小学校に入学すると、靴の紐などを自分で結ぶ機会が増えます。大人がくるっとちょう結びするのを見て、「私も(僕も)やりたい!」と言い出したら、学ばせるベストタイミング。練習が必要ですが、親が楽しく教えてあげられるといいですね。1級家事セラピストで、子ども向けのお手伝い塾も開催している山道崇子さんにお伺いしました。
細かな「手仕事」が失われている今、ちょう結びを大切に
現代の日本では、昔に比べて手を使った仕事が減っていると山道さんは言います。
「指先を使って細かな作業をする能力を、教育の用語では巧緻性(こうちせい)と呼びます。巧緻性を高めることが、幼児の脳に良い影響があると考えられているんです。同時に、脳が発達することで、指先の神経が発達していき、細かなことができるようになります。」
日本では伝統的に箸を使ったり、折り紙、あやとりなど、精密な手の動きを必要とする文化があります。しかし現代は、遊びもスマホやゲームなどが中心となり、昔よりも手を使わなくなっています。なるべく手を使う場を多くするように親が意識をしないと、子どもの巧緻性はなかなか高まっていきません。
「ちょう結びは、少し先のことを予測しないとキレイにできません。輪の大きさを左右で揃えるために、その前の段階で長さを調整しながら結んでいきます。もっと高度になるとリボンの表と裏を意識することも必要になります。普段の生活で少し先を見て行動する習慣などにも繋がっていくと思いますよ。」
きれいなちょう結びができるようになるためには、細い紐ではなく、面を意識できるリボンなどで行うと良いそうです。平らな状態を保ちながら折るように結んでいくと、ちょう結びの構造が理解でき、上達が早いそうです。
ステップ1:ちょう結びを練習するための道具を揃えよう
まず最初に、ちょう結びを練習しながら理解できるように、以下のような道具を用意しましょう。
- 幅15センチ、長さ30センチほどの、ダンボールの板
- 幅2センチ、長さ30センチほどのリボン(色違いで2種類)
「リボンはできれば、色違いで2種類あると良いですね。右と左で色が違った方がわかりやすいからです。2本のリボンを後ろに回して貼り付けて、リボンを結べる状態にしておきます。できればダンボール板にいくつも用意します」
洋服についたボタンの掛け外しと同じように、「いくつも連続して練習する」ことが大切だそう。だからこそ、専用の道具を用意してあげることが効果的です。
ステップ2:基本の結び方をマスターしよう
用意した練習用の道具で、まずは基本の結び方をマスターしましょう。
ちょう結びの手順
- 2本のリボンを交差する
- 重なりが上になった方を逆のリボンにくぐらせる
- 今度は下側のリボンで輪を作り、上になったリボンをかぶせるようにして輪に通す
この手順をしっかり教えてあげると縦結びにならずにキレイにできるそうです。
下の写真では、リボンが交差した部分で黄色いリボンが下側、赤いリボンが上側になっているので、先に黄色いリボンで輪を作ってから、赤いリボンを手前側にかぶせるようにします。
ちょう結びをしたときに、90度ほどくるりと回転してしまうことを「縦結び」といいます。上の写真で赤いリボンを上からかぶせるのではなく、右下から回りこませてしまうと縦結びになります。美しくないうえ、ほどけやすいので、正しく結べるように教えてあげたいものです。
また、ちょう結びをほどくところから始めると、興味を持ってくれることが多いそうです。
「紐やリボンを引っ張ると、存在していた『ちょう』が消えてしまいます。子どもにとっては魔法みたいに楽しいこと。結ぶだけではなく、ほどくことも一緒に楽しんでみてください」
ほどくところからなら、誰でも楽しめるうえ、自分で結んでみたいという気持ちが芽生えそうです。
ステップ3:体で感じながら覚えるちょう結び
基本の結び方をマスターしたら、体で感じられる方法で練習してみるのがいいと山道さんは言います。実際に生活の中で行うちょうちょ結びは、スニーカーの紐を結ぶ、ブラウスについているリボンを結ぶなど、衣類についているものを結ぶケースが多いので、より実践的な練習になりそうです。
「子どもの浴衣に使う兵児帯(へこおび)を腰に巻き、体の前でちょう結びをします。結んだときの感覚を体で感じることが大切です。」
自分でお腹に結べば、きつさを感じたり、緩んだときにも気付くことができます。また、長さがあり、しっかり手に持てて扱いやすいので、まずやり方を覚えるのには向いていそうです。
応用編として、プレゼントのリボン結びで、向上心アップ!
上手に結べるようになったら、お友達や家族にプレゼントを渡す時などに、一緒にリボンを結んであげるのもいいそう。
「相手のことを思ってキレイに結びたいという気持ちが、向上心をかき立てると思います。」
相手に喜んでもらうためにワクワクする気持ち。子どもの顔が目に浮かぶようです。
大人でも美しくちょう結びをするのは、なかなか難しいもの。もし、いつも縦結びになってしまうというママやパパは、この機会に子どもと一緒に練習してもいいかもしれませんね。