子どもたちの憧れの職業について、その道のプロからお話を伺い、夢の育みをサポートする『子どもの夢応援企画』。今回は、「保育士」です。「いこーよ」で子育てのコツに関する人気連載を担当し、イケメン保育士としても話題のてぃ先生にお話を伺いました。
てぃ先生監修記事もあわせてチェック!男性への門戸が狭い中でも諦めず大好きな保育の道へ
幼いころから「子どもと接する専門的な仕事に就きたい」と思っていたという、てぃ先生。
「昔から妹や近所の子どもの相手をするのが大好きだったんです。父が毎日しんどそうに出勤していくのを見て、自分は好きな分野で楽しく働きたいと思っていました」
高校卒業後は保育士を目指すことに決めましたが、保育士は女性が多く、男性は少ない業界。そのため、保育士になりたいと伝えると、先生や友達からはかなり驚かれたそうです。
てぃ先生が保育士を目指した十数年前は、今よりもさらに男性保育士が少なく、保育士資格を取得できる大学や短大、専門学校の生徒募集も女子学生限定のところがほとんどだったとか。
「限られた選択肢の中から2年制の保育士養成校に進みましたが、入学式の会場で一瞬『辞めたい』と思いました(笑)。前後左右、どこを見ても女性ばかりで、とんでもない世界に来ちゃったなと。実習先の保育園でも男性用のトイレがなかったり、男性更衣室がないから倉庫で汗だくになって着替えたり…。環境的には恵まれていませんでした」
実習を通じて「理想の保育」を見つけることが大切
それでも保育士になるという気持ちは揺るがなかったそう。同じく保育士を目指す男友達と励ましあいながら、少しずつそうした環境に慣れていったそうです。
「養成校時代は授業や課題で常に忙しい毎日でした。2年次の半分は保育園での実習で体力的にも大変でしたが、今思えばいろんな園をのぞいて自分なりの『理想の保育』を見つける貴重な機会になりました」
「保育士の就活は、実習に行った園の中から就職先を選ぶことが多いんです。働きだしてから自分の理想と違うと後悔しないためにも、実習でいろいろな園を見て『こんな保育がしたい』というイメージを漠然とでも持っておくことが大切だと思います」
正解のない仕事だからこそ子どもとの関わりを大切に
養成学校を卒業後、保育士としてこれまで4つの保育園に勤務してきたてぃ先生。10年間の保育士生活の中で、子どものありのままの姿を認め、何事も「子どもに任せる」保育を大切にする姿勢が育まれたと言います。
「たとえば『今日はおままごとをします!』と言ってやらせるのは大人の強制ですよね。でも、園児たちが登園する前にお皿や野菜をまるで誰かが遊んでいたかのように置いておくと、子どもたちは自分からおままごとを始めるものなんです」
「子どもに選択肢を与えることで大人の思い通りに進まないこともあるけど、うまくいかなかったら『じゃ、次はこうしてみよう』と大人がやり方を工夫すればいい。僕は子どもたちとのそういう駆け引きも楽しんでいます」
保育の仕事はどのやり方が正解かが決まっていない、いわば「マニュアルのない仕事」。子ども一人ひとり違う人間だからこそ、接し方やアプローチも変えなくてはいけません。それが難しさであり、やりがいでもあるそう。
「Aちゃんには通じてもBちゃんではうまくいかないってことは多々あります。アプローチ方法は1つではないので、その子の個性を大事にしながら、合う方法を見つけていくことが大切ですね」
子どもを育てることは「未来の社会を育てる」こと
また、保育士の仕事の本質は、単純に子どもと楽しく遊ぶことではなく、遊びを通して子どもを育てることにあるそう。
「保育士の仕事って、ただ子どもと遊んでいるだけみたいに見えますけど、遊びの中に実はたくさんの『狙い』があるんです。かけっこなら『脚力をつける』『バランス感覚を磨く』『競争心を育む』…などいろいろ。その子自身のやる気や努力と保育士からの働きかけがうまく噛み合って、子どものささやかな成長を感じられたときは『ああ、良かったな〜』と心から思います」
そして、人を育てる保育士の仕事は社会を育てることにも繋がります。
「最初に受け持った子どもたちが、今はもう中学生なんですけど、その子たちがやがて大人になって、社会を動かす一人になるわけですよね。大げさに言えば、『子どもを育てる』イコール『未来の社会を育てる』って感覚が僕にはあって。幼児期に育まれた感性が、後々まで影響しますからね。そこが一番のやりがいかな」
「将来、多くの仕事がロボットに奪われると言われていますが、「人を育てる」のは人間でしかできないこと。保育士って未来のある仕事ですよ!」
子どもたちの素朴な疑問に、てぃ先生がお答え!
ここで、てぃ先生に子どもたちから寄せられた3つの質問に答えてもらいました。
子どもに言われてうれしかったことは何ですか?
「やっぱり『先生、大好き!』ですね。男の子も女の子も、ふとしたときに言ってくれるんですよ。もうダントツにうれしいです!」
お昼寝のときは何をしていますか?
「パパママへの連絡ノートを書いたり、その日何をやったか記録する日誌を書いたりしています。お昼寝後の活動の準備やおやつの用意もしますね。あとは交代で休憩に出ています」
一番好きな遊びはなんですか?
「おままごとかな! どんな役でも真剣です。レストランごっこでお客さん役なら、急いで食べて『ごちそうさまでした!』とお皿を返す…なんてしません! 『本当のお客さん』みたいにゆっくり料理を味わって、お皿を下げてもらうまで待ちます(笑)」
みんなが憧れる「理想の保育園」を作りたい!
保育の素晴らしさを広く発信するために、2年前からTwitterで保育園での日常を投稿しているてぃ先生。今では各種メディアや講演会にも呼ばれ、育児に悩むパパママや現場で奮闘する保育士に向けて、子どもも大人もハッピーな保育を提唱し、大きな反響を呼んでいます。
「ただ、話だけで伝えるのには限界があるもの。だから見えるカタチとして、近い将来、自分の保育園を作りたいなと思っていて。子どもが自ら楽しめる、毎日行きたくなる、テーマパークみたいな園が理想です。また、保護者との連絡ノートの代わりにスマホを活用したり、オムツを園で用意したりといった取り組みも考えています。毎日頑張っているパパママの負担を、少しでも減らしたいんですよね」
保育士の夢を広げるために
さらに、保育士の環境改善や「保育士たちに夢を持ってほしい」という強い願いもあるそうです。
「保育士って、一生現場か主任や園長になるか…くらいしか将来の選択肢がないんです。それも良いけれど、一人ひとりの能力を活かして大きな夢を描くのが難しい。教育制度が整っていないという課題もあるので、身につけた知識や技術を発信して『保育のスペシャリスト』として幅広く活躍できる保育士を育てたいと思っています。理想的な就労環境も整えて、自分たちの手で『保育士は重労働で低賃金』というイメージを変えていきたいです」
目指すは「保育業界のメジャーリーグ」! いい人材を育てていけば、より良い保育を子どもたちに提供できると言います。
不器用でもOK! 自分の好きや得意を活かせる保育士へ
最後に、てぃ先生から保育士を目指す子どもたちにメッセージをいただきました!
「決まったお友達だけじゃなく、いろんな子と楽しく遊んで、その子がどんなことを考えているか、人の気持ちを学んでおくといいですよ。もしピアノやお絵かきが苦手でも大丈夫。実は僕も絵は苦手なんです…(笑)。自分の得意を伸ばして、それを子どもに伝える力を身につけてくださいね」
てぃ先生、貴重なお話をありがとうございました。10月から「いこーよ」ではてぃ先生が読者のお悩みに答える新連載をスタート予定です。子どももパパママもハッピーになれる子育てをてぃ先生にアドバイスしてもらいましょう。
『子どもの夢応援企画』第23回は「歌手」です。お楽しみに!
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