』は普通のハンモックのように2点ではなく、4点で固定するから安定感が違います。涼しい木の上で寝転んだり、木々の間から射す木漏れ日を楽しんでもいいですね。樹上で過ごすのは大体1時間半くらいですが、あっというまに時間が過ぎてしまいますよ。」
ただし、開催場所によってはツリーボートを設置していないところもあるので、事前に確認することをおすすめします。
続いては安全面についてと、おすすめのツリークライミングスポットを紹介しましょう。
転落、ケガ、危険な虫など、安全性には多方面から配慮

子どもと一緒に参加するとなると、心配なのが安全性。木から落ちたりすることはないのでしょうか?
「木に登り始めてから下りてくるまで、常に自分の体とロープをカラビナで接続しているのが基本。カラビナには、絶対にハズレないように厳重にロックがされていますので、木から落ちる心配はありません。」
体験するのが夏の場合は、スズメバチなどの危険もあると思うのですが……。
「私たちの体験会では、登る木を必ず事前にチェックし、ケガをしそうな枝があれば払い、危険な虫の巣がないかどうかも調べます。その作業は、『ファシリテーター』と呼ばれる専門のトレーニングを積んだスタッフが行っています。」
「ファシリテーター」とは、未経験者を安全に樹上の世界へ案内する指導者であり、ツリークライミングジャパンが認定した資格取得者のこと。これなら、安心してもよさそうです。
ツリークライミングが楽しめるおすすめスポット3選!
北は北海道から南は沖縄まで、全国で体験できるツリークライミング。そのなかでも、オススメの3つをツリークライミングジャパンに教えていただきました。
越後ハーブ香園入広瀬/新潟県魚沼市
四季折々の花やハーブを楽しみながら、ツリークライミングに挑戦できます。まずは、普段は味わえない樹上の世界を満喫し、森の大切さを知りましょう。その後、植樹のイベントや木工クラフトなどを体験すると、楽しさがさらに広がります。親子で楽しく自然を学べる憩いの場です。
「越後ハーブ香園入広瀬」公式サイト奥飛騨温泉郷中尾高原/岐阜県高山市
北アルプスの麓、奥飛騨温泉郷中尾高原でツリークライミング! 体験の前日に、イベントを主催する「なかしま館」にチェックインするのがおすすめです。北アルプスに囲まれた、かけ流し露天風呂で日頃の疲れをいやしたあとは、手作りの郷土料理を堪能。そして翌日、大きな栗の木にチャレンジしましょう! 高原が見せる四季折々の美しい表情を見ることができます。
「なかしま館」公式サイト城里町総合野外活動センター ふれあいの里/茨城県東茨城郡城里町
大きなクヌギの木や、広々とした景色が楽しめるコナラの木でツリークライミング! ニジマス釣りやピザ作りも体験でき、宿泊もオートキャンプ、ティピーテント、コテージと多彩なスタイルで家族みんなが楽しめます。宿泊するだけでなく、日帰りで楽しめるのも魅力です。
「城里町総合野外活動センター ふれあいの里」の詳細へ小さな「気づき」の体験が、子どもたちの成長を促す

子どもたちにとって、木に登ること自体がすでにワクワクするような体験です。でも、ツリークライミングの本当の楽しさは、自然とふれあうこと。ツリークライミングジャパンでは、子どもたちが自分で学び、自然を大切にする気持ちが芽生えるような指導をしているそうです。
「ツリークライミングの目的は、高く登ることでも、早く登ることでもありません。子どもたちには、『競争じゃないんだよ』と教えます。たとえば、木の下と上から見るのでは、葉の色が違うこと。そして、葉がお互いに日光を浴びやすいようにゆずり合って広がっていること。そういう小さな『気づき』を与えることが、子どもたちの心を成長させると考えているからです。」
だから、どこまで登るかも、子どもたちしだい。上へ上へと目指す子もいれば、低いところでユラユラとゆれて楽しんでいる子もいます。「それぞれが心地よいポイント、それが到達点」なのだそうです。
夏休みに子どもと一緒にツリークライミングを体験して、子どもがどこまで木を登るのか、その「到達点」と少し成長した姿を見てみてはいかがでしょうか?