風邪はすっかり治ったはずなのに、しつこい咳がいつまでも続く…。こんな症状に心当たりはありませんか? もしかしたらそれはただの風邪ではなく、「マイコプラズマ肺炎」かもしれません。これから冬にかけて流行しやすい「マイコプラズマ肺炎」について、北浜こどもクリニックの北浜直先生に伺いました。
痰のからまない乾いた咳が3週間〜4週間続くことも…!

「マイコプラズマ肺炎」とは、どのような病気なのでしょうか?
「マイコプラズマ肺炎は、『肺炎マイコプラズマ』という細菌のようなものによって起こる呼吸器感染症で、長期にわたって咳が続くのが特徴です。主に気道に感染し、気管支炎や肺炎などを引き起こします。初期は普通の風邪と同じように、発熱や喉の痛み、全身の倦怠感などの症状が現れ、次第に痰のからまない乾いた咳が出るようになります。熱が下がったあとも、3週間〜4週間にわたって咳が長引くことがあります。」
咳の風邪がなかなか治らないと思っていたら、じつはマイコプラズマ肺炎にかかっていたということは実際よくあるそうです。また、一般的な肺炎とは大きく違う点があり、それも風邪との判断をしづらくする要因なんだとか。
「一般的な肺炎の場合は痰をともなうため、聴診器を当てるとゼロゼロするような呼吸音が聞こえますが、マイコプラズマ肺炎の場合はそのような雑音が聞こえないので、なかなか診断がつかないこともあります。夜間にひどく咳が出て、日中は比較的元気に過ごせる場合も多いのですが、長い間放置していると重症化してしまったり、中耳炎、脳炎などの合併症が起こる可能性もあるので注意が必要です。」
マイコプラズマ肺炎は、綿棒のようなもので喉の粘液をとる簡易検査で調べることができます。診断がつけば、抗生物質で治療できるので、咳が長引く場合には一度病院で診てもらいましょう。
秋から冬にかけて増加。咳やくしゃみで感染が拡大
では、マイコプラズマ肺炎はどうやって人にうつるのでしょうか?
「マイコプラズマ肺炎は、咳やくしゃみの飛沫感染や接触感染で広がります。潜伏期間が2週間〜3週間と長く、熱が下がってからもしばらく咳が続くので、周りにうつしやすいのです。感染者のおよそ80%が14歳以下で、小学生くらいの子どもに最も多くみられます。幼稚園、保育園や学校などの集団生活の場では、とくに感染が広がりやすいですね。」
かつては4年に一度の周期で流行していたため、『オリンピック病』とも呼ばれていたマイコプラズマ肺炎。しかし最近では毎年のように流行を繰り返しているうえ、大人の感染者も増えているそう。
「年間を通じてみられる感染症ですが、空気が乾燥しやすい秋から冬にかけて、増加する傾向があります。2016年は夏頃に幅広い世代でマイコプラズマ肺炎が多くみられました。これから冬にかけてさらに流行する恐れもありますね。」
近年では毎年のように流行しているマイコプラズマ肺炎。子どもたちにだけでなく、大人も一緒にしっかり予防したいですね。
こまめな手洗い&うがいで、マイコプラズマ肺炎を予防!

感染を防ぐためにできることはありますか?
「風邪やインフルエンザなどの感染症と同じで、こまめな手洗いとうがいが有効な予防法です。また、人の多い場所に出かける際には、マスクを着用するといいでしょう。マイコプラズマ肺炎の予防接種などはないので、日頃から基本的なうがい、手洗いの習慣を身につけておくことが大切です。」
子どもが感染した場合、学校にはいつ登校できるのでしょうか?
「マイコプラズマ肺炎は、インフルエンザなどと違って、明確な出席停止期間は定められていません。咳が何週間も続くので、病院で治療を受けて熱が下がっていれば、出席しても問題ないでしょう。その場合には、周囲への感染を広めないように、マスクを着用するなどのエチケットを心がけましょう。」
咳がひどくて眠れない時には、枕やクッションを重ねて上半身を起こしてあげると、呼吸がしやすくなると北浜先生。また、部屋を暖かくして加湿することも大事だそうですよ。
いつまでも止まらない咳は、ただの風邪ではないかもしれません。マイコプラズマ肺炎は薬で治療することができるので、気になる症状がある時は、お医者さんに相談しましょう。
★この記事のポイント★
- マイコプラズマ肺炎は、『肺炎マイコプラズマ』によって起こる呼吸器感染症。
- 長期にわたって咳が続くのが特徴。3週間〜4週間乾いた咳が続くことも。
- 咳やくしゃみの飛沫感染や接触感染で広がるので、手洗い・うがいで予防を。