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麻疹(はしか)は子供より大人が多い? 予防法・症状・感染経路

掲載日: 2018年6月25日更新日: 2018年6月25日飯田友美

2018年3月に、沖縄県で外国人旅行客から感染が広がり、同県への観光キャンセルが相次いだ「はしか」。子どもの病気なのに、なぜ大きな問題になったのか不思議に思うママパパも多いはず。

そこで今回は、はしかの症状や感染経路、予防接種など「はしかの基礎知識」を国立感染症研究所感染症疫学センター第三室の室長で小児科医の多屋馨子さんに聞きました。予防接種の記憶や、自分がかかった経験が明確でない人は必ず読んでおくといいでしょう。

『はしか』ってどんな病気? 感染経路や症状は?

はしかとは一体どのような病気なのでしょうか。

一般的には『はしか』と呼ばれていますが、正式には『麻疹(ましん)』といいます。はしかに対する免疫をもっていない人の体内にウイルスが侵入すると、10〜12日間の潜伏期の後、38度台の発熱、せき、のどの痛み、鼻水、目やに、目の充血、体のだるさといった症状が出始め、その症状が4〜5日間続きます

「その後、口の中に白いブツブツ(コプリック斑)ができ始め、翌日には首すじや顔に赤い発疹が出て、1〜2日のうちに全身に広がります。熱も39度から40度台の高熱になり、3〜4日続きます」

発症から数えて1週間から10日ほどの期間、高熱が続くことになるとのこと。せきもひどく、体力も消耗するので、入院しなければならないことも多いそうです。

では、感染経路や感染力はどのくらいなのでしょうか。

せきやくしゃみ、会話などで発生するしぶき(飛沫)を吸い込んで感染します。また、直接せきやくしゃみを浴びた場合でなくても、空気中を漂うウイルスを吸い込むだけでも感染します。体育館のような広い場所でも、はしか患者がいれば、そこにいる全員がウイルスを吸い込んでしまうほどの強い感染力を持っていると言われていますね。加えて、抱っこやキスなどでの接触感染があります」

おたふくかぜやインフルエンザと比べても、はしかの感染力は非常に強いそうです。ただし、「麻疹ウイルス」が生活環境の中で生存できるのは2時間程度とのこと。いつまでもそこにウイルスが残り続けるわけではないようです。


どうしてこんなに話題になったの?

では、なぜ沖縄で流行してしまったのでしょうか。

「ワクチンを接種していないために、免疫を持たない人がまだ多くいるということでしょう。はしかは感染力が非常に強いですから、あっという間に広がってしまいます」

「また日本は2015年にはしかが排除された状態であると認められているので、それを維持することが国の目標になっています。さらに、はしかには効果的なワクチンがあり、予防できる病気です。日本に限らず、世界中ではしかをなくしていくことが目標となっていますので、予防できる病気で集団感染したとなると、やはり話題になりますよね

はしかはかかってしまうと特別な治療方法はなく、対症療法をしながら治るのを待つしかないとのこと。かかるとつらい症状に悩まされる上に合併症を起こす頻度も高いそうです。命に関わる場合があることからも、大きな話題になるようですね。

予防接種は2回受けることが鉄則!

はしかは「予防できる病気」とのことですが、自分がはしかにかかる可能性があるのかどうか、わかっていない人が多いと思います。具体的な予防法をおしえてください。

予防接種を2回受けることで99%以上の人が免疫を持つようになります。ですので、まずは予防接種を受けたかどうかの記録を探してください

「そして、1回しか記録がない人は2回目を受けてください。また、たとえ2 回受けていたとしても、1回目が0歳のときだった場合は免疫がついていない可能性が高いので、もう1回受けてください」

「『受けたはず』とか『受けたかも』という記憶があったとしても、受けた記録がないならば、それは受けていないものとして、予防接種を受けてください」

予防接種の記録が見つからない場合は?

はしかは、一度かかれば免疫がつくため二度とかからないそうですが、そもそも記録が見つからないなど、自分に免疫があるかどうかわからない場合は、どのようにして確認すればよいのでしょうか。

今は検査をすることで、はしかの免疫をもっているかどうかがわかります

「かかったことがあると思っていても、はしかと違う病気だったという可能性もありますので、かかったと思っている人はぜひ抗体検査を受けてください。また、妊娠している人や免疫抑制剤を使っている人など、接種不適当で予防接種を受けられない場合も、抗体検査を受けてください」

抗体検査の結果、もし自分に免疫がなかったり、抗体価が低いと言われたりしたら、まずは家族や周りの人がワクチンを受け、自分にウイルスが届かないようにしてもらう、流行っているときはなるべく外出しない、流行っている国や場所に行かない、などの方法で予防してください

「話題になったときに希望者が殺到するとワクチンや抗体キットが不足することがありますので、ぜひ平常時にこそ受けてくださいね」

かかった覚えもなく、予防接種の記録がない人は、必ず2回予防接種を受けてほしいとのことです。また、海外では流行している地域もありますので、海外に行くときには必ず確認することをお忘れなく。


特に注意しなければならない人は?

はしかの発症予防には「2回の予防接種が鉄則」ということがわかりました。ですが、親世代では接種率が低かったり、1回しか予防接種を受けていなかったりと、年代によって異なるようです。

「はしかの定期接種(当時は義務)は、1978年10月に当時1歳〜5歳を対象に始まりました。費用もかからなかったのですが、接種率はあまり高くなく、発症した人も多くいました。その後も予防接種法の改正などで、定期接種ではあるものの努力義務接種になり、国も接種を強く勧めたのですが、なかなか接種率があがらなかったようです」

いまから十数年前でさえ、1年間に20〜30万人がはしかにかかっていて、医療が進んでいたにもかかわらず、年間20人余りが命を落としていたといいます。

2018年6月13日現在の『年齢群別麻疹累積報告数割合』を見てみると、最も多いのが30歳〜39歳の31%、次いで20歳〜29歳の25%、40歳〜49歳の12%と続きます

この結果を見ても、親世代がはしかに多くかかっているのがわかりますね。親の世代のうち、とくに注意しなければならない年代は以下の通りです。

【1972年10月1日以前に生まれた人】
予防接種が任意だったため、定期接種0回の可能性がある年代です。

【1972年10月2日〜1990年4月1日生まれの人】
定期接種1回の可能性がある年代です。ただし、制度上は1回受けられましたが、1回も受けていない可能性もあります。

子ども世代でも確認を忘れずに

2006年6月2日からは、MR(麻疹・風疹混合)ワクチンの2回接種制度が始まりました。さらに、このころ10代、20代ではしかにかかる人が多かったこともあり、2008年4月から5年間に限り、中学1年生と高校3年生(相当年齢含む)の年に2回目を接種することができました」

「ですので、1990年4月2日以降に生まれた人は、2回ワクチンを受けるチャンスがあったことになります」

ここで注意したいポイントは「受けるチャンスがあった」というだけで、受けたかどうかは必ず記録を確認してほしいとのことです。

一人がかかるとあっという間に広まって、病状も重いはしか。今では、「麻疹風疹混合ワクチンを1歳のお誕生日プレゼントにしましょう」というキャッチフレーズと共に、予防接種率も高くなり、子どもたちがかかることは少なくなったそうです。

はしかは、予防接種を受けることで防げる病気です。受けた記録がない人、抗体がない人は、この機会にワクチンを接種して、自分と周りの人をはしかから守りましょう。

お話を聞いたのは…

  • 国立感染症研究所・感染症疫学センター第三室 室長 医学博士 (小児科医) 多屋馨子さん

    1986年高知医科大学(現 高知大学医学部)卒業。大阪大学医学部小児科学講座に入局し、小児科医として病院勤務の後、1994年~大阪大学医学部微生物学講座、1996年~同大学小児科学講座で臨床・研究・教育に従事。2001年~国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官。2002年~同センター第三室 室長。2013年から現職。

  • 国立感染症研究所

ライター紹介

飯田友美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、フリーランスのライターに。好きなものは猫とパンダ、趣味はライブに行くこと、お芝居を観ること。杉並区在住。2児の母。

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