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おもちゃは多いと問題あるの? 専門家がおすすめ&選び方を紹介

掲載日: 2018年12月5日更新日: 2018年12月5日高柳涼子

子どもの好奇心や五感を育むおもちゃ。いろいろなもので遊ばせたいと思う一方で、与えすぎを心配するパパママも多いのでは。そこで、子どもの発達にくわしい臨床心理学博士・西澤奈穂子先生に、心理学の視点から見た選び方やおもちゃの適量について、教えていただきました。

子どもにとって「おもちゃと」は? 質と量の考え方の基本

まず、子どもにとって遊びやおもちゃはどんな存在なのでしょうか?

遊びは『活動のすべて』ともいえる重要な役割を持っています。大人であれば、気づきや学び、他者とのコミュニケーション、自分に起きた出来事を『本を読む』『人と話す』などの行動を通して理解・消化します。ですが、子どもにとっては遊びが同じ役割。言葉にできない分、大人が考える以上の存在といえます」

「遊びを通して自分の気持ちや考え、行動を表現したり探索したりする『プレイセラピー(遊戯療法)』という子ども向けの心理療法もあるくらいです」

「子どもは遊ぶのが仕事」とも言いますが、本当にその通りですね。

「そうですね。おもちゃはそのツールの一つです。といっても、大切なのはおもちゃ自体ではなく、おもちゃや遊びを通して大人(とくに親)とよい関係性を築くこと

「たとえ短い時間でも、一緒に遊ぶというコミュニケーションが脳にとっては快い刺激となり、発達を促します。一緒に遊んだときの遊び方を後日ひとりで試すといった行動も見られます」

おもちゃはどんなものをどれくらい与えるのがよいか、基本的な考え方を教えてください。

親子それぞれの性格や組み合わせにもよるので一概には言えませんが、量より質を重視すべきです。1種類の遊び方のおもちゃが10個あるよりは、5種類の遊び方のおもちゃが2個ある方がいいですね。さまざまな遊び方ができるおもちゃほど、試して工夫する力や考える力がつき、子どもが主体となっておもちゃとの関係を作れます

「一方、遊び方が限定されてしまうおもちゃは、常に受け身になります。工夫の余地がないため、飽きたら別のおもちゃでいいや…となりがちです」

年齢別に紹介! おすすめおもちゃ&傾向

西澤先生がおすすめするおもちゃを理由とともに紹介します。発達には個人差がありますから、年齢よりも状態を目安に参考にしましょう。

0歳〜8カ月(自分で動けるようになる前の時期)

「自分の顔や口、体ですべてを理解する時期です。色はまだあまりわかりません。投げても口に入れても安全で、さまざまな素材の布や木などで肌ざわりの違いを感じられるものがおすすめです。視覚は関係の入り口でもあり、目を合わせての非言語コミュニケーションが、発達に大切な影響を与えます。スマートフォンなどの画面にも興味を持ちますが、2歳まではテレビやスマートフォンはなるべく見せないほうがよいといわれています」

例:布の絵本、投げても振っても遊べる柔らかい素材のガラガラなど

8カ月〜1歳6カ月(自分で動けてコミュニケーションも少し取れる時期)

「指先や全身の感覚が育ち、目と手の感覚も徐々に統合されます。押すと音が出たり、形を変えたり、動かしたりできるなど、働きかけの結果を親子で楽しめるものがおすすめです」

例:小麦粘土、握って描けるクレヨン、使い方次第でいろいろな音が出る楽器、乗り物など

1歳6カ月〜2歳(言葉による表現が始まる時期)

「心も体もめざましい発達を見せる時期。世界観のあるおもちゃが表現力を育みます。この頃には色や形の美しさも理解できるので、見た目も意識して選びましょう

例:木製のレール&電車、木製のリアルな食材&包丁、しゃぼん玉、カラフルな積み木など

3歳(言葉がつながり自分で話が作れる時期)

ものの名前を覚えて、自分の中でお話が作れるようになる時期なので、ストーリーを表現できるおもちゃがおすすめ。問題解決能力も高まるため、おもちゃも少しレベルアップをしてみましょう」

例:手にはめて遊べるパペット、少し複雑なパズルや積み木、リアルなままごとセットなど

4歳〜5歳(友だちとの関わりが大切になる時期)

「コミュニケーション能力や数・物語づくりへの興味が高まり、家族以外との人間関係もでき始める時期。誰かと一緒に遊べたり、楽しく自然に学べるおもちゃがいいですね」

例:自分でお話を作れるカード、地球儀、ボードゲームなど

6歳以上(社会性を発達させて劣等感なども生まれる時期)

「6歳から12歳は、発達心理学の用語で『ギャングエイジ』とも呼ばれる時期。仲間を大切に感じて社会性を発達させながら、がんばればできる/がんばってもできない…などを学んでいきます。使うおもちゃの内容や量はケースバイケースになります」

「発達に応じて合うおもちゃは変わりますが、手ざわりや形の変化など、スマートフォンやタブレットでは得られないタイプの刺激を与えられることも大切です」


おもちゃの多すぎ&少なすぎは悪影響を及ぼす?

おもちゃが多すぎる、反対に少なすぎる場合はどのような影響があるのでしょうか?

どちらも量そのものが悪影響を与えることはありませんが、数が多いほど受け身にはなります。特に遊び方が限定されるおもちゃは、増やさない方がいいですね

「少ない場合、必ずしもおもちゃを使わなくても、一緒によい時間を過ごせれば大丈夫です。遊びのツールが何もないのは問題ですが、子どもは本来、なんでも遊び道具に変え、遊びを作り出してしまうものです」

「ただし『自分だけのおもちゃ』は『所有』という感覚の理解につながるので、『自分専用のもの』は作ってあげましょう。たとえばノートや絵本、画材といったものに記名してあげるだけでもOKです」

本人が欲しがったりプレゼントされたりすることも多く、量も増えがちです。どう調整したらよいのでしょうか。

「箱にしまいこんで遊んでいない、存在自体を忘れている…といったものは不要と判断していいと思います。ただし、いま遊んでいなくても『昔これで遊んだな』と思い出すことで『時間の連続性』を学んだり、おもちゃがプレゼントしてくれた人との関係性の象徴だったりするケースもあります」

「いずれにしてもおもちゃの処分は子どもにとって一大事。親が勝手に判断せず、処分方法は子どもの性格に合わせて考えてあげましょう

捨てる以外の方法として、誰かにあげることや寄付するなどもおすすめだそう。

「おもちゃが新しい居場所に移る、ほかの子と楽しさをシェアする感覚で、すんなり手放せることも多いですね。また、『5つのうち3つを処分しよう』などと提案し、選ばせることも有効です。本人も納得できますし、どれが自分にいま必要か考えるプロセスや選択も学びの一つとなり、成長につながります」

子どもにとっておもちゃは、大人が考えるよりずっと大切なもの。大人の基準だけで判断せず、出会いからお別れまで成長に合わせてサポートしてあげたいですね。

お話を聞いたのは…

  • 西澤奈穂子先生

    アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院臨床心理学博士・准教授。専門は子どもと家族の臨床心理学、障がいのある家族の支援、子どもの虐待防止と介入、異文化間心理学、コミュニティ心理学。アメリカ心理学会(APA)が開発した育児支援プログラムを日本に合うように使いやすくして導入した「ACTすこやか子育て講座」でもプログラムづくりの中心メンバーを務める。

  • カリフォルニア臨床心理大学院
  • 日米心理研究所(ACTすこやか子育て講座)

ライター紹介

高柳涼子

雑誌編集部勤務を経てフリーランスに。ライティングと校正を中心に、ときどき編集もやる3児の母です。これまでに関わった分野は、求人、進学、ウェディング、アート、手芸、田舎暮らし、食育、仏教、料理など。

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