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「食中毒」の原因&予防&対処法 ノロウイルスやサルモネラ菌も

掲載日: 2020年4月28日更新日: 2020年4月29日高柳涼子

家族の健康を脅かす食中毒。食事からなることが多いだけに、可能な限り対策をしておきたいですよね。そこで今回は、国立成育医療研究センターで感染症を専門とする吉田美智子先生に、家庭で起こりやすい食中毒の基礎知識や、かかってしまったときの治療や対処法、予防のポイントなどを聞きました。

食中毒の基礎知識 原因は主に4つ!

まず、食中毒とはどういったものなのでしょうか?

「食中毒は、食べ物を介した健康被害全般を指す言葉です。原因物質に汚染された食べ物を摂取することで発症します

「食中毒は、発熱や嘔吐、下痢が主な症状ですが、時に他の症状が出る場合もあります。原因は主に4つあります」

食中毒の主な4つの原因

(1)ウイルス
カキなどの二枚貝が原因食品の代表である「ノロウイルス」に代表されます。激しい嘔吐や下痢はあるものの腹痛は強くなく、熱もそれほど高くならないのが特徴です。ほとんどの場合が、数日で回復します。

(2)細菌
汚染された生卵を食べる事によって感染する「サルモネラ菌」や、加熱が不十分な鶏肉から感染する「カンピロバクター」、生の牛肉から感染する「腸管出血性大腸菌(O157など)」などに代表されます。激しい腹痛や高熱が特徴で、血便が出る場合もあります

稀に、けいれんや意識障害、髄膜炎や菌血症(細菌が血液内に入り込む)を起こすなど、命に関わる場合もあります

(3)細菌から出る毒素
人間の皮膚にも存在する「黄色ブドウ球菌」や、はちみつに含まれる「ボツリヌス菌」などが原因となるもの。細菌自体が原因になるのではなく、細菌が出す毒素によって発症します。

腹痛や吐き気、嘔吐がおもな症状で、熱は高くなりません。乳児ボツリヌスの場合は、哺乳の低下や便秘症状、泣き声が弱くなるなどの症状があらわれます。

(4)寄生虫
生の魚介に寄生する「アニサキス」などの寄生虫が原因となるもの。激しい腹痛や吐き気、嘔吐が出るのが特徴で、悪化すると腸に穴があいたり、腹膜炎などを起こしたりすることもあります

症状の傾向や、なりやすい季節などはありますか?

「一般的には、ウイルスよりも細菌や細菌の毒素が原因で発症する食中毒の方が、症状が重くなる傾向にあります

細菌が原因で発症する食中毒は、細菌の繁殖に適した気温となる夏場に多く発症するのに対し、ウイルス性は冬場に多いとされます。ノロウイルス腸炎の原因食品の一つが、冬が旬のカキであることも、冬場の発症例が多い一因といえます。寄生虫による食中毒は季節を問わず発生します

食中毒といえば夏場に多い印象ですが、1年を通じて注意が必要ですね。

食事以外の感染にも注意!

食事以外で感染する場合は、どんな時でしょうか。

「汚染された食べ物を摂取する以外に、手などを介して口に原因物質が入ってしまうことにより食中毒が発症することもあります。生肉や魚を触った手でほかの食材に触れたり、調理器具を介して汚染物質が感染する場合もあるので、注意が必要です

「また、感染した子供の便の始末をした手から感染するケースも多いので、トイレの後の手洗いには十分注意してください。ミドリガメや鳥などのペットがサルモネラ菌を保菌していることがあるので、これらの動物とふれあったあとに、手洗いが不十分なまま食事をすることで身体に入ってしまうケースも見られます

幼稚園や保育園で飼っているなど、子供に身近な動物も多いので、十分に気をつけたいですね。


病院を受診するタイミングは? かかったときの治療法

では、もし食中毒にかかってしまった場合は、どのように治療を行うのでしょうか?

食中毒の治療は、どのタイプでも脱水を防ぎながら自然に回復するのを待つのが基本的な対処方法です。基礎疾患がなければ抗生剤は不要ですし、薬を使う必要もありません」

「吐き気止めや下痢止めによって、一時的に症状を抑えることはできても早く治ることはありません。下痢止めは原因物質が長く身体に留まることを助けてしまうため、逆に悪化させてしまうケースもあります。ただし、生後3カ月未満の乳児や基礎疾患がある人、合併症を起こしている可能性があれば、必要に応じて検査をしたり、抗生剤を使うこともあります」

病院に受診する場合の目安はあるのでしょうか?

脱水を起こしていると考えられる場合や、細菌性が疑われる症状が出た場合は受診しましょう。脱水のサインとしては、おしっこが減ったり、傾眠(ずっとうとうとしている)、目がくぼんで見えるなどが挙げられます。細菌性の食中毒の場合は、激しい腹痛や血便などがよく見られます。また、意識がはっきりしなかったり、ぐったりしている場合も受診するようにしてください」

「受診の際は嘔吐や便の回数、体温などの記録のほか、最近食べたもののメモもあると診察に役立ちます。食中毒は原因物質によって発症までの時間が、数時間〜1週間と大きな幅があります。食事の内容は診察の判断材料になります。思い出せる範囲でOKです」

自宅での対処法は?

受診後や自宅で様子を見る場合に、気をつけることはありますか?

水分の他に塩分と糖分をしっかり摂らせてください。おすすめは、経口補水液やおかゆやおもゆど。最初はスプーンで1杯ずつ、嘔吐なく摂取できるか確認しながら与えてください。おさまるようならば、1回に与える量を徐々に増やしてください。1回量を増やせないうちは、回数を増やすなどの工夫が必要です

「母乳やミルクを飲んでいる月齢であれば、いつも通りでOKです。小さな子供は自分でコントロールして水分を摂ることができないので、より注意深く観察する必要があります。日中でも長時間眠り続けているなど、普段の生活リズムと異なるときは、水分補給を兼ねて起こすなど、体調の変化をこまめにチェックしてください」

回復までの目安も教えてください。

「嘔吐や下痢が治まっても、しばらくは腸がむくんで動きがよくない状態が続きます。症状が落ち着いても、しばらくは消化によいものを食べさせましょう。体調が元に戻って普通の便が出たら、何日目であっても『全快』と考えて良いでしょう

症状が治まってくると空腹を訴えたり好物を食べたがったりする子供も多いですが、回復の度合いをしっかり観察して判断することが大切ですね。


予防のポイントは「清潔・加熱・温度管理」

食中毒を予防するために、気をつける点を教えてください。

「ウイルスや細菌を繁殖させないことと、調理中に汚染を広げないことが大切です」

(1)ウイルスや細菌を繁殖させない
刺身用以外の魚介や肉は、十分に火を通してから食べるようにしてください。気温が上がる夏場は、細菌の繁殖に最適なので、作った料理や購入した食材をすぐに冷蔵庫に入れたり、保存したものは再加熱して食べるなど、とくに注意が必要です。

(2)汚染を広げない
調理の際には、手や指を清潔にして、食材に汚染物質を付着させないように注意してください。野菜や果物など生で食べるものは特によく洗いましょう。調理器具を介して感染することも多いので、肉や魚介は他の食材とまな板や包丁を使い分けてください」

基本的なことばかりですが、普段から注意してしっかりと予防するようにしましょう。調理の手順や方法を見直して、食中毒の予防に努められるといいですね。

お話を聞いたのは…

  • 吉田美智子(よしだみちこ)先生

    国立成育医療研究センターで感染防御対策室専門修練医を務める。東北大学卒業、宮城県立こども病院に勤務。同病院のリウマチ・感染症科フェローを経て現職。小児科、小児感染症を専門として診療に当たる。

  • 国立成育医療研究センター

ライター紹介

高柳涼子

雑誌編集部勤務を経てフリーランスに。ライティングと校正を中心に、ときどき編集もやる3児の母です。これまでに関わった分野は、求人、進学、ウェディング、アート、手芸、田舎暮らし、食育、仏教、料理など。

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