子どもに多く、冬に発症のピークを迎えるという溶連菌感染症。今年2015年は春頃からずっと流行が続いていて、その患者数は過去10年間の同時期と比較して最多となっているんだそうです。溶連菌感染症の特徴や予防法について、くろさわ子ども&内科クリニックの黒澤サト子先生に伺いました。
5〜15歳の子どもに多く、その症状は多岐にわたる
溶連菌感染症とはどういった病気なんでしょうか?
「溶連菌感染症というのは、グラム陽性球菌によって引き起こされる細菌感染症です。溶連菌には、A群、B群、CまたはG群といった種類があり、それぞれに特徴がありますが、一般的に子どもがかかる病気として知られているのは『A群溶血性連鎖球菌』です。」
溶連菌感染症は、5〜15歳くらいの子どもに多く、3歳以下だと典型的症状が出ないそうです。1年中ある病気ですが、特に冬場や春から初夏にかけて発症のピークを迎えるといいます。
「溶連菌が引き起こす病気は非常に多岐にわたり、大きくわけて3つのカテゴリーに分類できます。まず、直接細菌感染による急性咽頭扁桃炎や、とびひや蜂窩織炎などの皮膚の病気。毒素による猩紅熱や劇症型溶血性レンサ球菌感染症。免疫学的機序で起こる急性糸球体腎炎やリウマチ熱といった合併症です。」
子を持つ親にとっては、「溶連菌」とはよく耳にするありふれた病気のように思いますが、実は怖い合併症も起こしかねないものなんですね。
代表的な症状は急な発熱と喉の痛み
溶連菌感染症にかかるとどのような症状が出るのでしょうか?
「潜伏期2日〜5日で、38〜39度くらいの急な発熱があり、全身がだるく、喉が赤く腫れて痛み、しばしば嘔吐を伴うのが代表的な症状です。扁桃腺に白い膿がつくこともあります。そして、イチゴ舌といって、舌がイチゴのようにブツブツになったり、体にサンドペーパーのような、針の頭くらいの細かい発疹が出てかゆみを伴うこともあります。」
「溶連菌は一度かかっても免疫ができにくいうえ、菌のタイプも多いので、何度でも繰り返しかかるのが特徴です。菌が喉の細胞の中に入り込んで常在してしまうと、何度も再発することもあります。また、家族の中に溶連菌を常在する保菌者がいると、そこから繰り返しうつってしまう可能性も考えられますね。」
子どもが何度も繰り返し溶連菌に感染する場合は、親が保菌者のケースもあるそうです。特に症状が無いなら治療の必要は無いそうですが、親が風邪や免疫が落ちた時に菌が咽頭で増殖し、子供に感染することがあるとか。そのため、親も日頃から健康に気をつけましょう。
手洗いうがいで感染予防 抗生物質は最後まで飲みきって
溶連菌はどういった経路で感染するのでしょうか?
「せき、くしゃみなどの飛沫感染や、手などを介して口に入る接触感染でうつります。保育園、幼稚園、学校などの集団生活の場や家庭内で感染が拡大しやすいので、手洗いとうがいを充分にして予防しましょう。」
ほかの感染症と同じく、やっぱり大切なのは手洗いとうがい。タオルやコップなども他の人と共用しないほうがいいそうです。
「溶連菌は、検査キットで喉の菌を採取すれば、10分程度で判定することができます。昔は『猩紅熱』と呼ばれ、命も落としかねない伝染病として恐れられていましたが、今はよく効く抗生物質があるので、飲むだけで容易に治療できるようになりました。」
「ただ、気をつけて欲しいのは、病院で出された抗生物質は必ず飲みきること。熱が下がって元気になったからといって、薬を飲むのを途中でやめてしまうと、急性糸球体腎炎やリウマチ熱などの重大な合併症を引き起こす場合があります。一般的には、1日3回、10日間薬を飲み続ける必要があります。小さな子どもの場合は薬を飲ませるのが大変かもしれませんが、ゼリーに混ぜるなど工夫して必ず飲みきって下さい。」
症状が消えても、自己判断で薬をやめないことが大切なんですね。
ホームケア:喉の症状が強いときは栄養よりも水分重視の食事を
「病院で抗生物質をもらったら、少なくとも24時間は熱や喉の症状が治まるまで自宅で安静に過ごしましょう。喉が痛いので食欲が落ちたり、喉への刺激で吐いてしまうこともあります。食べるのが辛そうだったら、無理に固形物を与えなくても大丈夫。水分を充分にとって、ヨーグルトやスープ、おかゆ、うどんなど、喉通りが良いものを与えるといいでしょう。」
「そして、集団生活を始める前に医師の診察を受け許可を貰いましょう。治療後に尿検査をして異常がなければ、急性子宮体腎炎の合併症なく完治したことが確認できます。」
溶連菌をはじめ、様々な感染症が広がりやすいこれからの時期。手洗いとうがいをこまめにして、しっかりと予防する意識が大切ですね。