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子どもの夢応援企画第7回:F1ドライバー 鈴木亜久里さん

掲載日: 2016年3月10日更新日: 2016年5月19日石橋 夏江

子どもたちの憧れの職業について、その道のプロからお話を伺い、子どもたちの夢の育みをサポートする『子どもの夢応援企画』。第7回は、モータースポーツ最高峰のレースで戦う「F1ドライバー」! 日本人として初めてF1の表彰台に上がった鈴木亜久里さんにお話を伺いしました。

ゴーカートに乗る楽しさが夢へと繋がった!

1990年のF1日本GPで3位に入賞し、日本人ドライバーとして初めて表彰台に上がった鈴木亜久里さん。そんな亜久里さんがF1ドライバーへの道を歩み始めたきっかけは、遊園地のゴーカートだったそう。

遊園地に行くと必ずゴーカートに乗る子どもでしたね。その時はレーサーになろうなんてことは考えてもいなくて、ただただ楽しくて乗ってる感じで。当時は所沢に住んでたんだけど、近くにカート場があって、よくそこに乗りに行ってたよ。F1ドライバーを目指そうと決めたのは、気軽にカートに乗れる環境に育ったことが大きいと思う。」

「当時は大人と一緒にレースをして勝つと、すごくうれしかったね。もちろん、勝つことや上に行くために努力することは大事だけど、子どものうちは好きなことに思い切り打ちこんで『楽しむ』ってことが大切なんじゃないかな。」

努力を惜しまなければ道は開ける

こうしてカートレースの楽しさに目覚めた亜久里さんですが、その後F1ドライバーになるまでは、長く険しい道のりだったそうです。

大切なのは目の前の課題を一つひとつクリアしていくこと

「F1ドライバーになるのは本当に大変(笑)! どうすればF1ドライバーになれるのかはひと言では言えないね。もちろん体力も必要だし、ドライビングセンスも磨かないといけない、あとはレースに出るための資金も必要。大きな目標を叶えるためには、そこまでいくつものステップがあって、そのためにはまず目の前のことを一つひとつ頑張らないと。」

とにかく、その時に自分が置かれている環境の中でやれることを100%やることが大切。子どものうちは学校の勉強や部活を一生懸命やって、その上でレーサーを目指すのであれば、カートに乗りに行って、レースで成績を上げていく。そうしてステップアップして行けば、自然と次にやるべきことが見えてくるから、それを頑張ればいい。そうやって少しずつ、夢に近づいていくしかないと思うよ。」

たくさんの人の応援があったからなれたF1レーサー

世界でもほんの一握りの人しか上がることのできないF1という世界最高峰の舞台。そこまで亜久里さんがたどり着けたのは自身の努力のほかに、周りの人の大きな支えがあったからだと言います。

「まず親父のサポートが大きかったかな。『レーサーになれ』『プロになれ』っていうんじゃなく、俺が好きで一生懸命やってたから、そんな自分をずっと応援してくれていた。別にそれはレーサーじゃなくても一緒だったと思う。やっぱり子どもが楽しく、自分が吸収したいと思う時に吸収していくのが一番伸びると思うし。そういう意味では、うちの親父には感謝してますよ。」

「あとは色々な人の応援。これがなかったら自分はあそこまで行けなかったんじゃないかって思うね。節目節目で助けてもらったり、壁にぶつかった時にアドバイスをもらったことで乗り越えられたり。本当に周りの人に支えられてきたと思います。」


現役時代は常に必死!世界のトップレーサーと戦う日々

16歳の時にすでにカートのプロとして活躍していた亜久里さんは、18歳で運転免許を取得すると自動車レースへ参戦。着実に結果を積み重ね、1988年についに日本人としては2人目となるF1フルドライバーとしてデビューを果たします。

しかし、F1という夢の世界が急に現実の世界になり、「とにかく目の前にあることすべてが大変だった!」と当時を振り返る亜久里さん。毎日がプレッシャーとの戦いだったと言います。

何百人ものチームスタッフの努力の結晶とも言える車に乗る訳だから、とにかくプレッシャーは大きいよね。自分のミスでみんなの努力をムダにしちゃいけない…って。レースがスタートしたらあとは、孤独な戦い。自分との戦いであり、ライバルとの戦いでもある。世界のトップドライバーがどれだけ優秀なのかを実感させられることがたくさんあるけど、どんなときもめげずに強い自分でいられるような精神力が必要だったね。」

運も味方に付け日本人初の表彰台へ!結果を出すことが一番の喜び

そんな中、日本のF1ファンが心待ちにしていた歓喜の瞬間がついにやってきます。1990年、鈴鹿サーキットで行われた日本GPで3位入賞を果たし、日本人として初めての表彰台に立つのです。

「あの時は正直、ラッキーって感じでした(笑)。それまですごく調子が上がってきてたから、いい成績は残せると思ってたけど、まさか表彰台に上がれるとまでは思っていなかったかな。チームや自分が一生懸命努力したっていうのはもちろんあるけど、“運”もあったなと。」

「そうやって結果が出せて、みんなが喜んでくれる時が一番やりがいを感じる時だね。結果が全てのシビアな世界だからこそ、一緒に戦うチームメイトはファミリーみたいなもの。その人たちを愛して、コミュニケーションを大切にすることもドライバーとしては欠かせないことだね。その上で結果を出して行けば、チームメイトからもより信頼される存在になっていけると思うよ。」


引退して見つけた新たな夢。日本のレースを盛り上げる

現在はドライバーを引退し、モータースポーツプロジェクト「ARTA」代表として、若手ドライバーの育成に力をいれつつ、チームとしてSUPER GTなどのレースにも参戦している亜久里さん。

今は、自分が関わった若い選手が力をつけて活躍してくれたり、チームがいい成績をあげてくれることが喜びかな。今度は自分が応援する立場になった訳だから、若い子たちがそれに応えてくれるっていうのが何よりもうれしいね。世界で活躍できるようなドライバーを一生懸命育てていけたらいいなと思ってます。」

「有望な日本人ドライバーも続々登場しているけど、個人的に今一番注目しているのが松下信治。今はマクラーレン・ホンダのテストドライバーを務めていているんだけど、きっとF1ドライバーになってくれるんじゃないかな。」

あとはカーレースは難しいと思って敬遠している人に、もっと気軽に楽しんでもらえればいいなと思いますね。例えば、応援したいドライバーやチームを決めて見るとか。まずは誰かのファンになるのが、レースを楽しむ一番のポイントだね!」


子どもたちが聞きたいF1の素朴な疑問を解決!

ここで亜久里さんが、子どもたちのF1についての3つの質問にも答えてくれました。

F1の車と普通の車、どこが違うんですか?

「まず形が全然違うよね。タイヤが太くて外に出てるし、一人乗り。地面との接地面積を増やしてより早く走るために、タイヤには溝がないところも違うね。乗用車というよりゴーカートに近いかな。形や性能は全然違うけど、技術が進歩して、最近のF1 の車の扱いはオートマ車とあまり変わらなくなってきたと思うよ。」

F1ドライバーはいつもどんな練習をしていますか?

「トレーニングしたり、テストのために車を走らせたりしてるよ。レースの時は心拍数が180〜200くらいまで上がるから、トレーニングは心肺能力を高めるものが中心。サーキットでは練習はもちろん、新しいパーツができた時などに車を走らせてテストするのもドライバーの大事な仕事だね。」

どうしたらF1の車で速く走れるようになりますか?

「F1ドライバーの運転技術はみんな超一流。そのなかでトップになるには、最後の最後は才能の差、センスの差かな。どう運転するかとか言葉で説明できるところじゃなく、目で見てそれに体がどう反応するか、その能力がずば抜けている人ってやっぱりいるんだよね。例えばアイルトン・セナとかミハエル・シューマッハとか。生まれ持った才能はどうにもできないけど、日々の努力でセンスを磨けば、そんな天才に近づくことはできると思うよ。」


努力を惜しまず、自分の夢へ突き進め!

最後に夢に向かって頑張る子どもたちにメッセージをいただきました。

とにかく大事なのは努力を惜しまないこと! 自分の目標をこれと決めたら、わき目も振らずに進んで行くのが夢をかなえるために大事なことなんじゃないかな。それは別にドライバーになるだけじゃなくて、どんな世界でも同じだと思うよ。」

F1ドライバーは本当に狭き門だし、目指しても簡単になれるもんじゃない。でも、努力すれば決して叶わない夢じゃないと思います。今は各社がドライバー育成のためのスクールを設けているので、そういったところで腕を磨くのもおすすめ。ぜひそこからF1やほかのレースドライバーを目指していって欲しいです。」

鈴木亜久里さん、貴重なお話をありがとうございました。『子どもの夢応援企画』第8回は「プロレスラー」の予定です。お楽しみに!

「夢応援企画(将来なりたい職業紹介)」の記事一覧はこちら

お話を聞いたのは…

  • 鈴木亜久里さん

    1960年東京都生まれ、埼玉県所沢市育ち。小学生の時にゴーカートに出合い、12歳の時にカートレースデビュー。1979年、18歳の時に当時最年少で全日本F3選手権に参戦し、1988年には全日本F3000選手権のシーズンチャンピオンに。翌年F1に本格参戦し、1990年の日本GPで3位に入り、日本人として初めて表彰台に上がる。引退後、オートバックスとモータースポーツプロジェクト「ARTA」を発足。チームとしてSUPER GTに参戦しながら、若手ドライバーの発掘、育成にも力を入れている。

ライター紹介

石橋 夏江

編集プロダクションverb所属。編集者・ライター。趣味は、旅行と写真とスキューバダイビング。プライベート旅でも、取材旅以上の分刻みスケジュールを組むため、友達がなかなか一緒に旅行に行ってくれないのが最近の悩み…。

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