子供のために絵本を選ぶ時、種類が多すぎてどれにすれば良いのか店頭で悩み込んでしまったりも…。そんなときに参考にしたいのが「絵本のプロ」の意見。そこで千代田区立千代田図書館で、児童や保護者向けのサービスや選書なども行う大塚桂子さんに、年齢別のおすすめ絵本について伺いました。今回は2歳編として「生活習慣が身につく」絵本をご紹介します。
子どもに絵本を選んであげる際のポイント
2歳ともなればだんだんと“赤ちゃんらしさ”が抜け、物ごとがわかってくるもの。また親御さんにとってはそろそろしつけの必要性を感じ始める年齢でもあります。そこでこの年齢のお子さんを持つ親御さんに向けて「生活習慣を絵本で身につける」というテーマで絵本を選んでいただきました。
「2歳になると、一気に言葉を理解し大人とも言葉を使ってコミュニケーションを取ることが出来るようになってきます。また様々なものに興味を持ち始めるのもこの時期。しつけも大事ですが、日常を楽しむ視点を、絵本から学んでもらいたいですね。」(大塚さん)
以上の点を踏まえ、大塚さんが選んだ絵本はこちらの5冊です。
2歳児のおすすめ!楽しみながら生活習慣が身に付く絵本
『おはよう』
(作:なかがわりえこ 絵:やまわきゆりこ/グランまま社/760円+税/発行年月:1986年5月)
朝、おひさまが空に昇るまでの間になにをしているかわかる? 眠そうに起きたおひさまが、あくびをして、歯をみがいて、顔をあらって…。おひさまも、みんなとやることは意外に(?)同じです。
<選んだ理由>
おひさまが、目を覚ます、というなんとも意外なところからお話が始まります。名作『ぐりとぐら』の作者、なかがわりえこさんによる作品で、朝のあいさつ、正しい習慣に楽しく触れることができるようになっています。
『いただきまあす』
(文:わたなべしげお・絵:おおともやすお/福音館書店/1980年6月/800円+税)
まだまだごはんを上手に食べることができない、幼いくまくん。スープを飲もうとすればこぼしてしまい、ジャムを食べようとすれば、やっぱりこぼす。うまく食べられないからと、最後は手づかみで…。
<選んだ理由>
2歳児は、まだごはんを上手に食べることができず散らかしてしまうもの。この絵本のくまちゃんも、ごはんをこぼし、散らかしてしまいます。最後までお行儀は悪いままなので、大人が一読しても直接的にお行儀やマナーを学ぶことが出来ない絵本に思えてしまいますが、子どもはちゃんと、これはお行儀が悪いことだと「気付く」んですね。それがこの絵本のポイントです。
『おふろでちゃぷちゃぷ』
(文:松谷みよこ・絵:いわさきちひろ/童心社/1970年5月/700円+税)
あひるちゃんに「どこいくの?」と聞けば、「いいとこ、いいとこ」という返事。あひるちゃんに誘われるまま、気の急いた男の子が「まって まって」と服を脱いでいく姿が愛らしい作品。
<選んだ理由>
この年齢では、おふろに入るのを嫌がることも多いものです。そんなお子さんに、おふろが楽しい場所だということを、あひるちゃんが教えてくれます。実際に、この本を読んでからお風呂好きになった、という話もよく聞きます。
『おやすみなさいおつきさま』
(作:マーガレット・ワイズ・ブラウン 絵:クレメント・ハード 訳:せたていじ/評論社/1260円+税/発行年月:1979年9月)
眠りたくない子うさぎが、部屋のなかで目にはいったものすべてに、そして聞こえてくる音までに「おやすみなさい」とごあいさつ。交互に訪れるカラーページとモノクロページの切り替えが印象的、大人も絵本の中につい引き込まれてしまいます。
<選んだ理由>
読み聞かせるときは、ゆっくりと子守唄のように読んであげてください。「おやすみ、とけいさん」「おやすみ、くつした」と読んでいくうちに、だんだんと眠くなっていくと思います。この本を読むことが、寝る前の習慣になっているというお子さんも。きっと親御さんも幸せな気分になりながら、お子さんを寝かしつけることができると思いますよ。
『ねないこだれだ』
(作・絵:せなけいこ/福音館書店/600円+税/発行年月:1969年11月)
人気シリーズ「いやだいやだの絵本」の1冊。夜中まで起きている子を、暗がりから見つめる目。それは、どらねこ? どろぼう? それとも…。ちぎり絵によって、暗闇の恐怖をどこかユーモラスに再現。子ども向け絵本とは思えないこわ〜いラストにも注目。
<選んだ理由>
ママパパたちの中にも、突き放したような怖いオチが忘れられないという人が多くいるはず。『おやすみなさいおつきさま』は寝かしつけの普段使いとして、この『ねないこだれだ』は、いつまでも寝ない悪い子だったときに使う「刺激」として読む、そんな使い分けもアリだと思います。
なお、大塚さんによれば絵本はあくまでコミュニケーションのツールであり、生活習慣を学ばせるつもりでやっきになって読むものではないとのこと。直接には学びに関係ないシーン、キャラクターでも子どもが指を指すなど興味を示したら、それにちゃんとつき合ってあげることが大事とのことでした。