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礼儀も身につく?「親子で着物」にチャレンジ

掲載日: 2014年12月26日更新日: 2017年5月16日増田 美栄子
日常生活では洋服を着ているけれど、改まった場には親子で着物を着て出掛けてみたい。でも着付けはプロに任せたとして、そもそも子どもは着物を着てぐずったりしないの? 着物で外出する時のマナーはどうする?…などなど、不安なことばかりで一歩を踏み出せない人も多いようです。
そこで、大人はもちろん子どもの着付けにも実績豊富な「民族衣裳文化普及協会」の認定講師・阿久根房子先生に、子どもと一緒に着物を楽しむ時のコツを教えていただきました。

産着だって着物。0歳児から着物に親しんでいる?

実は「着物に興味があるけれど、始め方が分からない」という人たちから、同じ質問をされるのだとか。

「よく『何歳くらいから着物を着られますか?』と質問されるんです。でも、現代の日本では洋服が普通ですが、つい100年ほど前までは着物で暮らすのが一般的でしたから、もちろん何歳からでも着られます。生まれてすぐに着る真っ白な産着も、前合わせで着物と同じ構造ですよね。そういう意味では、本当は身近な存在なのです」

最初はレンタルからでも。親子で一緒に着物体験してみよう

写真提供:着物レンタルサロン 夢館
とは言え、着物初心者には、着物のすべてが謎だらけ。そこで簡単に現在の着物の歴史や種類からついて教えていただきました。

「着物という言葉には“衣服”という意味がありますが、現代では『和服』、つまり日本の伝統衣装と同じ意味で使われています。今のような直線的な布で作られるようになったのは平安時代頃からで、当時は十二単(じゅうにひとえ)なども着られていました。現代では正装もかなり簡略化され、一般的に着られているのは冠婚葬祭に着る留袖や振袖などから、略礼装の色無地や訪問着、そして普段着として着る小紋・紬(つむぎ)や浴衣(ゆかた)などですね」

改まった場では、いわゆる「格」が高い着物を着るわけですね。しかし初心者にはこれらの違いを覚えるのがなかなか大変で、とっつきにくさを感じる部分でもありそうです。

「そうですね。ですから最初は、よく着ていく場所に合わせて1着お気に入りを仕立てて、帯や小物などで変化を楽しむのがオススメです。細かくは複雑なのでお店で聞いてみるのがよいと思いますが、一般的には紬の訪問着は普段着、絞りの訪問着も柄と合わせる帯によっては普段着として使えます。例え安く仕立てても、着物というだけでオシャレなお出掛け着になると思いますので、気軽に楽しんで欲しいですね」

しかし仕立てるとなると、資金面も気になるところ。そこで最初はレンタル着物で自分の好みを探してみるのも良いかも知れません。

例えば、親子で一緒に着物を借りて京都観光ができる、京都の着物レンタルショップ「夢館」では、小物まですべてセットなので手ぶらで訪れればOK。3歳から10歳までを対象とした着物が、サイズごとに15〜20点ほど用意されています。京都観光のついでに親子で着物デビューというのもいいですね。

着物レンタルサロン 夢館(ゆめやかた)
〒600-8103 京都市下京区万寿寺町128
TEL:075-354-8515
営業時間:午前10時〜午後8時(最終入店18時まで)
休業日:年末年始(12/31〜1/3)のみ
子ども着物レンタル1日5000円(税抜) ※事前予約で半額の2500円(税抜)キャンペーン中。

ママが子どもに着付ける時は、会話を大切に

プロではないママが子どもに着付けをしてあげる時には、子どもが飽きないように、説明しながら進めることがコツとのこと。

「着付けは、プロでも早くて20分程度は時間がかかります。年に数回着る程度のママなら、30分から1時間程度かかってしまうかも知れません。子どもが数分程度しかじっとしていられないなら、無理をせず、まずは帯を締めるだけで着られる浴衣で慣れるのも良いでしょう。」
『ここはしっかり押さえないと着物が落ちちゃうから、ちょっときつく締めるけど我慢しようね』、『今から綺麗な帯を巻くから手を挙げていてね』と説明しながら進めると、納得して一緒に頑張ってくれます。子どもとの会話を楽しみながら進めましょう。また、子どもは身体が小さいので、必ず大人は膝をつくなどして目線を合わせてあげてくださいね」

着物で過ごす時、子どもに教えたい礼儀作法は?

着物を着ると、自然と立ち居振る舞いをいつもより意識するようになるので、子どもに礼儀作法を教えるきっかけになりそうです。子どもと一緒に着物を着る時、どのようなことに気を付ければ良いでしょうか。

「着物を着る時は、和室に通されたり和食をいただくことが多いと思いますが、細かな礼儀作法を挙げればきりがなく、最初から完璧に覚えようとすると子どもは嫌になってしまいます。
礼儀作法というのは本来、周りの人に不快な思いをさせないためのものですから、細かいことを守らせて窮屈な思いをさせるのではなく、『着物は日本の正装だよ。これを着たら姿勢をよくして、大きな音を立てたり騒いだりしないで良い子にしていようね』と、一番基本的なことだけを教えて見守ってあげましょう。『着物を着ているときは姿勢がいい方がかっこいいし、騒いで裾がはだけちゃうとかわいくないよ』と、子どもの心をくすぐるような言葉をかけてあげると納得してくれやすいかも知れません。堅苦しくせず、まずは着物に親しむことが大切ですね」

親子で着物を着て歩く時の注意点

「着物は前を合わせて着ているので、着崩れると裾がはだけてしまいます。そうならないように、膝を開けないで歩くことを意識しましょう」

膝を開けないで歩くと、歩幅がいつもより少し狭くなって、はだけにくくなりますね。しかし元気な男の子だと特に、乱れやすくて…。

「それでもはだけてしまった時は、着物は構造上、右手で上前を押さえますから、なるべく右手が使えるようにしておくと良いですね」

子連れで出かけるときは、左手で子どもと手をつなぎ、右手を空けておくのが良いようです。その際、持ち物はほかの家族に任せるか、巾着などでコンパクトにまとめて右手で持ち、いざと言う時に持ったままでも上前を押さえられるようにしておきましょう。

「少し大きなお子さんなら、親は一歩後ろを歩いて、歩き方や裾の具合を見ていてあげるのが良いかもしれません」

着物は姿勢を正し、褒められて気分よく過ごせる素敵なツール!

「着物を着ると背筋が伸びて姿勢が良くなりますし、子どもは着物を着ているだけで大人から褒められたりして、気分よく過ごせるようです。そして日本は今、和食の世界遺産登録や2020年の東京オリンピック開催決定で世界中から注目されていますから、日本の伝統衣装である着物を好きになるということが、日本人である自分に誇りを持つことにつながると思います」

親子で着物を楽しむ人たちの声をご紹介

一足先に、着物を親子で楽しんでいる人たちにインタビュー。何をきっかけに、どんな風に着物を楽しんでいるのでしょうか。

「毎年お正月には、親戚一同で着物を着て記念撮影」

京都府在住の堤律子さん親子は、お子さんが3歳と2歳の頃から、毎年お正月に着物を楽しんでいるとか。

「義母が着物の着付けの講師をしていたので、0歳から1歳までは義母手作りのちゃんちゃんこを着て、息子は3歳から、娘は2歳から毎年お正月には着物を着ています。子どもたちが着物を着るのはまだ七五三とお正月だけですが、息子は嫌がらず普通に受け入れて着てくれますし、娘は着物の丈を合わせたり着物や帯を選ぶのを楽しんでいて、一度着ると『いつまでも着ていたい』と言ってなかなか脱ぎたがりません。着物を着るようになってから、娘は義実家に遊びに行くとお正月以外でも『着物が着たい』と言って、時々は着せてもらっています」

堤さんのお母さんも着物が好きなので、三世代で「これが可愛いかな」「この髪型にしようか」「この帯と合うね」などと楽しんでいるそう。着物で三世代家族共通の趣味として楽しめるって楽しそうですね。

「娘の3歳の七五三をきっかけに、親子で着物を楽しんでいます」

ちなみに、いこーよの編集長・東麻吏さんも、親子で着物を楽しんでいる1人。自身は、30代になってから初めて着付けを覚えたのだとか。

「私自身は、会社の友人に勧められて30代に入ってから着付けを数回習い、その後は週末ごとに着物を着るようにして自己流で覚え、着物で映画や美術館へ行くなど軽いノリで着ていました。妊娠中も着ていて、当然、子どもが生まれたら一緒に着たい!と思っていました。とは言え、洋服の方が汚れても平気・歩きやすいといった理由からなかなかチャンスがなく、やっと3歳の七五三の衣装で着物を着られることに。そししてその翌年のお正月には、娘は七五三の衣装を着て、家族3人で着物を楽しみました。娘は七五三で女子的な“カワイイ”心を引き出されたようで、着物に良いイメージを持ち、『着物を着たい!』と思ってくれるようになったようです」

子どもにとっては洋服に比べて不自由な面もあるものの「私たちの先祖はこれを着て、同じ感覚で過ごしていたんだ」というのを経験すると、日本の歴史を教科書だけで学ばせるよりも良さそうとのこと。最近親子で普段着物を購入し、ちょっとしたお出掛けにも親子で着ていく予定だとか。「小学生くらいになったら、自分で着られるようになってほしい」と語ってくれました。

着物を着て訪れるだけでお得!になるサービスも

着物を着てお出掛けした時、利用料金や入館料が安くなるお得な情報をいくつかご紹介。該当する着物の種類や条件は施設ごとに違うので、事前に確認してみてくださいね。
京都きものパスポート(京都)
HPからダウンロードできるほか、京都の主要駅や観光案内所などで手に入ります。着物を着て施設を利用すると、施設ごとに特典が受けられます。

山種美術館(東京・広尾)
特別展「没後15年記念 東山魁夷と日本の四季」の会期中(2014年11月22日〜2015年2月1日)および「花と鳥の万華鏡 —春草・御舟の花、栖鳳・松篁の鳥—」の会期中(2015年2月11日〜4月12日)、着物で来館すると団体割引料金(一般:1000円、大高生:800円)となります(1名様1枚につき1回限り有効、複数の割引の併用不可)。

池袋演芸場(東京・池袋)
毎月1日〜20日に着物または浴衣で上席・中席を利用すると、一般2500円を2000円に割引。ただし作務衣・甚平は対象外、1月は通常料金。

最近では、街なかで日常的に着物を楽しんでいる人を見かける機会も増えてきました。きっかけさえあれば、着物ライフはそれほど難しいものではなさそうです。2015年は“親子の着物元年”にしてみはいかがでしょうか。

お話を聞いたのは…

  • 阿久根房子さん

    日本の美しい伝統文化である「きもの」の知識を広め、技術を受け継いでいくため設立された「一般財団法人 民族衣裳文化普及協会」の、きもの事業部 東京本部副委員長・東京池袋支部長を務める。名取名は愛志。同協会の認定講師として32年以上の実績を持ち、女性文化大学の開催や留学生との交流にも携わる。

  • 一般財団法人 民族衣裳文化普及協会

ライター紹介

増田 美栄子

1975年生まれ、群馬出身。京都の大学を卒業後、マンガ家を目指すもかなわず帰郷、出版社に拾われて編集の道へ。某新聞社の旅冊子や月刊生活情報誌の編集責任者などを経て、30代後半で突如上京し編集プロダクションのディレクターに転身。結婚を機に千葉に転居、2012年フリーランスの編集者・ライター・ディレクターに。休日は夫とバイクツーリングやキャンプを楽しんでいる。人生楽しんだモノ勝ち!が信条。

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