夏休みは、子供と向き合う時間がたっぷりですね。盆踊りや、実家に帰省してお墓参りをするなど、「命」の大切さを考えるとてもいい機会です。子供と命についてじっくり話をしてみませんか。今回は、「命の大切さ」を子供たちに伝えてくれる絵本について、千代田図書館の大塚さんにご紹介いただきます。
終わり方がハッピーエンドになっているかをチェックして

命をテーマにした絵本の中には、悲しいシーンや残酷なシーンを含むものが多く存在します。「何のためにそのような描写が必要なのかがはっきりしていて、最後に子どもが救いを感じられる内容のものを選ぶようにしましょう」と大塚さん。
はっきりと「命は大切なもの」と書かれてなくとも、命の始まりと終わりが周りに与える影響をわかりやすく描いているものなら、子どもの心にしっかりと「命の尊さ」の種がまかれることでしょう。
2〜3歳におすすめの絵本
あやちゃんのうまれたひ

6歳の誕生日が近づき、「うまれたときちっちゃかった?」と聞くあやちゃんに、「うまれたときのおはなしをしてあげようか」とお母さん。予定日を過ぎてもなかなか生まれず、お父さんお母さんのお腹に話しかけていたこと、みんなが生まれるのを待ちわびていたことを教えてあげます。そしてとうとう出産の日のお話へ…。
(作・絵:浜田 桂子 出版社:福音館書店 本体価格:800円+税 発行日:1999年1月)
<おすすめポイント>
あやちゃんの誕生を待ち望むお母さんお父さん、おばあちゃんおじいちゃんの様子から、命というものがいかに特別なものかということが、すっと心に入ってくることでしょう。自分が生まれたときも、生まれた日はもちろん、生まれる前からこんなにもみんなに愛され、喜びを与える存在だとわかることが、自己肯定感を強めてくれます。
3〜4歳におすすめの絵本
うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん

(作・絵:ディック・ブルーナ 訳:まつおか きょうこ 出版社:福音館書店 本体価格:700円+税 発行日:2008年9月)
大好きなおばあちゃんが亡くなりました。おじいちゃんもお父さんも、みんな大粒の涙を流して悲しんでいます。おばあちゃんは美しい棺に入れられ、苔のむした森の下で眠りつづけます。うさこちゃんは、たびたびお花を持ってその場所に行き、「おばあちゃん」と語りかけます。
<おすすめポイント>
周りの人の悲しみ、おばあちゃんの葬儀やお墓のこと。あえて感情を込めずに淡々と、おばあちゃんの「死」を描いた様子は、子どもに身近な人の死のとらえ方をわかりやすく教えてくれます。亡くなった後もおばあちゃんを想ううさこちゃんの姿が、死とは決してすべてが消え去ってしまうものではないことを気付かせてくれます。
4歳におすすめの絵本
ぼくからみると

(文:高木仁三郎 絵:片山 健 出版社:のら書店 本体価格:1400円+税 発行日:2014年7月)
夏休みのある日、昼下がりのひょうたん池。「池の中の魚から見ると…」「空を飛ぶとんびから見ると…」「自転車のしょうちゃんから見ると…」。周りに生きるたくさんの生き物から見たひょうたん池が、生命力あふれる力強いタッチの油絵で描かれています。
<おすすめポイント>
何気ない風景の中に数え切れないほどの命があり、同じ場所なのにそれぞれが違った世界を見ていることがわかります。自分の目の前にあるものだけではなく、色々な生物が共存してその景色が成り立っていることに気付くことでしょう。「他者の目線」は新鮮な驚きを子どもに与えてくれるはずです。
5歳におすすめの絵本
あなたがうまれたひ

(作・絵:デブラ・フレイジャー 訳:井上 荒野 出版社:福音館書店 本体価格:1300円+税 発行日:1999年11月 )
あなたが生まれる前の日に、動物たちは「あのこがくるよ」とその素晴らしいニュースを次々に伝え、地球も太陽も月も、みんながあなたの誕生を待っていました。あなたが生まれたその瞬間、みんなが歌いました。「まわる ほし ちきゅうへ ようこそ!」「あなたが うまれて とっても うれしい!」
<おすすめポイント>
すべての命は祝福されて生まれてくること、だからこそ大切なものなのだとストレートに訴えかける一冊です。自分の誕生が、家族だけではなく、地球や宇宙じゅうが大騒ぎをするほどのビッグイベントだったと気が付くでしょう。そのことが、同じようにして生まれる、他の命への優しさが芽生えるきっかけになってほしいですね。
6歳におすすめの絵本
さよならをいえるまで

(作:マーガレット・ワイルド 絵:フレヤ・ブラックウッド 訳:石崎 洋司 出版社:岩崎書店 本体価格:1400円+税 発行日:2010年6月)
愛犬ジャンピーの身にふりかかった突然の悲しい事故。ハリーはその事実を受け入れることができず、ジャンピーと一緒に寝ていたベッドで眠ることができなくなってしまいます。そんなハリーのもとにジャンピーが現れ、毎夜一緒に遊んで過ごしますが、ジャンピーの影が日に日に薄くなり少しづつ別れを悟るハリー。ジャンピーに「さよなら」を言うことはできるのでしょうか。
<おすすめポイント>
ジャンピーの死を通して、残された側の悲しみと、心を残したまま逝ってしまった側の悲しみの両方が描かれています。愛するものとの突然の別れをテーマにした残酷で悲しい話ですが、それを時間をかけて受け入れていくハリーの姿に希望も感じることができます。「生」と切り離せない「死」をを乗り越えた先には、思いやりの心が育っていくのです。
大人にとっても難しいテーマだけに、絵本を読んだ後、子どもが「命」についてどのように感じたかを聞きたくなりますよね。大切なことであるがゆえに、「こう感じてほしい」と大人は教えたくなるものです。
しかし、そこはグッと我慢して! 絵本から子供が感じ取ったものをそのまま心にしまわせておいてあげましょう。大人の求める答えを引き出そうとせずとも、その心にまかれた種は、必ずや成長とともに豊かな心を作ってくれるのですから。
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