子どもが苦戦する夏休みの宿題の一つが読書感想文。「どう書けばいいのかわからない…」という子どもに、「書き方をどう教えればいいのかわからない…」という親も多いはず。そこで、作文が苦手な子どもでも簡単に読書感想文が書けるようになる方法と、親のサポートの仕方を「作文の神様がおしえるスラスラ書ける作文マジック」の著者岩下修先生に聞きました。
誰に向けて書けばいいか迷うから苦手意識を持ってしまう
「読書感想文を書くにあたり、まずは『何のために』、『だれに向けて書くのか』を意識させたいですね」
読書感想文が苦手な理由として、この部分を明確にできない子が多いそうです。
「物語の登場人物の行動、生き方から何かを学び、今後の自分の活動のヒントにしてほしいですね。読書感想文も作文も、自分の想いを受け止めてくれる人に向けて発信するとき、良いものになります。小学生でしたら、担任の先生に向けて書くのがいいでしょうね」
小学校低学年の場合、そこまで大きなねらいを考えないで、おもしかった本を友だちに紹介するというレベルでもいいとのことです。
まずは「だれに向けて書くのか」を明確にするところから始めてみましょう。
構造がわかれば作文は簡単に書ける!
読書感想文への苦手意識を持ってしまう理由には、「何を書いたらよいのかわからない」「どのように構成したらよいかわからない」「正しい日本語の文章が書けない」という、実技的な不安もあるようです。
では、実技的な不安はどう解決すればよいのでしょうか。岩下先生によると、作文を書くコツは4つあるのだそう。
(1)字数を決める
「これは必須事項です。字数を決めれば、ダラダラと長い作文になりません。ただし、いきなり、一般的な読書感想文コンクールの基準である原稿用紙3枚1200字は大変です。大人でもなかなか書けません。私は、小学生へ物語の授業をしたあと、感想文を400字で書かせています。字数に指定がなければ、まずは400字を目標に書いてみてもよいかもしれません」
(2)全体の構成を4段落でまとめる
「4段落でまとめる、これが最大のポイントです! 登場人物と自分の共通点や違う点を書くとよいでしょう」
4段落のまとめ方の目安を読書感想文コンクール原稿用紙3枚(1200字)の場合で教えていただきました。
◆1段落目
「読書のきっかけと物語の要約を180字程度(全体の15%)で書きます。物語の要約は、『○○だった主人公が、○○(きっかけ)により、○○(心の変化)になった』とまとめます」
◆2段落目
「最も心に残った物語の登場人物の行動を360字程度(全体の30%)で書きましょう。行動(したこと)なら書けるはずです。登場人物は主人公でなくても良いです」
◆3段落目
「その登場人物の行動と似た自分の体験や行動を400字程度(全体の35%)で書きましょう」
◆4段落目
「その登場人物と自分の行動との違いや、行動から学んだことや気づいたことを240字程度(全体の20%)で書きます。さらに、そのあと自分はどのような行動をしたいかも書ければより良いですね」
下記の作文は、岩下先生が教えている小学生(2年生)が書いた感想文です。
ぜひ、構成の参考にしてみてください。
(3)したことを軸に、見たこと、聞いたこと、そして、考えたことも書く
「とにかく、したことを中心に書くことが大切です。2段落目では登場人物の行動(したこと)を中心に書きます。3段落目では、自分の行動を中心に、見たこと、聞いた声などを書きます。時、場所、自分以外の人の言動も書くと、よりわかりやすい文章になります。読み手に映像が浮かぶように書くことがポイントです」
また、色やにおい、音、名前などの「知覚語」をたくさん使うことがポイントのようです。
見たもの・見えたもの(視覚)、聞いた音・聞こえた音(聴覚)、食べたもの(味覚)、触ったもの(触覚)、におい(嗅覚)といった五感を表す言葉や、人の名前、場所とその名称などの固有名詞や、量や大きさ、長さなどの数値を文章の中に入れて書いてみてください。
知覚語をたくさん使うほど、文章が具体的になり、読んだ人にも伝わる文章になります。
「これは、読書感想文に限らず、あらゆる作文を書く際に心がけさせたいことですね」
(4)題は、最後に4段落のまとめの中の言葉を使って書く
「これは、私の説明的作文の書き方の大事な柱の一つとなっています。4段落のまとめの言葉を使って、題にするとよいでしょう。上に紹介した2年生の感想文では、『友だちってとてもいいな』という題にしています。作文を書くときも、一番主張したいことをタイトルにする習慣をつけさせたいものです」
親も同じ本で読書感想文を書いてみよう
子どもが苦手とする読書感想文を書くために、親は本選びからサポートしたほうが良いそうです。
「上記で教えたように、物語の人物の行動と自分の行動を比べるわけですから、『本の中の人物が、子どもの体験と似たような体験をする物語』を選ぶ。これが最も大事なことです。ですので、ファンタジーなどは難しいと思います」
となると、「子どもの体験と似たような体験をする物語なのかどうか」を知るために、何よりも親自身が本を読み込む必要があります。
「本を選んだ段階で、もはや勝負ありと言っても良いでしょう。さらに言えば、親が実際に、その本で感想文を書いてみるといいと思います。そのときに、役に立つのが4段落でまとめる型です。書く方法がわかれば、苦手意識のある親でも書くことができるでしょう」
「書くことで、いかに感想文を書くことが難しいかを体験できます。大人が書いて難しいものは、子どもには難しいことなのです。親の体験を筆記した読書感想文は、ぜひ子どもに読んであげるといいと思います」
「『へ〜。お母さん、そんなことがあったの〜』と子どもは、目を輝かせて聞くことでしょう。読書感想文の筆記を通して、親子の新たな絆も生まれます。とても素敵なことです」
自分が手本を示すことで、子どもも感想文を書く意欲がわくかもしれません。また、書き方がわかったことで、本を読むことや感想文を書くことが楽しくなるかもしれません。この夏の読書感想文は、いままでと違った作文が書けるかと思います。子どもがどんな文章を書くのか楽しみですね!