子どもが小学校に進級すると、教科書の準備やプリントなど、学校への提出物が多くなりますよね。とはいえ、子どもに任せるとどうしても忘れ物が増え、親も子もストレスがたまりがち…。そんな親子の悩みを解決すべく、家庭でできる忘れ物を減らす工夫について、教育評論家の親野智可等さんにお聞きしました。
忘れ物が多いと子どもの成長に悪影響が出る
子どもの忘れ物について、「忘れ物をすれば、自分が困って直そうとするだろう」と思う親は少なくないと思います。ですが、「放っておくと、ますます忘れ物をするようになります」と親野さん。そして、忘れ物を繰り返すことで、子どもの心に悪影響が出てしまうそう。
「忘れ物をすると、先生に叱られることが増えます。そして、友達にも『また、じょうぎ忘れたの? ちゃんと確認しなきゃダメじゃん。今回は貸してあげるけど、次はもう貸さないからね』などと、冷たい言葉をかけられたり、責められることもあります。すると、子どもは『自分はダメな子なんだ…』と自己肯定感がボロボロになってしまいます」
「また、授業で使う物を忘れると、子どもの授業への集中力は一気に下がります。『しまった、じょうぎを忘れちゃった。友達に借りようか? 先生に言ったら怒られるかな? どうしよう…』などと考えている間に授業はどんどん進みます。その間、先生の話などぜんぜん耳に入りません」
さらに、忘れ物が多い子どもを放置したまま育てていると、子どもは自分が言われたことを元に、友達に対して冷たい言葉をかけるようになるんだとか。
「友達が何か忘れ物をしたとします。『じょうぎを忘れたの? だらしがないなあ。ちょっと困った方がいいよ。そうすれば気をつけるようになるでしょ。お前のためにも貸してあげないよ』というように、冷たい対応になってしまうのです」
もうひとつ、親からの愛情不足を感じるという大きな弊害も出てしまうようです。
忘れ物を放置することで自己肯定感の低下や愛情不足を感じる
「忘れ物が多くて先生に叱られたと話をすると、『どうして忘れ物するの!』と親にまで叱られる…。自分は忘れ物をなくしたいのに、親は手を差し伸べてくれない…。そういう親に対して、『自分は親に愛されていないのではないか?』『自分は大切に思われていないのではないか?』と、子どもは疑いを持つようになってしまうこともあります」
子どもは、親に対する愛情不足感・不信感を持つと、不満・焦り・怒りなどの感情がわき出てきて、それを解決するために衝動的な行動を起こしがち。その表れ方にはいろいろありますが、叱られることをわざとすることもあるようです。
「例えば、万引きをする・火遊びをする・物を壊す・弱い子をいじめるなど、反社会的な行動とケガをするかも知れないような危険な行動に出る可能性もあります。こういうことをすると、親は心配してオロオロします。その姿を見て、子どもは『こんなに心配してくれている。やっぱり愛されているんだ!』という愛情確認をするようになるのです」
すぐ行動に表れる場合もありますが、溜め込んだ思いが思春期以降に爆発的に表れることも…。
では、忘れ物を減らすにはどうしたらいいのでしょうか?
忘れ物を減らすには親のサポートが大切!
「忘れ物を減らすのに大切なのは、親のサポートです。まずは、一緒に次の日の支度をしてやり方を教えるという段階が必要です。次に、親が見守りながら支度をさせる段階に入ります。最終段階では、子ども自身にやらせてみて、親が確認をしてあげましょう」
「○年生だからできて当たり前」と考えずに、その子の状態に応じてサポートしてあげることがポイントなのだそう。ただし、親がやり過ぎても過保護になるのでよくありません。過不足のないちょうどいいサポートをしてください。
「一度最終段階までできるようになっても、また元に戻ってしまうこともよくあることです。そのときの気分や調子にも寄りますので、行ったり来たりでもいいと考えて、長い目で気長に付き合ってあげてください。正直なところ、そんな簡単に改善することはありませんので、『長い目で気長に付き合う』のが本当に大事です。」
「そして、どの段階にしても、忘れ物がないかの最終確認だけは親がしてあげた方がいいと思います。『早く一人でできるようにしよう』と思い過ぎないことが大切です」
家庭でできる忘れ物を減らす環境を作ろう
子どもの忘れ物を減らすためには、環境の整備や合理的な工夫も大切なのだとか。
「例えば、机の上がゴチャゴチャしていると、必要なものが見つかりづらく、忘れ物をしやすくなります。使わなくなった物は処分するか、机以外の場所にしまっておくなど、日頃から子どもと一緒に整理整頓してあげてください。親子のふれあいのひとつとして楽しみながら付き合ってあげましょう」
また、「持ち物コーナー」を作るだけで忘れ物が減るそうです。
「学校に持っていくものが、あちらこちらに散らばっていると忘れ物の原因になるんです。できるだけ1カ所に集めて『持ち物コーナー』を作るといいでしょう。探すのが圧倒的に楽になりますし、次の日の仕度をしているときに、『これも持って行かなきゃ!』と思わぬ忘れ物に気づきやすくもなります。1カ所に集められない場合も、できるだけ置き場所を決めるようにしましょう」
「さらに、いろいろな方法で持ち物を『見える化』すると効果があります。ある家庭では、忘れてはいけない物を付箋に書いて、子どもの靴に貼っておくそうです。すると、出かけるときに気づけます。大事な物を書いたリストをカバンのふたの内側に貼ったり、ホワイトボードに持ち物リストを書いて冷蔵庫や玄関のドアにかけたりするのもオススメです」
また、習字セット・絵の具セット・水泳セットなど細かい物が多い場合は、あらかじめ写真に撮っておいて、その写真と見比べてチェックすると、細かい忘れ物もせずにすむそうです。
「どうしたら忘れ物しなくなるかな?」「何かいい方法ない?」と具体的な解決策を子どもと一緒に考えるのも効果的なのだとか。忘れない方法を自分で決めたという気持ちになり、子どもの「やる気」にもつながるそうです。
すぐに実践できそうな工夫ばかりなので、子どもの忘れ物が気になる方はぜひ今日から試してみてください。