熱湯がかかったり、炊飯器の蒸気吹き出し口やアイロンなどに手を置いてしまうなど、すぐにわかるやけどとは違い、なかなか気付きにくい低温やけど。そんな低温やけどの原因や症状を、やけど治療の専門家、「川添医院」院長・川添修成先生に伺いました。
低温やけどの原因と症状
「低温やけど」という言葉は知っていても、どんなことが原因でどんな症状なのかはなかなかわからないのでは? いったいどのようにして低温やけどになるのでしょうか。
「低温やけどは、あたたかいなぁと感じるくらいの温度のものでも、長時間触れ続けることなどにより起こります。一番多い原因は湯たんぽですね。ハロゲンヒーターやストーブなどの前に長時間いても低温やけどになります。また、これは大人の方なのですが、疲れていてつい居眠りをしてしまい、保温便座に4時間くらい座っていて低温やけどになった患者さんもいましたよ。」
普通のやけどと違うところは、「熱い」のではなく「あたたかい」「心地よい」と感じる温度(44度くらい)で起こること、そして長時間(3時間〜4時間以上)触れていることにより、気づかぬうちにかなり深いやけどを負う可能性があるというところです。
「症状ですが、はじめはわからないことが多いですね。でも、1日2日と日を追うごとに水ぶくれや赤みが帯びてくるなど症状が現れます。深いやけどほどはじめは痛みもなく、なかなか気付きにくいのが低温やけどの症状だといえます。」
病院にはいつ行く?低温やけどになったときの対処法

こちらの写真は、湯たんぽが原因で低温やけどになった6歳男児の足の様子です。やけどをしてから一週間くらいたったところで、写真のような症状になったそう。こちらは3度のやけどですが、見た目や進行具合などは、他の原因により起こった3度のやけどと同じで、低温やけどだからといって目に見える違いがあるわけではありません。
「お母様によれば、タオルなどを幾重にも巻き、実際に触ってみてもあたたかいと思うくらいの状態にした湯たんぽを布団に入れ、お子さんの足元から20cmくらい離したそうです。ですが、寝ている間に足が湯たんぽの上に乗ってしまったらしく、結構深いやけどになってしまいました。」
朝起きると3cmくらいの水ぶくれが足首の前側にできていましたが、範囲も小さく、痛さを訴えることもなかったので、お母様もそれほど大げさなものではないと思っていたそうです。念のため近くの病院を受診しましたが、2、3日様子を見ましょう、ということで薬など一般的な処置をしたとのこと。
このように、低温やけどの症状はお医者様でもなかなかわかりにくく、1週間や2週間かけて症状が現れることもあり、すぐには判断ができないのだそうです。
「ところが、6日後にまた水ぶくれができてしまい、意外と深いやけどだとわかったそうです。そこで、やけど治療専門の病院である当院を受診されました。」
受診するまでの応急処置と、親が注意すべき点
では、おうちで低温やけどに気が付いたときにはどのような処置をして病院へ向かえばよいのでしょうか。
「低温やけどの場合、本人の痛みがあまりないので冷やす必要はありません。もしご家庭に抗生物質の軟膏などがあれば、それをやや多めに患部に塗ってガーゼなどを当てて病院を受診してください。」
一般の方は、範囲が小さいとあまりたいしたことではない、と考える傾向にあるようですが、そんなことは決してありません。思いもよらない深いやけどを負っている可能性があり危険です。皮膚に赤みがある、水ぶくれができているなど「もしや?」と思った場合は決して自己判断はせず、すぐに病院で診てもらいましょう。そして注意深く数日経過を観察することが大切だということです。
低温やけどを防ぐにはどうしたらいい?

「あたたかくて気持ちがいい」という温度でもやけどに至ってしまうのが低温やけどの怖いところ。では、この低温やけどをしないために気をつけることは何でしょうか。
「熱源に長時間触れたり近くにいたりしないことですね。患者さんの話から、だいたい4時間前後でやけどになっているようです。ですから、湯たんぽを使用する場合は、布団の中に入れっぱなしにせず、温まった頃に取り出すなどしましょう。またお子さんをあたためてあげようと長時間ストーブなどの前に座らせたりするのも危険です。」
低温やけどの起こりやすい状況は?
こちらの病院では、電気カーペットやこたつ、使い捨てカイロによる低温やけどの患者さんは今のところいないとのこと。とくにお子さんの場合は、湯たんぽやストーブによるものが多いそうです。
先ほどの例のように、あたたかいと感じるくらいなので大丈夫だろうと思っていても、低温やけどになってしまう場合が多いのだとか。また、服を着ていると熱がこもりやすく深いやけどにもなりやすいそうですので、厚着をする冬は要注意です。
ちょっとした気の緩み、油断からおきてしまうのが「やけど」だと川添先生。ほんの少しでも「もしかしたら危ないかな?」と思ったら、湯たんぽやストーブの長時間使用は避けましょう。お子さんだけでなく、お母さんも気をつけて。疲れてストーブの前で居眠り、なんていうのも危ないですよ。