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親子でしっかりルール作りを!ゲームが脳に与える影響とは?

掲載日: 2016年3月28日更新日: 2016年3月28日佐藤葉月

大人の都合や周りの環境で子どもに安易に与えてしまいがちなテレビゲームや携帯ゲーム(以下、ゲーム)。しかし、そのゲームが子どもにどういった影響を及ぼすのか、親がきちんと知っておくことが大切です。そこで、医学博士で小児神経専門医である本田真美先生に、子どもがゲームから受ける影響について話を聞きました。

ゲームは脳への刺激が強い!小学校入学までは避けよう

「人間の脳というのは、刺激の強いものを覚えるとそれ以下の刺激では満足しなくなってしまうんです。ですから、子どもにゲームを与えることによって、遊びの楽しさがゲームでしか得られなくなってしまうという懸念があるということを、ご両親にはまず知っていただきたいですね」と本田先生。

テレビゲームも携帯ゲームも、目から入ってくる情報が非常に多く、視覚への刺激は脳に大きな影響を与えるのだそうです。そのため、一度ゲームの楽しさを覚えると、絵本を読むよりゲーム、卓上のおもちゃよりゲームというように、子どもにとってより刺激の強いゲームの方にしか興味が向かなくなってしまうのです。

「乳幼児期は脳が柔軟であるために大きな刺激に影響を受けやすいですし、感覚の土台を作る大切な時期。ある程度の自制心が芽生えて、“宿題をしてからゲーム”など自分自身をコントロールできるようになる小学生以上の年齢までは、ゲームは安心して遊べるものだとは言い切れません。」

体や手を動かす遊びを覚える前にゲームを与えるのは避け、いつから子どもにゲームを許すのかを、家族で話し合う必要がありますね。


ゲームは個で完結する世界。生きたコミュニケーションを

また、ゲームはイマジネーション(想像力)やコミュニケーション力を育てることの妨げにもなると本田先生は話します。

「ゲームはすでにプログラミングされていてストーリーが決まっているものなので、自分で想像する力は鍛えられません。また、用意された選択肢を選ぶことで勝手にストーリーが展開したり、間違えたら簡単にリセットできるような世界の中では、人とコミュニケーションをはかる力も身につきにくいもの。」

「実社会では、言ってしまったひと言が誰かを傷つけても、リセットはできないし、そこをどう乗り越えるかという相手とのコミュニケーションが発生しますが、ゲームの世界にはそうした他者との“生きたコミュニケーション”がないということなのです。」

乳幼児期は特に、人との関わり方を学ぶために生きたコミュニケーションが必要な時期ですから、安易にゲームを与えるのは避けた方が良いでしょう。」

特に子どもが幼いうちは、なるべくゲームには頼らず、人と関わることで得られる体験を優先させてあげたいですね。

時には良い影響も?ゲームによって鍛えられる力とは

「でも、そういう私も、こう見えて昔ゲームオタクだったので、一概にゲームがデメリットばかりだとは言いにくいんですよね」と本田先生。

「ゲームが脳に良い影響を与える、とまでは言えませんが、ゲームを通して身に付く力もあります」とゲームのメリットも教えてくれました。

「例えば、ロールプレイングゲームでは、ストーリーを覚えながら、その場に応じた判断をしなくてはならないので、記憶力や物事を遂行する力が身に付くことも。また、スーパーマリオなどのアドベンチャーゲームは、目で見て瞬時に“進む”、“進まない”の判断をし、タイミングを合わせて手を動かす瞬発力が身につきます。また、集中力が鍛えられるのも、ゲームのメリットですね。」

コミュニケーションが不足しがちなゲームですが、パーティゲームなど複数人でわいわい行うものは、ゲームをすることで会話が生まれるので、コミュニケーションのツールにもなりそうですね。


大切なのはメリット、デメリット両方を知った上での管理

このように、ゲームにはデメリットだけでなく、メリットがあるのも事実。ゲームを一切遮断するのも、IT化が進んだ現代社会では何かと難しい部分もあります。そこで大事になってくるのは、親がゲームをどう理解して、子育てのアイテムとしてどう上手に取り入れていくのかということです。

親がゲームのデメリット、メリットを知っているか否かでは、子どもへの与え方、影響度合いが大きく違ってきます。

勉強や興味を深めるツールとして、ゲームを活用するのも良いこと」と本田先生。

「クジラってどんな生き物なの?と思った時、図鑑を見るだけでは得られない情報が映像を通せばわかることも。そのように、目から得る効果的な情報もあるのです。ゲームと言ってもいろいろな種類がありますし、ゲーム形式で学習ができるソフトもたくさん出ていますから、どんな内容のゲームなのかを親がしっかり把握して選んであげてください。」

ルールを決めて、上手に教育ツールとして取り入れよう

ゲームを使う上で親が管理するのは大切なことですが、本田先生は「一方的な親の都合で与えたり禁止したりするのはやめてほしい」と言います。

「外で食事している時に子どもがうるさいからと言ってゲームを与え、子どもにゲームの楽しさを覚えさせたのにも関わらず、家に帰ったら“ゲームをしないで勉強しなさい”というのは、親の勝手。子どもの立場に立ったルール決めをしないと、“ゲームをやめてくれない”と、結局親は自分の首を絞めることになるんです。」

大切なのは何を目的にして、どうゲームを活用するか、最初に決めることだそう。

「例えば、ゲームを許可するのは“おつかいに行ったら”とか、“テストで100点を取ったら”とか、家庭ごとの教育方針に応じて決めるのも一つの手。1日何時間ならOKと、時間を決める方法もありますが、一概にこれくらいの時間なら大丈夫とは言えません。その子の性格、特性を見極めた上で、ルールを決めて与えてあげてください。」

この時期、進学や進級のお祝いでゲーム機の購入を考えているご家庭もあると思いますが、家庭でのルールを決めてから、子どもの遊びや学習のツールの一つとして上手に取り入れていきたいですね。

お話を聞いたのは…

  • 本田真美(ほんだまなみ)先生

    医学博士、小児科専門医、小児神経専門医、小児発達医。東京慈恵会医科大学卒業後、国立小児病院、国立成育医療研究センター、都立東部療育センターなどで肢体不自由児や発達障害児の臨床に携わる。自身も13歳と8歳の子どものママ。世田谷区に「ニコこどもクリニック」を開業し、2016年1月まで院長を務める。2016年4月からは、「みくりキッズくりにっく」を開業。さまざまな援助を必要とする子どもたちを診療している。主な著書に「医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン (光文社新書)」などがある。

  • みくりキッズくりにっく
  • 医師のつくった「頭のよさ」テスト 認知特性から見た6つのパターン (光文社新書)

ライター紹介

佐藤葉月

宮城県生まれ。タウン誌の記者、ブライダル雑誌の編集者を経てフリーランスに。東京オリンピックを含め、子どもたちに夢を与えるスポーツ関連の記事を書くことが目標。月に1回はライブを見に行く音楽好き。海外一人旅にはまり、アジア圏制覇を目論んでいる。

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