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赤ちゃんは「顔」が大好き!他人の顔や表情がわかるの?

掲載日: 2016年2月29日更新日: 2017年5月16日廣升敦子

赤ちゃんに向き合っていると、じっと顔を見つめたり、大人の笑顔に笑い返したりします。赤ちゃんは人の顔の判別や表情がわかるのか、気になるママも多いはず。そこで、「赤ちゃん学」の研究をすすめる東京大学大学院の開一夫教授の著書「赤ちゃんの不思議」をもとにお話を伺ったところ、赤ちゃんの神秘的な能力がわかってきました。

視力が弱い赤ちゃんでも、ちゃんと顔が見えているの?

一般的に新生児の視力は、0.01〜0.02程度と言われていますが、他人の顔を認識しているかのような反応を示すことがあります。「赤ちゃんの不思議」にも、こうした反応が紹介されています。

「ある研究で、新生児に対して『顔の絵』と『目や鼻などのパーツの配置がめちゃくちゃな絵』を見せたところ、新生児は『顔の絵』のほうをじっと目で追ったことを発見しました。(※1)」

生まれたばかりの赤ちゃんでも、ちゃんと顔を認識しているのかもしれないと思うと、なんだかうれしくなりますね。

生まれて数日の新生児が大人の「顔まね」をする!?

また、新生児であっても口や手の動きを『模倣』(真似)するという研究結果もあるようです。

「この研究では、生まれて数日の新生児に『口の開け閉め』や『唇の突き出し』、『舌の突き出し』、『手の開閉』の4種類の動作を呈示しました。すると、新生児は同じ動作をしたとあります (※2)。」

このように、新生児が人の真似をする現象を「新生児模倣」と言うのだそうです。では、なぜ赤ちゃんは大人の行動を模倣するのでしょう。「赤ちゃんの不思議」によると、模倣にはコミュニケーション手段としての役割があるようです。

「赤ちゃんは真似をすることで、お世話をしてくれる母親や父親などの大人に『私はあなたのことをこんなに注目しているのですよ』と働きかけているのかもしれません。それによって、模倣される側の大人は『そうかこの子は私を頼っているんだ』と呼応するわけです(※3)」

新生児模倣は、自分と他人の認知の始まりであるとともに、言語を使わない赤ちゃんにとっての大切なコミュニケーション手段ともいえそうです。


6カ月頃には「自分」と「他人」の区別ができるように

「いないいないばぁ」をすると多くの赤ちゃんが反応を示しますが、これも他人の認知と関係があるようです。

「人間の赤ちゃんは『顔』に強烈な興味を示します。そのため、『いないいないばぁ』で『顔』が見えなくなったり現れるという状況が、不安や安堵といった感情を呼び起こし、赤ちゃんに刺激を与えているのかもしれません。(※4)」

なるほど、開先生の考察に合点がいきました。ママたちの間では、一般的に赤ちゃんが「いないいないばぁ」を喜ぶのは、個人差があるものの生後6カ月くらいからとも耳にします。きっと、記憶力が発達して、赤ちゃん自身が予測した通りに他人の顔が出てくることに喜びや興奮を感じるのかもしれませんね。

また、「いないいないばぁ」で喜ぶということは「自分」と「他人」を区別できるようになった証ともいえるでしょう。何気なくしていた遊びも、赤ちゃんに他人の認知を促すことに繋がっているとも考えられますね。


赤ちゃんは「人の表情をよみとる」

親が怒った顔をすると、赤ちゃんも戸惑った表情を浮かべたりすることがあります。赤ちゃんは顔の表情から人の感情も読み取れるのでしょうか…。そんな疑問をもっていたところ、赤ちゃんは人を区別するだけでなく、表情までも認知していることをうかがわせる研究があるそうです。

「ある研究で、母親がにっこりしながら1歳前後の赤ちゃんを呼んだ場合、赤ちゃんはハイハイしながら母親のほうへ前進したそうです。一方、母親がこわばった表情をした場合、赤ちゃんは前に進もうとしませんでした。(※5)」

「また、別の研究では、大人があるおもちゃを見ながら『笑顔』、あるいは『怖がっている顔』をしました。すると赤ちゃんは、大人が『笑顔』になったほうのおもちゃを選んだそうです。(※6)」

こちらを見つめたり、微笑んだり、泣いたり…。見ていて飽きない赤ちゃんの豊かな表情や行動は、親や周りの人へ必死にコミュニケーションをとろうとしている証。しっかり赤ちゃんの目を見て、笑顔で応えてあげたいですね。

参考図書

各項目の詳細は開先生の著書『赤ちゃんの不思議』の下記ページにまとめられています。
※1:11ページ、※2:7ページ、※3:117ページ、※4:50ページ、※5: 124ページ 、※6:125ページ

赤ちゃんの不思議 (岩波新書)

お話を聞いたのは…

  • 開 一夫先生

    東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授。「赤ちゃん学」として、生まれたばかりの乳児から成人までを対象とした発達認知神経科学的研究を進めている。著書に、「赤ちゃんの不思議」(岩波書店)、「日曜ピアジェ 赤ちゃん学のすすめ」など。

  • 研究室HP

ライター紹介

廣升敦子

1978年生まれ。マーケッター・ライターとして活動中。1歳の息子と夫との3人家族。新聞社を経て、現在は子育てとともに、女性のサードプレイスづくりや子育てマーケティング「アコラボ」などを展開中。最近の楽しみは、子どもとの美術館や博物館めぐり。子連れランチも開拓中です!

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