外で過ごすのが心地いい季節、秋。お出かけではもちろん、毎日の生活の中でも秋を満喫したいですね。そこでおすすめなのが昆虫採集です。この季節ならではの「音を出す虫」の魅力や、子どもと一緒に楽しむポイントを日本直翅類(ちょくしるい)学会の市川顕彦さんにうかがいました。
身近で楽しめる、秋の「音を出す虫」おすすめ3選

専門家でも把握し切れないほど多くの種類が存在するという「音を出す虫」。遠くや山奥まで出かけなくても、都会にいる虫も数多く存在します。今回は子どもでもなじみ深く、都会でもつかまえやすい虫を3種類ほど教えていただきました。
エンマコオロギ
- 鳴き声:コロコロリー
- 生息地域:北海道南部〜九州
「全国のほとんどの地域に生息し、市街地や畑など、人家がある場所でよく見られます。数多くの種類がいるコオロギの代表格として、昔から人々に親しまれてきた、とても身近な虫です。身体が大きくて動きもそれほど速くないので、小学校高学年くらいになれば子ども自身で捕まえることも可能。足にトゲがあるので触るとチクッとしますが、噛んだりはしないので危険もありません。」
カネタタキ
- 鳴き声:チン、チン、チン
- 生息地域:仙台以南の本州・四国・九州・南西諸島
「甲高く澄んだ小さな音を出す、コオロギの仲間です。見たことがない人でも、鳴き声は意外とよく耳にしているはずです。木の上や藪の中などにいるほか、台所などの温かさを好んで、自分から家の中に入ってくることも。小さな羽はありますが飛べないため、平坦なところを動き回ります。動きは遅めですが、体長が1cmほどと小さいので、見つけたら網などを敷いて誘い込み、包むという方法が捕まえやすいですね。」
アオマツムシ

- 鳴き声:リン、リン、リン
- 生息地域:北海道・沖縄を除く全国
「明治時代に中国から入ってきた虫で、都会では木の上などにいます。桜の葉が大好きなので、桜の木にいることも多いですね。集まると他の虫の声をかき消し、騒音公害と呼べるほど賑やかに鳴きます。おとなしく、照明に集まる習性があるので、集まっているところでまとめて捕まえると簡単ですが、鳴き声のボリュームも考えて、たくさん飼いすぎないように注意が必要です。」
飼うのも簡単!自宅でも長く虫の声を楽しもう
今回ご紹介した3種の虫は簡単に飼えるのも魅力の一つ。いずれも上手にお世話をすれば1カ月くらいは生きて、美しい音色で楽しませてくれるそうです。
「基本的には飼育ケースに小バエ防止シートと草を敷き、エサを準備すればOK。飛び出しや他の虫などの侵入を防ぐため、ネットでしっかりフタをしましょう。」
エサはキャベツや白菜などの葉物野菜のほか、にんじんやピーナッツなど、堅さがあるものも意外によく食べるそう。
「雑食性なので何でもよく食べます。時間が経つとドロドロになるレタスなどは避けたほうがいいですが、葉物野菜はおすすめ。ペットショップなどで売っている虫類や熱帯魚、金魚などのエサもよく食べます。ビタミン類を補うために市販の昆虫ゼリーや、動物性タンパク質を補う煮干し・かつおぶしなども、ときどき入れてあげましょう。」
汚れたときだけ掃除すればOK。かまい過ぎは虫のストレスに!
エサ以外のお世話はどのようにしたらよいのでしょうか。
「1日1回くらい様子を見て、フンや虫の死骸などがあれば片づけましょう。中身を入れ換えるのは、フンがたまってきてしまったときだけでOK。環境の変化は虫にとってストレスになるので、あまりマメに換えるのは逆効果。手をかけすぎないことも大切です。」
とくに子どもの場合、家で飼っていることがうれしくて、かまい過ぎることも多々ありますね。そんなときは、叱って止めさせるのではなく、虫にとって快適な環境づくりや接し方を子どもと一緒に考えてあげることが、思いやりや生き物を大切にする心を育むことに繋がります。図書館などにも、子ども向けの昆虫の飼い方の本はあるので、親子でいろいろと調べてみましょう。
あちこちからいろいろな虫の声が聞こえてきて、季節の移り変わりを実感できる時季。今年は家の中でも秋の深まりを親子でゆっくり楽しんでみてはいかがでしょうか。