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マンガが子どもの成長にもたらすメリットとは

掲載日: 2015年5月27日更新日: 2015年5月29日衣山 泉
子どもがマンガを夢中で読む姿を見て、苦い顔をしていませんか? 「マンガは子どもに害」と思われがちですが、実はさまざまなメリットもあるとか。そこで、メディアが青少年に与える影響について研究されている家島明彦先生にマンガが子どもに及ぼす影響についてお話を伺いました。

子どもにマンガを読ませてもいい?

子育て世代の中心である20~40代は、マンガ市場が急拡大した80~90年代に青春時代を過ごした、いわばマンガ世代ですよね。私も例に漏れず、『ベルサイユのばら』でフランス革命、『あさきゆめみし』で『源氏物語』、『花の慶次』で戦国武将について学んだ(!?)クチです。

でもこの先、子どもにもマンガを読ませていいのか不安に思うことがあります。描かれていることを鵜呑みにして早熟・乱暴になったり、偏った考えに陥るのではないかと…。

同じ考えを持つ親は少なくないようで、PTA全国協議会が実施した「子どもとメディアに関する意識調査」の最新リポート(平成25年3月発表)によれば、「マンガが子どもに良い」と考える親の割合は27.5%。つまり3割弱しかいません

マンガから「理想の自分」を見出す現代青年

実際のところマンガは人、特に子どもにどういった影響を与えるのか、家島明彦先生にお話を伺いました。マンガの悪い影響ばかり考えてしまいますが、いい影響もあります…よね?

「どんなメディアにもメリットとデメリットがあるわけですから、マンガにももちろん、メリットはあります。

マンガのメリットとしてまず挙げられるのは、モチベーション(やる気)を与えられることです。夢や希望、目標を持たせて意欲や関心を高める効果ですね。」

「『なりたい自分』という理想像を描く時に、ゼロから描く人って少ないんです。実在の人物から架空の人物までいろんなモデルを参考にして作りあげるものですが、その時にマンガやアニメを参考にして理想像を見出す現代青年は少なくありません。つまりマンガやアニメの登場人物が、自分が進むべき道を示す模範や反面教師だったり、ロール(役割)モデルになっているんです。実際にマンガから影響を受けて成功している人たちもいますよね。」

「特に「マンガに影響を受けた」と公言するスポーツ選手は多いですね。中田英寿さんや本田圭佑選手、メッシやロナウジーニョなど、ワールドワイドなそうそうたるメンツが『キャプテン翼』の愛読者だったというし、テニスの錦織圭選手は『テニスの王子様』にヒントを得たプレーがあるとか。スポーツ以外にも『ガラスの仮面』に描かれた女優、『宇宙兄弟』に描かれた宇宙飛行士など、マンガの影響で職業を目指す人も少なくないはずです。」

「小学生ぐらいだと『仮面ライダーになりたい』『○○ちゃんになりたい』といった憧れのレベルですが、中・高・大学生ぐらいになるとアイデンティティの問題がからんできて『自分って何だろう?』と考えます。その時に現代青年はマンガやアニメを参考にして、理想像を見出す傾向にあります。その人物そのものになりたいわけではなく、そういう要素・能力を身に付けた唯一無二の自分になりたい、と。」

「『仮面ライダー』のようなヒーローや『ブラック・ジャック』みたいな天才外科医にはなれないかもしれないけれど、マンガは、そうなりたいと思わせることによって、子どもに高い理想や夢を見せることができるメディアだと思います。」

まだある! マンガが子ども与える良い影響

そのほかマンガによるメリットはどのようなものが考えられますか?

「モチベーション(やる気)の他には、リラクゼーション(息抜き)、リフレクション(気づき)の効果がありますね。マンガによって気分転換をしたり、省察を深めたりすることができます。省察とは、自分はどうだろうかと、自分の行動や考え、あり方を振り返ること。子どもの成長にはもちろん、大人にもいい効果を与えてくれると思います。」

「ロールモデルを見出すメディアは何でもいいですが、マンガのようにセリフとイラストが一緒に提示されると、頭の中により具体的なイメージを描きやすくなりますよね。現代の若者はイメージに関する認知機能が高いという話もありますが、それもマンガの影響があるのかもしれません。影響のメカニズムは複雑なので、メディアの影響を単純に考えることはできませんけどね。」

大人も一緒にマンガを読もう!

自覚している以上にマンガから得られるものがありそうです。といっても、どんなマンガでも子どもに読ませていいワケではないですよね?

「そうですね、子どもに読ませるマンガの種類(ジャンル)や与える時期(タイミング)も重要だと思います。私にも幼い子どもがいますが、最初は学習マンガみたいなものや、夢や希望を鼓舞するようなものから与えたいなあと思いますね。」

「また、マンガの与えっぱなしはいけません。子どもがどんなものを読んでいるのか、大人が把握することが大事。そのうえで『お母さんはこう感じたよ』など作品について話したり、子どもが間違った解釈をしている時は『本当にそうなのかな?』と指摘したり、『もっと~してみたら?』とアドバイスをして解釈を豊かにしてあげたり。子どもと経験を共有しながら大人ができることはたくさんあります。子どもが大人に何を求めているのかを読み解くこともできますしね。マンガをきっかけに、もっと子どもとコミュニケーションをとるといいと思いますよ。」

マンガが親子のコミュニケーションツールになりうることは、最大のメリットかもしれません。最近のマンガ、特に人気のある作品は、プロットもしっかりしていて子ども向けでもなかなか侮れないもの。「子ども向けマンガなんて」とバカにせず、一緒に読んでみませんか?

お話を聞いたのは…

  • 家島明彦先生

    大阪大学卒業後、京都大学の修士課程修了、米国ノースイースタン・イリノイ大学を経て、2009年に京都大学大学院の博士課程を学修認定退学。現在は大阪大学教育学習支援センターの講師であり、3児のパパ。日本マンガ学会のマンガ教育部会代表も務めている。心理学と教育学の立場からメディア(主にマンガ、アニメ)が青年に与える影響について研究している。

ライター紹介

衣山 泉

幼稚園児の娘、フリーライターの夫、2匹の愛猫と福岡在住。旅行も外出も大好きだが、平日は娘のお迎え以外はほぼ家にこもりっぱなしのインドア派なので、体力が追いつきません。ほしいものは、タフな体。余力のある週末には日帰り温泉や蚤の市、焼き物の里めぐりに出かけています。

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