厚生労働省の承認を受け、ようやく始まった国産液体ミルクの製造・販売。2019年3月11日には、江崎グリコから日本初となる液体ミルクが発売されました。また、明治からも4月下旬に液体ミルクが発売される予定です。
では、この液体ミルクはどのようなものか、粉ミルクとの違いも含めて、江崎グリコ・経営企画本部の青山花さんに聞いてみました。
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「液体ミルク」とは具体的にどのようなものでしょうか。粉ミルクとの違いも教えてください。
「液体ミルクは、赤ちゃんがそのまま飲めるように作られた乳児用ミルクです。あらかじめ水に溶かした状態になっているのが粉ミルクとの違いで、調乳の手間がかからない点が最大の特徴です。成分は基本的に粉ミルクと同じで、栄養面で特に優劣はないと考えていただいて構いません」
種類別表記を見ても、粉ミルクは「調製粉乳」、液体ミルクは「調整液状乳」と記載されていて、粉状か液状かの違いでしかないようです。
では、栄養面も味も粉ミルクと同じと考えて大丈夫でしょうか?
「成分が同じですので、基本的には栄養面は変わりません。味については、試飲した大人からは『液体ミルクの方が若干さらっとした舌触り』という感想も出ました。これは、機械で攪拌(かくはん)されることで、より均質に素材が混じり合っているためだと思われます。いずれにせよ、利用時に気になるほどの違いにはならないと思います」
液体ミルクは、どのメーカーの液体ミルクについても、成分などは基本的に既存の粉ミルクとほとんど変わらないものになる可能性が高いそうです。
液体ミルク最大のメリットは「災害時の備え」

では、液体ミルクには、どんなメリットがあるのでしょうか。
「『調乳の必要がない利便性』に尽きるかと思います。粉ミルクの調乳は、当社の調査ではママが約7分、パパが約12分かかることが分かっており、それが毎晩夜中に眠い目をこすりながらの作業ともなれば、かなりの手間と負担になります」
「一方、液体ミルクなら、普段調乳に慣れていない人でも簡単にできますし、なによりミルクが飲みたいと泣いている赤ちゃんを待たせることがありません」
そのほかのメリットは何かありますか。
「災害被災時には、ストレスから一時的に母乳が出にくくなるママもいます。そうした中で、粉ミルクは被災時に確保しづらい清潔なお湯が必要になりますが、液体ミルクは哺乳瓶に移し替えるだけで、すぐに使用することができます。また、日常的なことを考えても、外出時にお湯のことを考えずに済む、荷物が少なくて済むことにより、子育てがより楽しくなるのではないかと思います」
災害時にお湯の心配をしなくて済むのは本当に助かりますね。液体ミルクは常温保存ができるので、乳児がいる家庭では災害時用の備蓄品として用意しておくと良さそうです。
液体ミルクの注意点は?
聞いてみるとメリットだらけですが、なにか注意点はないのでしょうか?
「WHOの指導にあるように『母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養』であり、栄養面では免疫成分などを含む母乳に勝るものはありません。一方で、粉ミルクと比べた場合は、どちらが劣るということはありません」
「また、粉ミルクに比べると、価格は少し割高で、使用期限は短くなっています。当社の製品同士で比較すると、液体ミルクの価格は粉ミルクの約3〜4倍。保存期間についても、未開封の粉ミルクが1年なのに対し、液体ミルクは半年です」
「ですが、その分、液体ミルクには『赤ちゃんを待たせない』などの特長もありますので、使用シーンや用途に合わせて、選択肢の1つとして、活用していただければと思います」
保存期間については、粉ミルクは開封したら1カ月以内に使う必要があるとのこと。一方、液体ミルクは開封したらすぐに使い切る必要があります。状況に応じて使いやすい方を選択したいですね。
粉ミルクでアレルギー反応がある場合は注意が必要
このほかに注意すべきことはありますか?
「先ほどもお伝えしたように、液体ミルクの成分は基本的にその会社が販売してきた粉ミルクと変わりません。ですので、通常の粉ミルクでアレルギーを起こしてしまう赤ちゃんには使用できません。同じ理由から、初めて液体ミルクを利用する赤ちゃんもアレルギーの反応があるかの注意は必要です」
すでに海外では、アレルギー対応の液体ミルクがあります。国産液体ミルクの販売が始まったばかりの日本では、今後の需要をみて、アレルギー対応の製品が検討されることになるようです。
「液体ミルク」はなぜ温める必要がないの?

液体ミルクは、開けたらそのまま赤ちゃんが飲めるようになっているのでしょうか。
「飲ませ方ですが、液体ミルクを清潔な哺乳瓶に移して使います。海外製品では、容器にそのまま乳首をつけて飲ませられるものもありますが、当社を含めて日本の製品では、そのようなものはまだありません」
「人肌」に温める必要がないのは、なぜでしょうか?
「粉ミルク調乳でもよく『人肌』という話になりますが、実は衛生上70℃以上のお湯で溶く必要と、赤ちゃんが飲んで問題ない温度に冷ますという2点が確実にできていれば良いので、必ずしも『人肌』である必要はありません。栄養吸収の面でも常温と人肌に違いはなく、人肌にこだわる必要はありません」
「とはいえ、人肌に慣れてしまった赤ちゃんの中には、どうしても常温のミルクを好まない子もいます。そんな時は、哺乳瓶に移した後に湯煎にかけて温めても問題はありません。ただし、電子レンジは、加熱が不均衡で、一部に熱い部分ができ、乳児の口に火傷を負わす可能性があるため、電子レンジの使用は控えてください」
では、ほかに使用上の注意点はありますか?
「液体ミルクは一度開封したらすぐに使い切る必要があります。まったく口をつけていないとしても、開封後に時間をおくと、内容物が変質する可能性があるので、飲むことは控えてください」
調乳の手間を省いてくれるだけではなく、災害時の備えにもなる液体ミルク。赤ちゃんと過ごす時間が穏やかなものになるように、上手に活用していきたいですね。
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