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歯並びはおしゃぶりで悪くなる? 適切な使い方&やめる時期も!

掲載日: 2016年5月10日更新日: 2019年3月19日廣升敦子

子育ての便利グッズとして使われている「おしゃぶり」。使用について賛否両論の声を聞きますが、具体的にどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。今回は、おしゃぶりによる歯への影響について、小児の歯や口の発育・発達について研究をすすめる、昭和大学歯学部・井上美津子先生にお話を伺いました。

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おしゃぶりを使うと歯並びが悪くなるの?

赤ちゃんがおしゃぶりをくわえている姿には、なんとも言えないかわいさを覚えますが、おしゃぶりを長く使うと歯並びが悪くなるといった指摘もあります。使うことで、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

「母親のお腹の中にいる頃から、赤ちゃんは指しゃぶりをしながらお乳を飲む準備をしています。指やおしゃぶりなどを吸う行為は、赤ちゃんにとって、母乳を吸う時と同じように吸啜(きゅうてつ)本能を満足させ、気分を落ち着かせる効果があります

「しかし、赤ちゃんの時期を過ぎてもおしゃぶりを長く使っていると、噛み合わせや歯並びに影響が出てきます。これは、おしゃぶりの乳首を吸う際に舌で歯を前に押し出すような力が加わり、歯と歯の間にすき間ができたり、上下の前歯が開いて噛み合わなくなったりしてしまうためです」

赤ちゃんの気持ちを落ち着かせてくれるというメリットとともに、おしゃぶりの長期使用は、歯に影響を及ぼすというデメリットがあるのですね。


2歳半までには、おしゃぶりを卒業させる!

おしゃぶりを長く使うと、歯並びや噛み合わせに影響が出てくるということですが、何歳頃まで使わせてよいのでしょうか

奥歯がしっかり噛み合ってくる2歳半〜3歳頃までには、使用を中止してほしいですね。都内保健所での調査によると、約2年間おしゃぶりを使用した子どもの約2割、2年半以上使用した子どもにいたっては、約半数に噛み合わせへの影響が確認されています。とくに、上下の前歯の間にすき間がみられるようになります

また、歯並びだけでなく、発語に影響が出る場合もあるそうです。

「常におしゃぶりをくわえていると言葉を発しにくい状態になりますので、言葉を覚える1歳過ぎになったら、常時使用しないようにするとよいでしょう。赤ちゃんの手の届くところに置かず、必要なときだけ与えるように心がけたいですね」

赤ちゃんが自分でおしゃぶりを手にとってしゃぶり続けることのないよう、首からさげるホルダーを外し、離れた場所に置いておくというのもひとつの手なのだとか。「ダーダー」と喃語を発したり、周囲からの言葉かけに対して声を出したり、というような成長過程を阻害しないよう、おしゃぶりの与えすぎには注意したいですね。


おしゃぶりの適切な使い方とは?

長くしゃぶっていても安全な、形状や素材などはあるのでしょうか。

「現在、さまざまな形状や材質のおしゃぶりが開発され、市販されています。乳首も丸かったり、親指のように平べったかったりとさまざまですが、開発のコンセプトもさまざまであり、また赤ちゃんの好みもあるでしょう」

「ただ、歯への影響は舌で押すことにより生じるため、ゴムの厚みを薄くすれば歯並びへの影響が解決する、というものではありません。また、素材について、極端に薄いものは噛み切って飲み込んでしまう恐れがありますので、歯がしっかり生えたお子さんに与える際は注意が必要です」

こうした歯に影響が出にくいおしゃぶりを選ぶ以上に、「赤ちゃんのうちからおしゃぶりを与えるタイミングを管理することが大切」と井上先生。

「おしゃぶりは、使う頻度や期間さえ適切であれば、子どもの心を落ち着かせるという点で有効なものです。たとえば、寝かしつけの際に使うと、子どもの気分を静めることができます。しゃぶるというよりは、口に含ませることで入眠時に使うのもいいでしょう」

泣いている赤ちゃんの口におしゃぶりをふくませると、スイッチが入ったかのように、とたんに泣きやんだという経験をお持ちのお母さんも多いと思います。しかし、それに甘えておしゃぶりを常時与えてしまうと、今度はおしゃぶりをやめるタイミングが難しくなるそう。

なるべく子どもにストレスなくおしゃぶりの卒業を促すためにも、赤ちゃんのうちから必要なタイミングだけおしゃぶりを与えることが大切です。


おしゃぶりをやめられない赤ちゃんにはスキンシップを

子どもが成長し、いよいよおしゃぶりを卒業する時期が訪れたとしても、いきなり取り上げるのではなく、おしゃぶりを使う時間を徐々に減らしていくことが大切とのこと。おしゃぶりをやめさせるとき、親はどのようなことに気をつければよいでしょうか。

「しゃぶるという行為は、“安心したい”という気持ちの表れなので、親が子どものそばに寄り添って話しかけたり、一緒に遊んであげるなど、スキンシップをはかったりすることが大切です。また、おもちゃや外遊びなどで、関心をほかに向けてあげるのも有効ですね」

おしゃぶりは一時的には気持ちを落ち着かせてくれますが、赤ちゃんにとって1番の安らぎは、なんと言っても家族とのスキンシップなのですね。

「それでもやめられない、とくに4歳を過ぎた子どもについては、かかりつけ医に相談することをお勧めします。歯への影響以外に、心身に不安を抱えている場合もありますので、よく子どもの状況を確認してください」

適切な期間におしゃぶりを使用することは、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても、メリットがあること。歯並びへの影響なども考慮しつつ、必要に応じておしゃぶりなどの便利グッズを使用して、赤ちゃんの「安心したい気持ち」を満たしてあげたいですね。

お話を聞いたのは…

  • 井上美津子先生

    昭和大学歯学部小児成育歯科学講座客員教授。専門は、小児歯科学。小児の歯や口の発育・発達を研究し、口腔健康支援を推進している。日本小児歯科学会常務理事などを歴任。著書に、子どもの歯と口のトラブルQ&A(医学情報社)など。

ライター紹介

廣升敦子

1978年生まれ。マーケッター・ライターとして活動中。1歳の息子と夫との3人家族。新聞社を経て、現在は子育てとともに、女性のサードプレイスづくりや子育てマーケティング「アコラボ」などを展開中。最近の楽しみは、子どもとの美術館や博物館めぐり。子連れランチも開拓中です!

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