下痢や腹痛、嘔吐などをもたらすウイルス性の「感染性胃腸炎」。その原因としてよく知られているのが、ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルスの3大ウイルスです。なかでもアデノウイルスは、季節に関係なく発症する子どもにとって身近なウイルス。今回は、北浜こどもクリニックの北浜直先生に「アデノウイルス胃腸炎」について伺いました。
感染性胃腸炎の原因3大ウイルス「ノロ・ロタ・アデノ」

感染性胃腸炎の原因としては、アデノウイルスのほかにも、ノロウイルス、ロタウイルスなどがよく知られていますね。それぞれどんな違いがあるのでしょうか?
「季節性があるノロウイルス、ロタウイルスと比べて、アデノウイルス胃腸炎は年間を通して発症するのが特徴です。」
アデノウイルス
年間を通して発症。発熱や嘔吐は軽めで、下痢が1〜2週間続く。喉の痛みや目の充血などを伴うことがある。
ノロウイルス
秋〜冬にかけて流行。症状は嘔吐、下痢、腹痛、発熱など。症状が続く期間は2〜3日程度。
ロタウイルス
冬〜春にかけて流行。症状は嘔吐、下痢、腹痛、発熱など。便の色が白っぽくなることがある。症状が続く期間は5〜6日程度。
「いずれも主な感染経路は飛沫感染と接触感染。とくにアデノウイルスは感染力が強いので注意が必要です。感染を防ぐためにできるのは、うがいと手洗いを習慣づけること。そしてマスクの着用も有効です。」
型によって様々な症状を引き起こす「アデノウイルス」
一言で「アデノウイルス」と言っても、さまざまな種類があるため、そのすべてが胃腸炎を引き起こすわけではないそうです。
「アデノウイルスは小さな子どもに感染しやすく、咳や鼻水など一般的に“風邪”とされる症状をはじめ、胃腸炎・結膜炎・膀胱炎など、様々な症状を引き起こします。アデノウイルスには50種類以上の型があり、それぞれ症状が異なるのが特徴です。型の種類が多いため、免疫がつきにくく何度でも感染します。」
このように、アデノウイルスに感染した際の症状はウイルスの型によってさまざま。例えば、夏場にプールで感染することが多い「プール熱(咽頭結膜熱)」も、アデノウイルス(主に3型)によるものです。
「アデノウイルス胃腸炎を引き起こすのは、40型・41型ウイルスで『腸管アデノウイルス』と呼ばれています。3歳以下の乳幼児に発症することが多く、微熱や喉の痛みのほか、1週間〜2週間の長期にわたって水っぽい下痢が続くことがあります。」
通常は軽く済むことが多いアデノウイルスによる下痢症状ですが、新生児、乳児の場合は重症化することもあるそうです。そこで、アデノウイルス胃腸炎のホームケアのポイントを伺いました。
自宅で安静に こまめな水分補給で脱水症状に注意を!

「アデノウイルス胃腸炎には有効なワクチンはありません。吐き気止め、下痢止めなどで対症療法をし、自然治癒を待つことになります。自宅で安静に過ごし、症状が落ち着くまでは水分以外の食事を控えましょう。胃腸をしっかり休めることで、回復が早まります。回復してきたら、最初はおかゆなど、胃腸に負担をかけないものから少しずつ始めていくのが望ましいでしょう。」
小さな子どもは、とくに下痢や嘔吐による脱水症状を引き起こしやすいので注意が必要なのだそう。
「脱水症状を避けるために、経口補水液でこまめな水分補給をしてください。一度にたくさん飲ませると吐き出してしまうこともあるので、何回にもわけて少量ずつ飲ませてあげるといいですよ。」
北浜先生によると、吐物などの処理には塩塩素系漂白剤を使うといいのですが、そこにこだわって処理が遅れるよりも、とにかく素早く洗うことが大切とのこと。また、おむつをしている場合はこまめに取り替え、ビニール袋に入れてしっかり口を閉じて処理するといいそうです。
下痢が長引くアデノウイルス胃腸炎。気になる症状があれば、自己判断せず必ず医療機関を受診しましょう。