子どもの皮膚疾患の中でも、よくあるのが「とびひ」。強いかゆみや水ぶくれができ、ひどくなるとどんどん増えていくので、慌ててしまう親も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、とびひの基礎知識と予防法などについて、西井皮膚科クリニック院長の西井貴美子先生に聞きました。
「とびひ」ってどんなもの?

「とびひ」とは一体どんなものなのでしょうか。
「医学の正式病名は『伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)』です。強いかゆみを伴う細菌感染症で、水疱が破れてジュクジュクしたり、厚いかさぶたに覆われたりしています」
「火の粉が飛ぶように次々と別の場所に感染することから『とびひ』と言われています。ですから『とびひ』という病気が初めからあるわけではないのです」
傷口に黄色ブドウ球菌などのばい菌がつくことで起こる感染症が俗に「とびひ」と言われているのだそう。子どもだけでなく、大人がかかることがあり、何回でもかかるとのことです。
とびひの原因と症状は?

それでは、とびひの原因を教えてください。
「虫刺され、すり傷、あせも、湿疹などを引っかいたところに、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などが傷口につくことで感染を起こし、とびひになります」
「黄色ブドウ球菌は人の鼻の周りに多く常在しています。鼻の周りをいじった手であせもや虫刺されなどを引っかくと、菌が傷口につきとびひになる機会が増えます」
症状としては、どのようなものなのでしょう。
「強いかゆみ、水疱が破れてジュクジュクしている、厚いかさぶたがある、同じようなものが多発している、などです」
「治る期間には個人差がありますが、早ければ2日から3日程度でなおります。長引くときは1カ月くらいかかることもあります」
なりやすい人となりにくい人はいるのでしょうか。
「乾燥肌の人は、皮膚に傷がつきやすいので、とびひになりやすいです」
では、季節によってなりやすい時期はあるのでしょうか。
「虫刺されやあせもができやすいことや、薄着で肌が出ている部分が多いことなどから、以前は夏に多いとされていましたが、最近では季節に関係なく1年中みられます」
また、傷口がえぐれて滲出液(しんしゅつえき)が出ていると、そこからほかの人に移ることがあるそうです。
「傷口の滲出液が別の傷口に接触すると、次々に広がってしまいます。家族など身近な人にうつることもありますので、タオルの共有などは避けましょう」
とびひは、「学校保健安全法:第三種その他の感染症」(文部科学省)の中で、傷の部分を治療してガーゼなどで覆っていれば、学校を休む必要はないとされているそうです。
間違いやすい皮膚疾患はある?
とびひと似ている症状を持つ別の病気はありますか。
「とびひは、皮膚科医が見れば間違いようがない皮膚疾患です。次々と増えていくので、おかしいと思ったら早めに受診してください」
「今はいろいろな情報が簡単に手に入りますので、自分で病名を調べて受診される方もいます。そうなると診断もしにくくなりますし、症状が正しく伝わらない場合などもありますから、自己診断はなるべく避けましょう」
おかしいなと思ったら、すぐに皮膚科の先生に診てもらうのがいいですね。
有効な治療方法と予防はどうすればいいの?

それでは、治療方法を教えてください。
「抗生物質の塗り薬や、場合によっては飲み薬を使用します。かゆみがひどい場合は、かゆみ止めも使用します。治療中も、患部を引っかかないように注意が必要です。薬を塗った後は、ガーゼなどで覆っておくようにしましょう」
とびひのときに入浴をしてもよいのでしょうか。
「シャワーを使用し清潔にしましょう。患部は洗って大丈夫です。せっけんを泡立てて、そっと洗いましょう。すすぎ残しのないように気をつけてください」
「また、プールの水ではうつりませんが、触れることで症状が悪化したり、接触してほかの人にうつしてしまったりすることがあるので、学校保健安全法ではプールは禁止になっています」
では、予防法について教えてください。
「一番大切なことは、皮膚に傷をつけないことです。虫刺されなどをかきむしらないよう、爪を短く切っておくようにしましょう。また、日頃から、手洗いをしっかりしておくことも大切です。小さな子どもには、黄色ブドウ球菌が多くついている鼻孔に指を入れないように指導してください」
また、皮膚が乾燥していると傷ができやすいので注意が必要だそうです。普段から保湿を心がけましょう。
「今はよく効く薬があるので、めったに重症化することはありませんが、万が一重症化すると、発熱など全身に症状が出ます」
治ったと思ったのにすぐにほかのところにできたり、なかなか治らなかったりする場合は、すぐに病院(皮膚科)へ行きましょう。