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子どもたちの価値観が変わる、暗闇のエンタテインメント

掲載日: 2015年2月25日更新日: 2015年5月29日栃尾 江美
一度は障がいについて、子どもとしっかりと話しておきたいと考えている人は多いのではないでしょうか。しかし、日常生活では障がいを持つ方と直接接する事も少ないため、子ども達にしっかりと理解してもらうことは難しい場合も。そこで、視覚障がい者の助けを借りながら暗闇の中を進んでいく『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』というワークショップを体験してみました。

真っ暗闇の中をみんなで協力し合いながら進む

ダイアログ・イン・ザ・ダーク』とは、まったく何も見えない暗闇の空間を、数人のグループと一緒に手探りで歩いて行くエンタテイメント性の高いワークショップ。『アテンド』と呼ばれる視覚障がい者のサポートを頼りに進んでいきます。
今回はひとりで参加したため、初めて会う方6名とグループになりました。メンバーと暗闇に入り、慣れない白杖をつきながら進みます。普段目が見えている人は、真っ暗闇の中では、まったく行動することができません。それを助けてくれるのが、『アテンド』です。

真っ暗な空間でアテンドの方に「こちらに歩いてきてください」と言われますが、初めは何をどうしていいかわかりません。声を頼りに杖をつきながら少しずつ進むものの、他のメンバーに置いて行かれるのではないかと不安でいっぱいになります。

しかし、メンバーの服に触れたり、近くで声がするだけですごく安心できるのは驚きでした。特に、暗闇の中を自由に歩いていくアテンドの方の声がするとほっとします。暗闇では、目の見えない人よりも、見える人のほうが不自由なのですね。アテンドの方は私達の声の大きさで距離を判断して「もう少し前に来てください」と声を掛けてくれたり、ときにはメンバー同士で手を取り合ってお互いをサポートしながら進みます。

また、暗闇では木の葉に触れたり、メンバーと声を掛け合いながら橋を渡ったりもします。普段目に見えている物も、暗闇の中で触れると肌触りや音などを改めて感じることができます。

みんな初めて会う人同士ですが、不思議と抵抗を感じません。プログラムは全体で90分間もあるのですが、視覚以外の感覚を頼りに行動するのはすべてが新鮮で夢中になっているため、時間が過ぎるのがあっという間です。

自然に障がい者と触れ合うことで、子ども達の価値観が変わる

この暗闇を体験できるのは小学生からとなっています。子どもたちはどんな感想を抱くのでしょうか。『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』の日本の理事であり、セラピストでもある志村季世恵さんにお話を伺いました。

「『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』は、体験なさる方達に対して、人と関わることの大切さ、そして『対等な対話』を感じてほしいと願っています。暗闇は、障がい者と健常者、大人と子どもなどの間にある見えない壁を取り除いて、私たちを対等にしてくれるのです。また、視覚情報を遮断すると「想い」を声に出すことが重要になり、自然と対話が生まれ、自ずと助け合える関係性が生まれます。『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』の体験中だけでなく、体験後も同じ気持ちを持ち続けてもらいたいと思っています。」

確かに、暗闇の中では年齢やスタイルなどの外見が分からないため、みんな対等になったように感じます。性別の違いさえも、さほど気にならなくなるから不思議です。

「普段から『障がいのある人を助けたほうがいい』という感覚を持っている人は多いと思います。ところが、『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』では障がい者に助けられるのです。日常生活とは異なり、障がい者と健常者が同じ立場で行動できるため、新しい発見もあります。」

「実際に『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』を体験したお子さんからは、
『目が不自由な人は、私より自由な力を持っているんだ。』『(障がいによって)不自由なのではなくて、不便なことがあるだけ。自分たちにも不便なことがあるから、同じだと思った。』という感想をいただいたこともあります。違いがあるだけで、お互いに対等だと感じたことは、一生の宝物になると思います。」
子どもも大人も、暗闇という非日常の空間で新しい発見ができる『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』。障がいも、容姿や性格、性別の違いも、ひとつの個性でしかないということに気付かせてくれる、かけがえのない体験になるのかもしれませんね。

お話を聞いたのは…

  • 志村季世恵さん

    「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の運営に力を注ぐ傍ら、フリーでカウンセリングやターミナルケアを行うバースセラピストでもある。「こども環境会議」代表。「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」代表理事。4児の母。「いのちのバトン」(講談社文庫)、「大人のための幸せレッスン」(集英社新書)、「ママ・マインド」(岩崎書店)など著書がある。

ライター紹介

栃尾 江美

1975年生まれ。コンピュータ会社勤務から、2005年にライターへ。アバンギャルド/WOOTS所属。雑誌や書籍、Web、広告など、ライトな読み物から堅めの記事までこなします。やんちゃな2人の男児がいる4人家族。子どもには、自分が大切にしているものを伝えたいと日々模索中。自然や生き物、本物の音楽や芸術に触れながら育ってくれるといいな。

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