夏に向かってだんだん薄着になり、トイレトレーニングを始めるにはうってつけの季節がやってきます。スムーズなトイレトレーニングに向けて、子供にどんな絵本を読んであげたら良いか、【季節の絵本連載・第4回】として千代田図書館の大塚さんにセレクトしていただきました。
失敗しても大丈夫、と思えるきっかけになるものを

最近は、トイレトレーニングを始める時期や方法など様々な情報が溢れ、直接的な躾(しつけ)としての絵本もあるようです。しかし、大塚さんは「トイレについての新しい発見であったり、トイレがどんなものかがわかるような内容で、子供自身が楽しめるものがいいですね。あくまでもトレーニングのきっかけとして選ぶことをおすすめします」と強調。
トレーニングを始める子どもにも、オムツは外れたけれどおねしょしてしまう子どもにも、「できるようになる」ではなく、「失敗しても大丈夫」と安心感を持たせてあげる絵本を読んであげましょう。
2〜3歳におすすめの絵本
『パンツのはきかた』

(作:岸田今日子 絵:佐野 洋子 出版社:福音館書店 本体価格:900円+税 発行日:2011年01月)
こぶたの女の子が、ひとりでトイレに行き、ひとりでパンツを履こうとしています。「はじめに かたあし いれるでしょ」と履き方をひとつひとつ説明しながら、パンツを引っ張ったり引き上げたり。一生懸命頑張ってとうとうできた!…と思ったら、あれ?こぶたは上手にパンツが履けるのでしょうか?
<おすすめポイント>
オムツからパンツへ移行する時期の子どもは、お兄さんお姉さんが履いているパンツに憧れるもの。パンツの履き方を、愛嬌たっぷりのこぶたと歌うようなリズミカルなセリフで、楽しみながら学べます。比較的短い文章と簡単な言葉でつづられているので、小さな子供でも飽きずに読み終えることができるでしょう。
『うんちがぽとん』

(作・絵:アロナ・フランケル 訳:さくま ゆみこ 出版社:アリス館 本体価格:800円+税 発行年月:1984年)
まあくんがおばあちゃんにもらったもの。帽子かな? 花瓶かな? いいえ、これはおまるです。これからは、おまるにおしっことうんちをしようね。「出たかな?」「まだまだ」という言葉の繰り返しが楽しく、やっと成功したまあくんの「おしっこ、バイバーイ! うんち、バイバーイ!」のかけ声は達成感にあふれています。
<おすすめポイント>
おまるに挑戦してみるものの、失敗してオムツに逆戻りするシーン、また「出たかな?」「まだまだ」のくだりを何度もリピートするリアルな経過が見どころ。「みんな一緒なんだ、できなくても大丈夫なんだ」と、焦らずトイレと向き合えるようになるはずです。イスラエルの絵本作家による可愛らしいイラストが、ほっこりと優しい一冊。
4歳前後におすすめの絵本
『トイレとっきゅう』

(作・絵:織茂 恭子 出版社:福音館書店 本体価格:824円+税 発行日:2006年1月)
男の子がトイレに行こうとすると、トイレが電車に乗って遠足に行ってしまいます。トイレを追いかけますが、切符が無かったり、駅のトイレも遠足に行ってしまっていたり、なかなかトイレに行くことができません。最後に川の中で仰向けになっておしっこをする男の子…じつは、夢だったのです。目が覚めた男の子はどうなったのでしょうか?
<おすすめポイント>
奇想天外な展開にぴったりの、のびのびしたタッチの絵と、モチーフになる特急電車が、男の子に人気の一冊です。おねしょをユーモラスに描いているので、失敗しても笑い飛ばせるような世界観とともに、おしっこをすることは気持ちがいい、という爽快感も味わえることでしょう。夜中のトイレが苦手な子供にもおすすめです。
5歳前後におすすめの絵本
『みんなうんち』

(作・絵:五味 太郎 出版社:福音館書店 本体価格:900円+税 発行日:1981年2月)
ぞう、ねずみ、ふたこぶラクダ、人間…動物はみんなうんちの形、匂い、色が違います。うんちをする場所だって、違うのです。色々な動物のうんちを比べながらたどり着く、「いきものはたべるからみんなうんちをするんだね」という、シンプルだけれど奥が深い一節が印象的な絵本です。
<おすすめポイント>
生き物はみんな、食べものを食べるからうんちが出るということ。そして、うんちは汚いものではなく当たり前なものということを優しいトーンで教えてくれます。人間は「決まったところでうんち」をする動物としてトイレが登場するので、自然な流れでトイレの意味を理解できるはずです。
6歳前後におすすめの絵本
『おねしょの名人』

(作:山田 真 絵:柳生 弦一郎 出版社:福音館書店 本体価格:1300円+税 発行年月:1996年6月)
表紙の「ぼくたちこどもがおねしょをするのはふつうのことなんだってさあ」という言葉通り、子どもがおねしょをするのはいろんな原因があるからなのです。「おねしょってどうしてするの?」など、おねしょを通して子どもの体をわかりやすく説明した、科学絵本です。
<おすすめポイント>
おねしょの原因を医学的に、かつ子どもにもわかりやすくフキダシ付きのイラストを取り入れて解説しているので、おねしょに悩む子供と親、どちらにも読んでほしい一冊です。おねしょをされて、つい怒ってしまう…という状況で、親が冷静さを、子どもは自信を取り戻すきっかけになるでことしょう。
最初のうちは、大きな壁となりやすいトイレトレーニング。読むだけでできるようになる絵本は存在しないものの、好調なスタートをきるためのきっかけ作りにはなります。それは、絵本を通じて子供が安心してトイレに向き合い、親が子供目線で考えることができるようになるからです。何度も失敗が続くとついイラッとしてしまいがちですが、そんな時こそリラックスすることを心掛けて、親子で絵本を開いてみてはいかがでしょう。
【季節の絵本】の記事一覧へ