子どもたちの憧れの職業について、その道のプロからお話を伺い、子どもたちの夢の育みをサポートする『子どもの夢応援企画』。第11回は、子どもたちの最も身近な職業「教師」! 今、そのユニークな教育法からMC型教師と呼ばれ注目の沼田晶弘さんにお話を伺いしました。
“教師になる”なんて思いもしなかった子ども時代

学校で子どもたちの勉強や生活を幅広くサポートする学校の先生。毎日その姿を近くで見ている子どもたちにとっては、最も身近で憧れる職業のひとつかもしれませんね。ただ沼田先生の場合は、全くと言っていいほど教師という仕事に興味がなかったと言います。
「子どもの頃は先生に対する憧れは一切なかったです。むしろ逆だった(笑)。全然、優等生じゃなかったんで、しょっちゅう怒られてましたし。それに僕、実は子どもが苦手だったんです。それがあるから、子どもを子どもとしてではなく、一人の人として接する、今のようなスタンスになったんだと思います。子ども好きではなかったらこそ、一人ひとりを冷静に客観的に見ることができるのかもしれませんね。」
「だからもし、先生になるには子ども好きじゃなきゃいけないとか、優等生で勉強が得意な人がなるもの…と思っている子がいるなら、そんなことないって言いたいですね。だって、僕自身が全然そんな子どもじゃなかったんですから。」
来た球を全部打ち返してたら、いつのまにかこうなってた

沼田先生は、教員養成課程のある大学で教員免許を取得後、アメリカへ留学してスポーツ経営学を学び、帰国後に大学職員や塾講師を経て、現在の学芸大学附属世田谷小学校で教師になったという、異色の経歴の持ち主です。その経緯とは?
「簡単に言うと、自分の前に現れた現象を捉え続けてきたらこうなったんです。来た球を全部打ち返していたというか。様々な人との出会いや、たまたま転がり込んできた留学のチャンス、そんな来るものを拒まずに受け入れていたら、教師という職業にたどり着いた感じです。勉強は嫌いだったけど、知らないこともとりあえずやってみる、知ったかぶりをしないということは心がけていました。もともと優等生じゃないから、人に聞くことがあまり恥ずかしくないんですよ。その点はバカ育ちで良かったなぁって思います。」
美人講師との出会いとアメリカ留学が転機に
勉強嫌いだった沼田先生にもある時、勉強モードになる時期が訪れます。それは大学受験とアメリカ留学の時でした。
「大学は『とりあえず行っておこうかな』くらいの気持ちで受験したんですが、受けた大学は全滅…。そこで僕の予備校生活が始まりました。僕は特に英語が苦手だったんですけど、その予備校にすごく美人の英語の先生がいて(笑)。おかげで勉強を頑張れたし、成績もぐっとあがりましたね。その成果と、二次試験の受験科目が体育のみという教員養成課程に狙いを定めたことで無事に大学に合格することができたんです。」
その後、縁あって留学したアメリカで苦労したのが「言葉の壁」。
「向こうに行ってみると小学校1年生とか2年生くらいの子どもが、自分よりも全然上手に英語を話してるんです。さらに、テレビでアニメの『ドラゴンボール』をやってたんですが、悟空まで英語がペラペラじゃないですか(笑)。それがもう衝撃で。現地のホストファミリーに助けてもらいながら、必死に英語を勉強しました。多分、人生で一番勉強したと思います。」
「勉強はもちろんですが、アメリカに行って良かったなと思うのは、どんな人とも一人の人として分け隔てなく付き合えるようになったこと。世の中にはいろいろな考え方や文化、性格を持つ人がいて、たとえそれを理解できないとしても『そういう人もいるんだなぁ』と考えられるようになりました。それは今も一緒で、子どもは一人ひとり性格も違えば家庭環境も違います。それにいちいち驚かず、こういう子もいれば、ああいう子もいるんだと思えるようになりましたね。」
教師の仕事はみんなが思うほど大変じゃない!
その後、アメリカから帰国し、大学職員や塾講師などをしていた時に今の学校から声がかかり、ついに小学校教師の道を歩み始めることになったそう。
「よく『小学校の先生ってやることが多くて大変でしょ』って言われるんですけど、正直あまりそう思ったことはないです。僕はどんどん子どもたちに任せちゃうんで。例えば掃除を手伝わないので、子どもたちは自分で考えて動くようになります。自分の勉強にもなるからと漢字テストの丸付けを率先してやってくれる子もいるんですよ。そうすると、自然と僕は暇になる訳です(笑)。」
こうやってどんどん子どもに任せていくことが子どもの成長にも繋がると沼田先生。
「お父さん、お母さんは『子どもだから』と手を出して学習のチャンスを奪ってしまっていることが多いと思うんです。できるかどうかは、まずやらせてみないとわからないじゃないですか。一生懸命やって失敗するのは仕方ない。ギリギリまで口を出さず、いざとなったら助けてあげる。そういう距離感で見守ってあげることが大切。何でも任せてあげれば、大人が思っているよりもずっと子どもは自分でいろいろなことができたりするものなんです。」
元教え子たちと酒を酌み交わす!それが今の夢
「先生の仕事をしていて一番うれしいのは、子どもができなかったことをできるようになったり、自分の居場所をクラスの中で見つけられるようになること。それから、子どもは素直で反応がいいから面白いなって思いますね。大人みたいに思ったことを隠したりしないでしょ。だから信頼関係が作りやすいんです。」
「あと10年くらいして、元教え子からひっきりなしに『飲みに行こうぜ!』っていう誘いがきてたらうれしいですね。今から楽しみにしてるんです。」
子どもたちの素朴な疑問を沼田先生が解決!
ここで沼田先生に、子どもたちから寄せられた3つの質問にも答えてもらえました。
Q.苦手な教科はどうしたら好きになれますか?

「苦手な教科を無理に好きになる必要はないと思います。その分、好きな教科や得意な教科をもっともっと伸ばしてあげましょう。だけど、苦手な教科を全くやらないというのはダメですよ。『苦手』を『好き』に変えるのは難しいけど、『普通』って思えるくらいには頑張ってみましょう。」
Q.子どもの頃から勉強は得意でしたか?

「勉強は全然得意じゃありませんでした。子どもの頃は、水泳やってた記憶しかないです(笑)。僕は勉強は得意、不得意でやるものではないと思います。知りたいことがあればとことん調べればいいし、知ることが楽しいと思えればどんどん学べばいい。得意、不得意よりも、知りたい!楽しい!という気持ちを大切にしてみてください。」
Q.おすすめの勉強法はありますか?

「勉強法というか…、教科書のおかしいところを探してみてください。実は問題文にはいろいろとおかしなところがあるんですよ。例えば『1リットルのオレンジジュースを2デシリットル飲みました。残りは…』って、普通、オレンジジュースを量って飲んだりしませんよね。そんなふうにおかしなところを探して教科書を一生懸命読んでいるうちに、自然と知識が身に付きますよ。」
ぜひ勉強する意味を教えられる先生に!
最後に将来、先生を目指す子どもたちにメッセージをいただきました。
「人間にはやる気が標準装備されていると僕は思っています。それを最大限に引き出すポイントは、なぜそれをやるのかを理解すること。だから、もしみんなが先生になったら、何で勉強するのかを教えたり、気付かせてあげられる先生になってほしいです」
沼田先生、貴重なお話をありがとうございました。『子どもの夢応援企画』第12回は「歌手・タレント」です。お楽しみに!
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