保育園への入園直後は、周りから病気をもらって体調を崩す子どもが増える時期。それでもどうしても仕事が休めない…ということもありますよね。今回はそんな時に頼りになる病児保育施設について、「一般社団法人全国病児保育協議会」会長の稲見誠さんに伺いました。
そもそも、病児保育施設ってどんなところ?

病児保育とは、家族が仕事などの事情により見ることができない子どもたちを一時的に預かってもらえる施設です。具体的には、どのような場所なのでしょうか?
「正確には“病児保育”と“病後児保育”に分かれます。病後児とは回復期の子どものことで、病児保育施設では病児・病後児の両方に対応している場合が多いですが、病後児保育では病児(高熱など症状が強く出ている状態)を預かってもらうことはできません。クリニック併設型、保育園併設型、単独型などの施設があります。」
「病児保育施設はクリニックに併設されている場合が多く、医者が常に近くにいるので、インフルエンザや肺炎などをはじめとした、入院を必要としないほぼすべての病気の子どもを預けることができます。隔離スペースなども設けられていますが、感染力が非常に強い『はしか』だけは、受け入れていない施設が多いですね。」
「病後児保育の場合は、保育園に併設されているものが多く、見てくれるのは看護師さんと保育士さんです。そのため預けられるのは、病気は治ったものの通常の保育園の生活を送るのがまだ難しい回復期の子どもたちのみに限られています。」
入園前の登録がベスト!まずは必要な手続きの確認から
では、実際に病児・病後児保育施設を利用するにはどのようにすればいいのでしょうか?
「お住まいの地域や利用したい施設によって利用方法は異なりますが、例えば、私のクリニックのある世田谷区の場合は事前に世田谷区の保育課に登録が必要です。そうすることで、区内にある病児・病後児保育が利用可能になります。」
「まずは、自分の住んでいるエリアでどのような手続きが必要なのかを確認してください。自治体や施設への事前の登録が必要な場合には、入園する保育園が決まったらすぐ、できる限り入園までには必ず登録を済ませておきましょう。」
登録が済んだらどこにどんな施設があるかチェック!
世田谷区のように自治体に登録する場合は、その地域のどの施設でも利用できることになりますが、施設を選ぶ際のポイントなどはありますか?
「まず、どこの施設が病児でどこが病後児保育なのかをきちんと確認しておきましょう。施設によって受け入れてもらえる病気や条件(予防接種を受けているなど)が微妙に違うこともありますので、事前に分かっていると安心です。施設内での過ごし方などはどの施設もほとんど変わらないと思いますので、あとは送り迎えのしやすさなど、立地を重視して選ぶといいかもしれませんね。」
「ただ、インフルエンザの時期などは大変混雑して希望の施設が満員でキャンセル待ち…ということもよくあります。ひとつに決めるというよりは、行きやすそうな施設をいくつかチェックしておいて、ダメなら次、次とあたっていけるようにしておくといいでしょう。」
施設の利用料金についても気になるところですが…。
「多くの施設が国の補助を受けて運営されているため、1日2000〜3000円ほどで利用することができます。時間は8時〜18時という施設が多いようです。」
病児保育でも遊びが中心。検温や投薬などの対応も

そんな病児・病後児保育では子どもたちはどのように過ごしているのでしょうか?
「基本的には通常の保育園と同じように遊びが中心です。病気の子どもたちですので、もちろん体に負担のかからない遊びが中心ですね。熱が高かったり、具合の悪い子は横になって休めるスペースも設けられています。」
「あとは、決まった時間に検温をしたり、必要であれば食後にお薬を飲ませたりということもします。基本的に対応するのは看護師や保育士なので、積極的な治療行為は行いませんが、吸入や吸引など家庭でもできるような処置であれば対応している施設が多いです。」
預ける時はここに注意!
実際に利用する際に注意したい点についても教えてもらいました!
「たまに給食を出している施設もありますが、ほとんどはお弁当持参です。たまにお腹の調子が悪いのに、から揚げのお弁当を持たせている…なんてお母さんを目にします。もちろん、お母さんも忙しく大変でしょうが、自分のお子さんが食べる物ですから、体調にあわせたお弁当を用意してあげて欲しいですね。」
あわせて施設によって、施設内に準備のあるもの、おむつやタオル、おやつなど持参すべきものが明記してあるので、きちんと確認の上、忘れ物などがないようにするのも大事とのことです。
利用する際は、子どもたちの目線を忘れずに!
最後に、そんな病児・病後児保育を利用する前に、知っておいて欲しいことがあると稲見さん。
「病児保育はあくまで、子どもが安心・安全な環境で過ごすことを第一に考えた施設です。例えば仕事が休めないために、座薬で無理やり熱だけ下げて保育園に連れて行ったり、子どもの病気のことを知らせないまま人に預けたり…。そんな子どもにとって不幸なことが起こることを防ぎ、病気の子どもたちをできるだけいい環境で保育、看護できるように作られたのが病児保育なんです」
「その上で、働くお母さんたちをサポートし、楽しく子育てしてもらえるように応援していければと思います。ただ、最近は病児保育というとお母さんたちが働くためのサービスと勘違いされてしまいがち…。もちろん働くお母さん方の大変さもよく分かりますが、病気のお子さんに対してどうしてあげるのが一番いいのかを考えることも、ぜひ忘れないようにしてあげてくださいね。」
どうしても…という時は、ぜひお世話になりたい病児保育。仕事も大切ですが、子どものことを第一に考えながら上手に利用したいですね。