「お酒やコーヒーを飲みたいけれど、母乳への影響が心配…どのくらいなら飲んでも大丈夫なの?」そんなふうに思っている授乳中のママは案外多いのでは? そこで、授乳中のアルコールやカフェイン摂取の影響について、国立成育医療研究センターの和田友香先生にお話を聞きました。
アルコールやカフェインは、母乳にどれくらい影響する?
赤ちゃんにとって栄養の宝庫である母乳。母乳は言うまでもなく、ママの体の中で作られますが、ママが摂取したアルコールやカフェインも、母乳を通して赤ちゃんの健康に影響するのでしょうか?
「はい、影響することもあります。お母さんが食べたものはすべて母乳に反映されます。特にアルコールは分子量が小さく、母乳に移行しやすい性質があるので、それを飲む赤ちゃんにも影響を与えやすいと考えられます。」
アルコールが赤ちゃんに与える影響にはどんなものがあるのでしょうか?
「ママのアルコール摂取が多すぎると、母乳を飲んだ赤ちゃんの落ち着きがなくなることがあります。例えば、ママが720ccのワインを飲んで、生まれて8日目の赤ちゃんに母乳をあげた場合、汗をたくさんかいたり、眠れなくなったりしたという報告があります。また、アルコールには、母乳の分泌量を少なくしてしまう作用もあります。」
アルコールの場合は摂取直後に反応が出ますが、カフェインの場合は体内に蓄積された後で、遅れて反応が出ることがあるそう。これは、カフェインを代謝するのに大人よりも長い時間がかかるため。赤ちゃんの場合、カフェインの血中濃度が半減するのに、大人の16倍以上の時間がかかるそうです。
「常識的な量のカフェインで、赤ちゃんに影響が出ることはまずありませんが、まれに赤ちゃんの体の中に蓄積されて、興奮して眠れなくなるほか、神経が過敏になって、ほんの少しの刺激にびっくりしたり、落ち着きがなくなったりすることがあります。」
「1日1杯なら飲んでも大丈夫」は本当?
よく「授乳中でも、アルコールやコーヒーは1日1杯程度なら問題ない」と聞きますよね。実際はどうなのでしょうか?
「生まれたばかりの赤ちゃんはとてもデリケートなので、生後1カ月間はアルコールもカフェインも摂らないことが望ましいです。それ以降は、赤ちゃんの腎臓や肝臓が発達していくので、カフェインは1日300mgまで、コーヒー1杯〜2杯程度なら問題ないと言われています。」
「お酒は、授乳期間中は飲まないのがベストですが、どうしても飲みたい場合は、1日の目安としてワインならグラス1杯、ビールなら350ml缶1本までにしてはいかがでしょうか。お酒を飲んだ場合、アルコールの血中濃度が最高値になる飲酒後30分〜1時間は、授乳を避けてください。できれば授乳は飲酒後2時間〜2時間半経ってから、または酔いがさめてからにしましょう。」
とはいえ、もしアルコールやカフェインを飲んだ場合にも、極度に心配する必要はないのだそう。
「目安量以上を飲んだ場合にも必ずしも授乳を控える必要はありません。ただし、カフェインやアルコールを飲んで授乳した後は、赤ちゃんに変わった様子がないか確認してくださいね。」
ノンアルコール飲料ならOK?お茶にも隠れカフェイン!?
ところで、最近話題のノンアルコール飲料はたくさん飲んでも大丈夫なのでしょうか?
「『アルコール分0.00%』と書かれたノンアルコール飲料なら問題ありません。ノンアルコールのビールやシャンパンなど種類が豊富なので、上手に活用してみましょう。ストレスを解消することができます。」
ただし、ノンアルコール飲料の中には、アルコール分が1%未満でも「ノンアルコール」と書かれたものがあるので、注意しましょう。
また、アルコールに比べれば影響は少ないカフェインですが、実はカフェインが含まれているのは、コーヒーや紅茶だけではないそうです。
「コーヒーほど多くはありませんが、緑茶やウーロン茶などのお茶にもカフェインが含まれています。見落としがちなのが、栄養ドリンク。中にはカフェインが豊富に含まれているものもあります。ですから、コーヒー2杯までは大丈夫だからといって、緑茶やカフェイン入り栄養ドリンクをたくさん飲んでしまうと、カフェインを摂りすぎになってしまいます。」
容器の「栄養成分表示」に書かれているカフェイン量をチェックして、1日の目安量を超えそうなときは、カフェインが含まれていない麦茶やルイボスティーを飲んだり、カフェインの入っていない栄養ドリンクを選びましょう。
授乳中にアルコールやカフェインを摂取するのは注意が必要ですが、目安量や気をつけるポイントを知っていれば、安心して楽しむことができそうですね。