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エナジードリンクと栄養ドリンクの違いは? 子供への影響も解説

掲載日: 2018年3月15日更新日: 2018年3月15日近藤 浩己

眠気を覚ませたいときや集中力を高めたいときなどに、活用されるエナジードリンク。以前は大人が飲むイメージでしたが、最近は中高生や小学生でも飲める商品もあり、需要が増えているようです。

一方で、大量摂取による体調不良など、気になるニュースもちらほら…。エナジードリンクは、本当に子どもが飲んでも問題ないのでしょうか。栄養ドリンクとの違いなども踏まえて、専門家に聞きました。

エナジードリンクと栄養ドリンクは違う

エナジードリンクという言葉自体が、わりと最近浸透してきたイメージですが、昔からある栄養ドリンクやドリンク剤とはどう違うのでしょうか。

エナジードリンクも栄養ドリンクも、カフェインが入っているので覚醒効果が期待できる飲み物です。ですが、この2つは種類が全く違います

こう答えてくれたのは、日本体育大学で子どもの健康に関する研究を行う野井真吾教授。

まず、ユンケルやリポビタンDなどに代表される栄養ドリンクは、薬事法で規定された『医薬部外品』です。対して、レッドブルなどに代表されるエナジードリンクは、食品衛生法で規定された『清涼飲料水』。規格がまったく違う飲み物なのです

医薬部外品は、人体に対する影響が医薬品よりはゆるいものの、その効果をある程度認められているのが特徴。そのため「滋養強壮」「栄養補給」といった効果をパッケージや広告で表記できます。

一方の清涼飲料水は、カテゴリとしては食品の一種です。そのため、効能や効果、用法、用量を表現できないという決まりがあります。そのためCMなどでも、元気になるイメージを持つような演出は可能ですが、「栄養補給」といったキーワードは使えないという制限があります。

「つまり、カテゴリとしてのエナジードリンクは、炭酸飲料と同じ。とはいえ、だからといって体に何も問題がないのか、というと疑問が残ります」


エナジードリンクは「元気を前借りする」もの

では、エナジードリンクのどこに問題があるのでしょうか。

「エナジードリンクの成分の中で注意したいのは、やはりカフェインです。カフェインには興奮剤のような要素があり、自律神経の中の交感神経に作用します。その結果、血液の循環が良くなったり、集中力がアップしたりと体内のいろいろな機能が一時的に高まり、元気になったような感覚になります

「ですが、これは疲れによって低下した機能を外的要因で高めているだけ。疲れそのものが取れたわけではないので、元気を前借りしているような状態です。借りたものはいずれ返さなくてはいけないので、前借りを続けると、どこかでひずみが生まれる可能性があります」

とはいえ、コーヒーなどにもカフェインは含まれているはずです。なぜエナジードリンクだけ注意が必要なのでしょうか。

飲みやすくカフェイン大量摂取につながる可能性も

「エナジードリンクのイメージ調査を大学生対象に行ったところ、多くの学生が『クール』『かっこいい』という印象を抱いていることがわかりました。これはおそらく、小・中学生なども同じだと思います」

「コーヒーもエナジードリンクと同じくらいのカフェインが入っていますが、同じようにカフェインを含んでいても、エナジードリンクはコーヒーや栄養ドリンクに比べてイメージがカジュアル。だから気軽に手に取りやすいのです。おまけに味も一般的な炭酸飲料に近いので、たくさん飲めてしまう。コーヒーや栄養ドリンク特有の苦味や味わいは、子どもにとっては適度なハードルになっているはずですなのです」

飲みやすさから大量摂取につながる可能性があるということですね。では、適度な摂取量はどれくらいなのでしょうか。

1日1本でもカフェインの過剰摂取に!?

実は日本では、カフェインの摂取量について制限は定められていないのです。ただ、農林水産省では、諸外国の推奨摂取量やカフェインの過剰摂取についてサイトで紹介するなど、注意喚起はしています」

【参考】各国におけるカフェインの摂取に関する注意喚起等(農林水産省)

「たとえばヨーロッパでは、体重1kgあたり、1日のカフェイン摂取量は3mgまでと定められています。体重30kgの子どもなら、1日90mgまでということです。またカナダでは、推奨摂取量を年齢によって細かく設定していて、4歳〜6歳が1日45mg、7歳〜9歳が1日62.5mg、9歳〜12歳が85mgとなっています」

そこで、打表的なエナジードリンクのカフェイン含有量を、缶のラベルから調べてみました。カフェイン含有量は、基本的に商品のラベルに記載されていますが、もし記載がなければメーカーに問い合わせてみましょう。

  • モンスターエナジー:355ml缶=142mg
  • レッドブル:250ml缶=80mg
  • バーン(burn):300ml缶=96mg

小学生の子どもなら、1日に1本飲めば諸外国のカフェイン推奨摂取量に達してしまうようです! スポーツの前後やテスト勉強などで1日に2〜3本もエナジードリンクを飲んでしまうと、カフェインの過剰摂取になってしまいますね。


週に1本でもカフェイン中毒になる!?

では、1日に1本程度なら、カフェインの過剰摂取にはならないのでしょうか。

「ヨーロッパでは、エナジードリンクを週に1本飲んでいるだけでも習慣的と定義づけている国もあります。そこで、その基準に従って、日本国内の中高生700人弱を対象に、『習慣者』『非習慣者』それぞれで、エナジードリンクと身体との関連を私たちの研究室で調査してみました」

「その結果、習慣者の方が、頭痛、疲労感、吐き気、寝つきが悪いなどの症状を訴える子が多いことがわかりました。今後は小学生も対象に含め調査を進める予定ですが、より身体の小さな小学生では症状が顕著に出るのでは、と考えられます」

こうした症状は、カフェイン中毒の症状の一例なのだとか。気になる症状があれば飲むのをやめて、身体を休ませることが大切です。また、症状がひどければ急性カフェイン中毒の可能性もあるので、すぐに病院に行きましょう。

疲れたら休むのが一番

最近では「子ども用エナジードリンク」も販売されています。子ども用であれば、疲れたときなどに飲ませてもいいのでしょうか。

「私の知りうる限りでは、子ども用エナジードリンクは医薬部外品として販売されています。つまり、カテゴリとしては栄養剤。その認識を持って、パッケージなどに書かれてある最大摂取量を守って、必要と感じるときに飲ませればいいと思います」

「ただ、そもそもですが、なぜ子どもたちがエナジードリンクを飲まなくてはいけないのか、と私は疑問に思います。疲れたら休むべきだし、子どもは本来そうあるべきです」

エナジードリンクを飲んでまで頑張らなくてはいけない状況があるとしたら、その状況を作り出している大人側に責任があります。子どもは、昼間にしっかり体を動かして、夜はしっかり寝るのが一番。規則正しく人間らしい毎日を子どもに送らせてあげることこそが、子どもが元気になる栄養補給レシピだと思いますよ

気軽に手に入り、飲みやすさが人気のエナジードリンク。子どもの健やかな成長のためにも、安易に手に取らないよう、親も注意する必要がありますね。

お話を聞いたのは…

ライター紹介

近藤 浩己

1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。

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