「リビング学習をすると成績が上がる」と耳にして気になっているけど、具体的にどうメリットがあるのか知らない方も多いのではないでしょうか。そこで、なぜリビング学習が子供の成長や教育に効果があるのか、教育評論家の親野智可等さんに教えていただきました。
リビング学習は、子どもが安心して勉強ができる
親野さんいわく、リビング学習における一番のメリットは、子どもが安心して集中できることなのだとか。
「子どもは、部屋でひとりだと、不安になり、集中できません。子どもは基本的に怖がりであり、大人が思う以上に不安に満ちていて、ちょっとしたことでお化けや妖精でもいるんじゃないかと思ってしまうものです。親をすぐ呼べる場所や家族の気配を感じられる場所のほうが安心して集中できるんです。」
また、子どもひとりだといつまでも勉強に取り掛からなかったり、途中で飽きてしまうこともありますが、親の目があるリビング学習なら勉強を促しやすいというメリットもあります。子ども自身も、親がそばにいる方が勉強へのやる気を出しやすいそうです。
「親が近くにいれば、わからないことがあったら、すぐに『教えて』と聞けるし、終わったら、お母さんにすぐ見てもらえます。親が見て、正解していたら丸を付けて『よく頑張ったね』とほめられると、子どもはうれしいし、勉強が楽しくなるはずです。逆に間違った場合も、すぐに教え直せるので、子どもの理解も早く、記憶にも残りやすいんです。」
すぐにほめてモチベーションアップ!学習以外でも効果あり
このように、やったものをすぐ見てほめてあげることが、子どもの勉強へのモチベーションを上げるうえでとても効果的で、教育心理学では『即時確認の原理』と呼んでいるのだとか。
これは、学習だけでなく、お絵描きや遊ぶ時などでも子どもによい効果があるそうです。
「お絵描きや遊びも学習と同じく、子どもは何かできたらすぐ親に見てもらいたいのです。一緒にいれば、親はすぐにそれを見て、『頑張ったね』『よくできたね』『上手だね』などとほめることができますよね。ほめてもらいたい時にすぐほめられることで、子どもは大きな喜びを感じます。それで、自己肯定感も高まり、『もっとやってみたい。自分はきっとできる』『他のこともやってみよう』と思えるようになるんです。」
逆に、時間が経てば経つほど、ほめられた時のうれしさは減ってしまい、モチベーションも下がってしまうそう。
「何時間も経った後だと、子どもはもう別のことに意識が向いています。勉強やお絵描き自体に興味を失って、正解か間違いか、上手に描けたかなどもどうでもよくなってしまうのです。小さい子ほど早くリアクションがほしいと感じているので、親の近くで勉強やお絵描きをさせたほうが学習能力を上げるためには効果的です。」
リビング学習をするうえで、環境づくりも大事なポイント
子どもは学習する環境が快適でないと気が散って勉強に集中することができません。快適な環境を整えるのも、親の大切な役目。次のことに気をつけてみてください。
●部屋全体の照度と手元の照度を適切にする
「普通に団らんしているときは150ルクスから300ルクスくらいの明るさでよいのですが、勉強に必要な明るさは500ルクスから1,000ルクスと言われています。ですから、リビングの照明だけでは勉強には不十分の可能性も。照明が暗すぎると、目が疲れやすくなり、視力にも影響が出ます。また、手元が暗いと覗き込むようになるので、姿勢が悪くなりがちです。」
子どもの目に負担をかけてしまうのは避けたいところ。子どもの手元が明るくなるよう、持ち運びに便利なライトを準備しておくのもいいかもしれません。
●机の高さと椅子の高さ子どもに合わせる
「ダイニングやリビングのテーブルや椅子が勉強に適さない場合があります。椅子が高すぎるなどの理由で足が浮いてブラブラしていると、集中力に影響が出ます。また、テーブルが高すぎたり低すぎたりすると、文字がうまく書けませんし、姿勢も悪くなりがちです。」
これらを防ぐためには、テーブルや椅子の高さを調節したり、足下に足を置く台を用意することが必要です。
●勉強に使う道具の収納場所を確保する
「リビング学習では、教科書、問題集、ノート、文房具などが散乱しやすいので、収納場所をリビングに確保してあげる必要があります。」
「これら環境づくりの問題を解決するためには、子ども用の学習机と椅子をリビングに置くことも合理的だと思います。学習机ならすぐに椅子の高さの調節もできますし、電気スタンドも置けます。問題集や文房具などを収納することもできますよ。」
このほか、テレビなどの音や部屋の気温なども子どもの集中力に影響するそう。勉強に適した環境になっているかどうか、お子さんの様子を見ながらチェックしてみましょう。
親は、子どもをほめて学習をサポート
「リビング学習がうまくいくかどうかの分かれ目は親の言葉」と親野先生。親が否定的な言葉が多かったり、叱ってばかりいると、リビング学習の長所が全て短所に変わってしまうので注意が必要とのことです。
【子どもへかけてはいけない言葉の例】
「そこ間違えてるでしょ。何度言ったらできるの?」
「もっと丁寧に書かなきゃダメでしょ。もう一度やり直しなさい。」
「もっとちゃんと問題を読まなきゃダメでしょ。」
「このような否定的な言葉だと、子どもは親の愛情を感じるどころではありません。逆に、『私はお母さんにあまりよく思われていない。』『ダメな子だと思われてるんだ…』『お母さんはぼくのこと嫌いなのかも』などと感じてしまう場合も。また、勉強についての否定的な言葉を浴びていることで、勉強そのものが嫌いになってしまうということもあります。」
否定的な言葉はやめて、肯定的な言葉に変えたり、子どもが努力した部分をほめる努力が必要です。
【子どもへ積極的にかけたい言葉の例】
「ここは○○するといいよ。」
「細かいのによくがんばったね。」
「○○を□□したのがすごくいいアイデアだね。」
このように、子どもへは、プラスイメージの言葉で伝えるようにしましょう。
「頭ごなしに叱るのではなく、親はまず子どもをほめること、そして見守ることが大切です。上手なリビング学習は『親力』にかかっています。」
リビング学習をたださせるだけでなく、子どもを適切にサポートして、ぜひとも学習能力を上げたいものですね。