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子どもの夢応援企画 第2回:パイロット JAL・江戸さん

掲載日: 2015年10月20日更新日: 2016年5月19日矢口 あやは

子どもたちの憧れの職業について、その道のプロからお話を伺い、子どもたちの夢の育みをサポートする『子どもの夢応援企画』。第2回は、巨大な旅客機を飛ばす、パワフルでかっこいい「パイロット」! 日本航空(以下JAL)でパイロットとして勤務する江戸政人さんに、パイロットの仕事内容や魅力を伺いました。

パイロットは大忙し! 国内線は1日4本飛ぶことも!? 

──パイロットの主なお仕事を教えてください。

JALの旅客機は、機長1名、副操縦士1名で操縦しています。機長の仕事は、副操縦士とともに飛行機を操縦し、お客さまと貨物を安全に、かつ快適に目的地へ運ぶことですね。

家族旅行やビジネス、あるいはご不幸など、いろんな理由で現地に急がれる皆さまのお役に立てる、すばらしい仕事です。

現在、JALグループのパイロット数は、機長や副操縦士を含めて全部で約2,500名。男性のイメージが強い職種ですが、最近はJALグループ全体で17名の女性パイロットが活躍しています。

──女性もトライできる分野になりつつあるんですね。1日のフライト数や休日は?

国内線の場合、フライト数は多いときで1日4便ほど。でも、お休みは平均で週2日ですから、一般的な会社と同じです。

小さい頃から乗り物大好き! 夢実現までの道のりは…

──子どもの頃からパイロットになりたかった?

小さい頃から車やバイクなどの乗り物が大好きで、漠然とパイロットになる夢を抱いていました! が、その後は教師の道を志し、四年制大学の教育学部に進学。

ふたたびパイロットの夢に向けて動き出したのは、「日本航空でパイロットの自社養成を行っている」と聞いたことがきっかけでした。

──“パイロットの自社養成”って、どんな制度なんでしょう? 

航空大学からではなく、一般大学から“パイロット訓練生”を募り、社内で教育を行う制度です。その時々の情勢にもよりますが、現在のJALでは、自社でパイロットを育てるのが主流です。

パイロットになりたいと思った時、必ずしも航空大学を出ていなければならないということはありません。


超難関のパイロット採用試験。入社後4年はひたすら訓練

── 一般的には倍率は100〜200倍ともいわれているパイロット枠。どんな試験を行うのでしょう?

流れや内容は時代によって変わりますが、私のときは、1次が筆記・面接。2次が英語面接・心理適正試験。3次が管理職面接。4次が飛行適正試験・グループ面接。5次が航空身体検査。6次が役員面接、という流れで進みました。

英語は必須ですが、日常会話をこなせる程度で大丈夫だと思います。視力が悪いとなれなかったのは昔の話で、現在はコンタクトやメガネ矯正で1.0の視力があれば応募できます。

──英語や健康面以外で重視される適正とは?

機長と副操縦士のコンビは初対面であることも多く、どんな人とでも共同作業ができる協調性が必要です。そういう意味で、コミュニケーション能力が重視される仕事だと思います。

パイロットの訓練は、机に向かう勉強も多い!?

──訓練生として入社すると、どんな訓練を受けるんですか?

入社して半年から1年ほどは、日本航空の社員として、いろんな空港の地上係員として勤務します。その後は、副操縦士になるための訓練が待っているんです。

最初は、航空法から、気象、管制ルール、航空力学といった座学からスタート。そして、アメリカへ渡り、座学と、シミュレーターや単発プロペラ機、双発プロペラ機などによる訓練を積みながら、操縦と、計器飛行に関する国家資格を取ります。さらに、日本に戻ってボーイング737や777など、自分が乗務する機種ごとの資格を取るのです。

──必要な資格を順番に取得していって、ようやく副操縦士になれるんですね。

ここから、副操縦士から機長への長い道のりが始まります。機長になるまでだいたい10年かけて経験を積むのが定石ですね。

この後、機長になるために必要な資格である「定期運送用操縦士」免許の取得を目指し、合格したら晴れて機長になれるのです。


日々進化する業界で新たな知識を学び続けるパイロット

──働いていて大変だと思うことはありますか?

飛行機を操縦するための資格は、年に1度、審査を受けて更新していかなければなりません。そのために、知識を常にアップデートしていく必要があります。「航空身体検査」も気を抜けない審査の一つ。安全なフライトを行うためにも、日々の体調管理にとても気をつけていますね。

──大型機は500名、中型機でも150人以上とか。多くの人の命を背負って飛ぶプレッシャーや精神面の負担も大きいのでは?

確かに、お命をお預かりしている緊張感は常にあります。でも入社以降、訓練をみっちり積み、誰にも負けない経験を積んできたという自負があります! そこが、プレッシャーに負けない精神的なパワーの源になっていると思いますね。

お客さまの笑顔を見られる瞬間はやっぱり最高!

──では、働いていて幸せを感じるのはどんなときですか?

お客さまの笑顔はパイロット冥利につきます。また、きびしい気象条件のときに、安全に目的地に着いたときは達成感もひとしおですね!
 
──国際線に乗務すると、海外の国々を楽しむこともできる?

もちろん! 乗務している飛行機が就航するエリアならどこへでも。私はアメリカ、ブラジル、ヨーロッパ各国、東南アジア各国、オーストラリア、中国、韓国などに行きました。

リフレッシュするのも大切なので、時間があれば現地のひとときを楽しみます。その土地のおいしいごはんを食べたり、名所旧跡を回ったり。ハワイでは、ビーチで泳いだり(笑)。とはいえ、帰りの便の乗務にそなえて、体を休めるのが最優先です。


教えて、機長さん! キッズからの素朴な質問3つ

初めてのフライトはどんな気持ちでしたか?

小型プロペラ機を操縦して初めて飛んだときは「うわああああ! 飛んでる——ー!」って思いました(笑)。その後、旅客機のパイロットとして初めてお客さまを乗せたときは、とってもうれしかったけれど、お命を預かる緊張感のほうが勝っていました。

信号がないのに、飛行機はどうしてぶつからないの?

大きく分けて3つの理由があります。1つ目は、見えない道があるため。どこを飛んでも良さそうですが、飛行機はGPSを使って計算された道の上を飛んでいるんです。道が交差しているところは、ぶつからないように300mくらいの高度差をつけます。

2つ目は、管制官がレーダーを見て、ルートを誘導してくれるからです。そして3つ目は、飛行機自体に衝突防止装置がついているから。万一、衝突しそうになったら警報が出て教えてくれるので、パイロットが回避操作をします。

高いところは怖くないですか?

実は、私は高所恐怖症で、観覧車とかはすごく怖い(笑)! でも、飛行機は自分が操縦しているし、とても安全な乗り物だと知っているから、高くても怖くないんですよ。心配しないでね。


パイロットに向いている子は「ながら作業」が得意な子?

──資質として、この職種に向いているのはどんな子だと思いますか?

運転が好きなお子さん、海外の国に興味があるお子さんも、きっと楽しいと思いますが、個人的に向いていると思うのは、「ながら作業」ができるお子さん。

というのも、パイロットは1つのことに集中しすぎてはいけないのです。飛行機を操縦しながら、管制官ともやりとりをしつつ、目の前の計器も見ていますし、窓の外に飛行機がないかも観察しています。さらに、客室乗務員など仲間の動きも察していますので、いろんなところを絶えず意識しているんですね。

だから、テレビ見ながら勉強できちゃうお子さんは、並行作業が上手だという点でパイロットの資質があるかもしれません。とはいえ、これはあくまでも個人的な意見です。「ながら勉強」をおすすめしているわけではありません!

コミュニケーション能力と経験することを大切にして!

──では、最後に、パイロットを目指すお子さんたちにアドバイスをお願いします!

機長と副操縦士のコンビは初対面であることも多く、どんな人とでも共同作業ができる協調性が必要です。そういう意味で、コミュニケーション能力が重視される仕事だと思います。ぜひ、いろんなお友達をつくって、仲良く遊んで、対人能力を育んでください。

そして、大空を飛んでいる以上、ちょっとした判断ミスも命に関わります。アクシデントが起きたら、その都度ベストな判断をしなければなりません。そのときに活きてくるのが、ありとあらゆる“経験”です。

子どもの頃に好奇心を持って、いろんなことにチャレンジした経験はきっと、ピンチのときに活きるはず。ぜひ、失敗を恐れずに何にでもトライして、経験値を高めていってください。

江戸さん、貴重なお話をありがとうございました。パイロットに興味がある小学生のお子様は「JALスカイミュージアム」で航空業界を体験してみるのもおすすめ。予約必須ですが、きっとワクワクする経験ができると思いますよ!

『子どもの夢応援企画』第3回は「キャビンアテンダント」です。お楽しみに!

「夢応援企画(将来なりたい職業紹介)」の記事一覧はこちら

お話を聞いたのは…

  • 江戸政人さん

    1993年に日本航空に入社し、国内線、国際線ともに担当してきたベテランパイロット。現在の担当機はボーイング737。また、商品・サービス企画本部と、業務部・お客さまサポート室にも在籍中。プライベートでは、2人の子どものよきパパ。

ライター紹介

矢口 あやは

1983年生まれ。大阪府出身。フリーライターとして活動する傍ら、生き物の世界に魅せられて、狩猟免許を取得。沖縄から北海道まで、国内の自然と動物を訪ね歩いています。現在は、世界一周を目指して貯金の日々。

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