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子どもの夢応援企画 第16回:スノーボーダー 橋本通代さん

掲載日: 2017年1月12日更新日: 2017年1月12日石橋 夏江

子どもたちの憧れの職業について、その道のプロからお話を伺い、子どもたちの夢の育みをサポートする『子どもの夢応援企画』。今回は雪山をカッコよく滑りジャンプを決める「スノーボーダー」。スノーボード日本代表としてソルトレイク五輪に出場し、現在はキッズスノーボンドキャンプ「KIRARA KAMP」を主宰している橋本通代さんにお話を伺いました。

24歳でスキーから転向。これが人生の転機に

橋本さんがスノーボードと出会ったのはなんと24歳。本人も「遅いですよね」と笑うように、選手としてはかなり遅めのスタートでした。それでも懸命に世界を目指そうと練習を積んだのは「好きなことを頑張れ」と後押ししてくれたご両親の応援があったからだといいます。

「日本語の教師になりたくて大学に進学したのですが、自分のイメージと違っていてあっさり諦めてしまったんです。そんな時にハマったのが、当時流行っていたスキー。友だちと旅行感覚でスキー場に通ううちに、すっかり夢中になってしまって。」

「もともと運動音痴だったんですが、スキーだけは人から褒めてもらえて。それがすごくうれしくてもっともっと上手くなりたいって思ったんです。当時は『自分はスキーで有名になろう』と思っていましたね。」

決めたら一直線の性格な橋本さん。大学を卒業後はアルバイトに打ち込み、留学資金を貯めました。そして24歳の時、スキー修行のためにカナダへ。そこでスノーボードと運命的な出会いを果たします


導かれるようにカナダで出会ったスノーボード

カナダでモーグルスキーの基礎を学ぼうと思っていた橋本さんですが、現地に行ってすぐスキーの世界レベルの高さと競技人口の多さを思い知ったそう。ホストファミリーのすすめもあって、思い切ってスノーボードへの転向を決めました

「今思えば、本当に導かれるようにスノーボードを始めた感じです。年齢的にも後がないと思っていましたし、心配をかけた親のためにも、絶対に世界に通用するスノーボーダーになろうと決めました。」

スノーボードに転向後は日本と海外を行き来しながら経験を積み、急成長を遂げます。

帰国後はスクールに勤務しながら、プロ資格を取得

「帰国後は白馬の岩岳スノーボードスクールに在籍して、練習しながら国内の大会に出るようになりました。スポンサーはついていたんですがお金はほとんど出ていなかったので、スクールで子どもたちを教える仕事もしました。この時に初めて『スノーボードの教え方』というものを学びましたね。自分が滑るのと教えるのは全然違っていて、すごく勉強になりました。この時の経験が今の仕事にも繋がっていると思います。」

練習、仕事をこなしながら国内で行われるJSBA(日本スノーボード協会)主催・公認の大会に出場。プロの方から推薦を受けて初めて出場したプロツアーで優勝し、スノーボードへ転向して3年目でプロ資格を取得しました。

「今思えば、あの頃が一番楽しかったですね。スノーボード仲間がたくさんできて、みんなと滑っているうちにどんどん上達して。いつも滑りたくて仕方がなかった。4年目からはワールドカップで世界中を回る中で、新しい出会いもたくさんあって。体力的にはキツかったんですけど、本当にかけがえのない時間だったなと思います。」


転向後6年で五輪出場!しかし五輪後、最大のピンチに

大切な仲間と滑ることができる喜びを感じていた橋本さんですが、その頃一番大変だったのはワールドカップを回るための資金集めだったといいます。

「プロとはいえ、スポンサー料だけではシーズンを通して戦えないので、オフシーズンにひたすらアルバイトをして遠征費を稼いでいました。ワールドカップとなるとそれでも足りないので、地元に後援会を作ってもらい寄付金を募ってもらいました。私も母とさまざまなところに挨拶に行き、たくさんの人の応援のおかげで世界を回ることができました。」

「私の場合はその後、ナショナルチームで遠征費を負担してもらえたり、スポンサーの支援を受けられたのでお金の心配をせずに、競技に打ち込めるようになりましたが、プロになっても大きな大会で成績を残して賞金を得たり、スポンサーがつかないと収入はありません。今もスノーボードだけで生活できる選手はほんの一握り。そういう意味ではかなり厳しい世界だと思います。」

そして、資金面の問題をどうにか乗り越えてワールドカップで結果を残し、2002年のソルトレイク五輪に日本代表として出場を果たします

五輪後には燃え尽き症候群に…

「五輪は夢のようなすばらしい体験でした」という橋本さんですが、帰国後はこれまでお世話になった人に恩返しがしたいという気持ちから「これからは人のために滑らなければ」と自分を追い込み過ぎて、心のバランスを崩してしまいました。そんな時、集中できないまま大きなジャンプに挑戦したことで、脊椎損傷の大ケガをしてしまいます。

「ケガをして入院してまず思ったのが『もうこれで滑らなくていいんだ』ということでした。それくらい追い詰められていたんですね。その時は心も体も休めてスノーボードを一切やめたんです。それ以降は頑張り過ぎるのをやめました。」

手術、リハビリをして少しずつ心と身体の健康を取り戻した橋本さんが次にやりたいと思ったこと。それは、「子どもと関わること」でした。

大ケガを経て見つけた「新しい夢」

橋本さんが始めたのが、子ども向けのスノーボードキャンプ「KIRARA KAMP」です。

「『キラキラ輝く子どもを育てる』というのが一番の目標で、そのための教材がスノーボードという感じです。そうして教材として使う中で、スノーボードをもっと誰もが簡単に安全にできるものにしたいと思うようになりました。」

今はスノーボードを、誰でも楽しく安全に始められるものにするということに燃えているんです。初心者や親子で一緒に乗るためのグッズを作ったりするのがすごく楽しいんですよ。競技生活は引退しましたが、今度はそういったグッズを考え出して、その道でまた世界進出をしたいと思っているんです(笑)。」


子どもたちの素朴な疑問に渡辺さんがお答え!

ここで橋本さんに、子どもたちから寄せられた3つの質問にも答えてもらいました。

寒いのが苦手でもなれますか?

「私も寒いのは苦手…。今でもすごく寒がりなので5枚〜6枚は着こんでいますよ。スノーボードは着るものの規制がないので何枚重ね着してもOK。薄いものを何枚も重ね着して、汗をかいたら脱いで調節するのがおすすめです。寒さが苦手でも大丈夫! 温かくして楽しんでください。」

ケガをするのは怖くないですか?

ジャンプを飛びたい気持ちの方が強くて、ケガをすることはあまり頭にありませんね(笑)。やっている時は、カッコつけたいとか、人よりも高く飛びたいということばかり考えています。毎日練習して、小さな“できた”を積み重ねていくと、どんどん上手くなって、ジャンプ台も少しずつ怖くなくなりますよ。」

雪が降らない時はどんな練習をしていますか?

私が選手の頃は、4月〜8月の日本に雪がない時期は海外に行って滑っていました。9月〜10月のオフシーズンはジムでのトレーニングを中心にして、11月からまたシーズンが始まる感じでした。今は雪がなくても練習できるジャンプ台や施設が国内にもたくさんできていますから、そういったところで練習する人も多いですね。」


どんなことでも自分の好きなことを見つけて取り組んで!

最後に、橋本さんからスノーボードを頑張る子どもたちにメッセージをいただきました!

「まずは、自分の好きなものを見つけること! それに夢中になって取り組んで、頑張ることが、人生にとってすごくいい経験になるはずです。」

「私自身は、スノーボードをやったことで世界中を旅して、すごくいろいろな事を学べたし、たくさんの人とつながることができました。そういうたくさんの学びや出会いがあるので、ほかのスポーツでもスポーツ以外の何かでもいいから、一生懸命に取り組んでみてください。」

「あと、子どものうちは、幅広く様々なことに取り組むことが大切だと思います。ほかのスポーツをやったり、もちろん学校の勉強もしっかりやらないといけません。協調性や礼儀といった人間力を養うことも大事だと思いますよ。」


橋本さん、貴重なお話をありがとうございました。『子どもの夢応援企画』第17回は「パン職人」です。お楽しみに!

橋本さん親子に挑戦しよう!第2回チキチキちびっこレース

2017年3月4日(土)に「軽井沢スノーパーク」で開催される、ちびっこ向けスキー&スノーボードのレースに、橋本さん親子の出場が決定! 五輪経験者であるスノーボーダー・橋本さんに挑戦するチャンスです。参加無料&参加賞もあるので、ぜひスノーボード大好きキッズは参加してみてくださいね^^

「第2回チキチキちびっこレース」の詳細はこちら

お話を聞いたのは…

  • 橋本通代さん

    大阪府寝屋川市出身。軽井沢在住。24歳の時にスキーを学ぶために渡ったカナダのウィスラーでスノーボードと出会い、転向。ソルトレイク五輪にスノーボードハープパイプ日本代表として出場する。選手を引退後は、スノーボードを通してキラキラ輝く子どもを育てる「KIRARA KAMP」を主宰。スノーボードに初めて触れる子どもから世界を目指す子どもたちまで、キッズスノーボーダーの育成に取り組んでいる。

  • KIRARA KAMP

ライター紹介

石橋 夏江

編集プロダクションverb所属。編集者・ライター。趣味は、旅行と写真とスキューバダイビング。プライベート旅でも、取材旅以上の分刻みスケジュールを組むため、友達がなかなか一緒に旅行に行ってくれないのが最近の悩み…。

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