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【育児の新常識】除菌しすぎると身体が弱くなるって本当!?

ジメジメと湿度の高い梅雨は、いつにも増して除菌に精を出したくなるもの。幼い子どもがいるママなら尚更ですが、一方で、清潔にし過ぎることで身体が弱くなるとも聞きます。そこで感染免疫学の第一人者、藤田紘一郎先生に、正しい菌との付き合い方について伺いました。

除菌で死ぬのは有害な菌だけではない!

家でも外でもアルコールティッシュなどの除菌グッズを駆使して、子どもには一切汚いモノを触らせない。どんな雑菌がいるか分からないから、泥んこ遊びなんてもってのほか…!

そんな超・清潔志向の子育てに警鐘を鳴らす、藤田先生。「子どもを病気にさせまいと除菌を徹底することが、かえって逆効果になる」と言いますが、これは一体どういうことでしょうか。

「そもそも私たちの身体には、『常在菌(常在細菌)』と呼ばれる菌が皮膚や腸、粘膜など身体のあらゆるところにいて、有害な病原菌の侵入や繁殖を阻止しています。しかし、除菌グッズを使うと、病原菌ばかりでなく、身体を守っている常在菌まで殺してしまうのです。たとえば手をアルコールティッシュで拭くと、病原菌や花粉といった外部刺激から肌を守っている皮膚常在菌まで追い出してしまう…といった具合です。」

除菌は悪い菌ばかりでなく、身体に有益な菌までも排除してしまうのですね。


免疫力の7割は腸で作られる!雑菌が免疫力をアップ!?

身体のさまざまな場所に存在する常在菌の中でも、腸管内にいる「腸内細菌」は、私たちの免疫システム上、とても重要な役割を果たしているそう。

「腸は口から入った食べ物の栄養を吸収する場であるとともに、病原菌が体内に広がるのを阻止する最も重要な免疫器官でもあります。免疫細胞のじつに約7割が腸内に集中し、日々病原菌と戦っているんです。この免疫細胞たちを活性化するのが、腸の常在菌である『腸内細菌』なのです。」

「腸内細菌は、免疫細胞にとって練習台のようなもの。腸内には約3万種類、1,000兆個もの腸内細菌がいますが、免疫細胞は病原菌よりも弱い多種多様な腸内細菌を相手に攻撃の練習を繰り返し、さまざまな病原菌に勝つ力を鍛えます。これにより、結果として免疫力がアップするのです。言い換えれば『私たちの免疫力の7割を腸内細菌が作っている』ということです。」

雑菌生まれの「日和見菌」を味方につけよう

腸内細菌は善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3つに大きく分けられます。乳酸菌などの善玉菌や、大腸菌などの悪玉菌は、よく耳にしますが、先生が注目するのは、腸内細菌の大半を占める「日和見菌」。

腸内細菌は、もともと食べ物などと一緒に体内に取り込まれた細菌が腸管内に定着したものですが、中でも「日和見菌」は身の回りや土の中にいる雑菌が元になっているのだとか。そして、藤田先生は「雑菌由来の日和見菌が免疫力の鍵を握っている」と言います。

「日和見菌は、善玉菌が多ければ善玉菌に味方して良い働きをして、悪玉菌が多ければ悪玉菌に味方し悪さをするんです。免疫細胞の攻撃バリエーションを高めるのに最適な、言わば『チョイ悪菌』ですね。全体として良い働きをする菌を増やし、免疫力を高めるには、食生活を通して善玉菌を取り入れるだけでなく、適度に雑菌に触れて日和見菌を増やすことが大切なんです。」

藤田先生は子どもに泥んこ遊びを勧めていますが、これも泥の雑菌に触れることが体内の日和見菌を増やすことに繋がるから。実際、日常的に土に触れる農家や酪農家の人は免疫力が高く、アレルギーが少ないという調査結果も出ているそうです。


除菌よりも、腸内細菌の種類を増やすことが大切

でも、大人に比べて免疫力の低い赤ちゃんや幼い子どもが雑菌に触れて大丈夫なのでしょうか。

「基本的に、身の回りの雑菌に怖い菌はいません。赤ちゃんが何でもペロペロ舐めるのも、免疫力を高める上で大事なことなんです。むしろ、お母さんのお腹の中で無菌で育ってきた赤ちゃんが、いきなり雑菌だらけの世界に生まれるわけですから、いろんなモノに触れて短い間に免疫をつけなければなりません。」

もちろん、不潔極まりないのはNGですが、わざわざ除菌シートでおもちゃを拭いたり、舐めないように取り上げたりする必要はなく、気になるようであれば水拭きする程度で良いそう。忙しさにかまけ、段々とおもちゃの手入れがおざなりになった経験のある身としては…ちょっとホッとするお話です。

「実は腸内細菌の種類は、だいたい生後1年、遅くとも5歳くらいまでに決まってしまいます。その時期までに子どもをどんな環境で育てたかによって種類が決まるんです。そこら中をハイハイさせて、いろんな人とふれあって、外遊びもたくさんした子の方が腸内細菌の種類は多く、清潔過ぎる環境で育った子は腸内細菌が少なく、免疫力が低い傾向にあります。」

除菌、除菌…と神経質になるのではなく、おおらかな気持ちで雑菌と付き合い、菌に耐えうる身体を作る方が大切なのですね。

梅雨は食品の腐敗菌に注意。アレルギー体質ならカビも

とはいえ、特に菌が繁殖しやすい梅雨時期には注意したい菌があるのも事実。食べ物を腐らせない、調理器具は清潔を保つ、水回りの掃除や換気…など食中毒を防ぐための基本的な衛生管理は必要です。

食品に生える腐敗菌は怖いですし、カビ胞子はぜんそくを起こす原因にもなるので、アレルギー体質の場合はカビを繁殖させないよう注意が必要です。でも腸内細菌が豊富であれば、万一飲み込んでも症状が出ないことがほとんど。やはり日頃から菌に負けない身体を作ることが重要ですね。」

必要以上に雑菌を恐れることなく、梅雨の晴れ間は元気に外遊び! そんなふうに雑菌と付き合いながら、健康的に梅雨を乗り切りたいですね。

お話を聞いたのは…

  • 藤田紘一郎先生

    テキサス大学留学後、金沢医科大学教授、長崎大学医学部教授などを経て、東京医科歯科大学医学部教授(国際環境寄生虫病学)。2005年より同大名誉教授に。寄生虫とアレルギーとの関連を疫学および免疫学的に研究、腸内環境と免疫の研究を続けるかたわら生態系から見た現代の人間社会のゆがみを追求している。著書に『笑うカイチュウ』(講談社文庫)、『「きれい好き」が免疫力を落とす』(講談社+α文庫)、『子どもの「免疫力」を高める方法』(PHP)、『アレルギーの9割は腸で治る』(だいわ文庫)ほか。

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ライター紹介

金子 陽子

1976年生まれ。3年間のOL生活を経てコピーライター、編集ライターの道へ。連日終電ときどき徹夜の会社員生活に限界を感じた36歳の夏、待望の娘を授かり、独立。いい歳をして人見知りながら人物インタビューは大好き! 大抵その人のファンになる。いまだに3歳の娘のお肉が赤ちゃんみたいにフニフニで癒される。

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