冬は乾燥する季節。手荒れに悩んでいるママも多いのではないでしょうか。なかでも、日々の台所での水仕事による手荒れは気になるところ。そこで今回は、手荒れの原因から食器用洗剤の適量や正しい使い方、上手な食器洗いの手順などについて、「ライオン株式会社」リビングケアマイスターの杉本美穂さんにお話を聞きました。
手荒れの原因ってそもそも何?

手荒れに悩む人は非常に多いですが、そもそも原因は何なのでしょうか。
「皮膚が乾燥することによって角質がめくれ上がり、そこから水分が逃げてカサカサになるのが手荒れのメカニズムです。特に冬場は空気が乾燥しているので、何もしていなくても手荒れが起こりやすいですね」
「手を水につけて出すという行為だけでも、皮膚の脂分が奪われる『脱脂』が起こるのですが、冬は水が冷たく、お湯を使うようになるため、より脂分をとられやすくなります」
「さらに、食器洗いをする場合は脱脂に加え、洗剤の中に含まれる成分により、手肌のたんぱく質に影響を与える『たんぱく変性』という現象が起こることがあります。この2つのダメージが、食器洗いをしたときに起こる手荒れの主な原因です」
水やお湯につけるだけでも手荒れの原因になり、乾燥する冬はとくに注意が必要とのことです。
洗剤によって手荒れに差は出るの?
手荒れの原因が脱脂とたんぱく変性であることがわかりました。それでは、食器用洗剤の種類によって手荒れに差は出るのでしょうか。
「洗剤の成分のひとつとして『界面活性剤』というものが入っています。洗剤容器の裏に書かれている成分を見てみると、さまざまな成分名がカタカナで書かれています。これらの働きによって汚れを落とすのですが、ものによっては手荒れの原因になったりすることもあります」
では、どの成分が多いと手荒れしやすいのでしょうか。
「現在は各メーカーでさまざまな研究が進み、手肌にやさしいものを開発しています。ですから、どれが手荒れの原因になるというわけではありません。同じ理由で、○○無配合、無香料だから食器洗いの時の手荒れを防ぐ洗剤というわけでもないのです」
イメージとして「汚れが良く落ちる=手荒れしやすい」、「手肌にやさしい=汚れが落ちにくい」と感じている人も多いかもしれませんが、実はその差はほとんどないのだそうです。
食器用洗剤の適量と正しい使い方

では、食器用洗剤の適量や正しい使い方を教えてください。
「原液をそのままスポンジにつけて使用する場合は、1円玉くらいの量を出して使うのが適量です。スポンジに少し水を含ませてから洗剤をつけてください」
洗浄力が増すような気がしてたっぷりと洗剤をつけて泡立てている、という人もいると思いますが、実際はどうなのでしょうか。
「泡がたくさんある方が落ちると感じている人もいるようですが、泡だらけにする必要はありません」
「薄めて使う場合は、使うときに使う分だけ薄めてください。あらかじめ水で薄めた液を作り置きしてしまうと、洗剤の防腐力が落ち雑菌が増殖することがあります。絶対にしないでください」
また、原液で使う場合には炊事用手袋を使用することを明記しているそうです。とくに乾燥する冬場や手肌が弱い人、子どもなどは、炊事用手袋の使用をおすすめしますとのことでした。
「手早く」「上手に」「節水しながら」洗い物を済ませる5つのポイント

毎日行う食器洗い。手肌のためにも、水やお湯に触れている時間はできるだけ短いに越したことはありません。手早く上手に、しかも節水にもつながる洗い方のポイントを5つ紹介します。
1.食器の油汚れをヘラなどで落とす
汚れを広げないために、ひどい汚れは洗う前にヘラなどを使って落としておきます。このとき落とした汚れは、そのまま流して捨てるのではなく、キッチンペーパーなどでふき取ってゴミとして処分するようにしましょう。シンクや排水口の汚れを防ぐだけではなく、環境保護にもつながります。
2.洗う順番は汚れの少ないものから!
汚れ移りを防ぐために、汚れの少ないものから洗うようにします。また、時間短縮のためにひとつずつ洗ってすすぐのではなく、まとめて洗ってまとめてすすぎましょう。
3.すすぎには洗い桶などを活用
すすぎのときに洗い桶や大きなボウルなどを使わないと、出しっぱなしにしている水がもったいないです! すすぐ食器をまとめて洗い桶やボウルに入れておけば、1つの食器をすすいでいるときも洗い桶が水を受け止め、桶の中にある別の食器の洗剤も取れるため、すすぐ時間が短くなります。
4.すすぎは水切れが早いお湯で
お湯を使ってすすぐと水切れが良くなり早く乾くので、ガラスなどの食器に水滴あとが残りにくくなります。
5.手ぎわよく水切りかごに入れる
すすぎ終わったあと「食器を水切りかごに入れようとしたのに置く場所がない」と、もたついていると、その間に流している水が無駄になってしまいます。同じ大きさ、同じ形のものを続けてすすぐなどして、水切りかごに入れやすいような工夫をしましょう。
水切りかごの中で食器がピッタリ重ならないように隙間を空けたり、斜めにしたりするとより水が早く切れます。また、水切りかごがいっぱいの場合は、なかにある食器を一度拭いて片付けましょう。今は水切れが早い洗剤などもあり、拭く時間も短縮できます。
杉本さんが実際に試したところ、洗い桶などを使ってすすぐと、時間が短くなった上に通常の約4割も節水になったそうですよ! ぜひこの洗い方を試してみてくださいね。
食器洗いは親子のコミュニケーションにもピッタリ!

「子どもに食器洗いなんて、教えるのも大変だし、まだ早いんじゃないかな…」と思っている人も多いのではないでしょうか。ですが、実は絶好のコミュニケーションの場になるとのこと。
「食器洗いは親子が一緒にできるお手伝いです。最初のうちは、お母さんが食器を洗って、子どもは横で達成感が得られやすいすすぎを担当する、というようなパート分けもできます。同じ場所に立って同じことをするので、子どもと話しながら楽しくできますよ」
「子どもは意外と食器洗いが好きなんです。やっているうちに、うまくできるような工夫を自分なりに考え出したりもします。泡と水を使うので、子どもにとっては水遊びに近い感覚なのかもしれませんね」
まずは遊び感覚で始めるのが良さそうですね。さらに、親子で楽しく食器洗いするためのポイントを3つ教えてもらいました。
1.場を整えてあげる
洗う場所を確保するためにシンク内を整理し、洗った食器を置く場所も用意しておきます。高さを調節するための踏み台や、子どもが使いやすいスポンジ、炊事用手袋などの道具も忘れずに。
2.ステップを踏む
食器を運んだり、すすぎだけしたりと、簡単なことから始めます。自分で使った食器や割れない食器などが洗えるようになったら、徐々に難しいものに挑戦させてあげましょう。どんどんできるようになると、子どもの自信につながります。
3.終わった後は感謝の気持ちを伝える
食器を洗い終わったら、しっかり褒めてあげましょう。感謝の気持ちを伝えることで、子どもは自分が役に立っていると感じることができます。これが「またやってみよう!」という気持ちに繋がります。
子どもに食器洗いをお願いするときのポイントは?今はまだ難しくても、できることから少しずつやらせてあげましょう。子どもと一緒にキッチンに立つことは、きっと親にとっても楽しい時間になるはずです。
「これは小学生の女の子の話ですが、仕事で帰りが遅いお母さんのことを気遣って、自分のお弁当箱を自分で洗ってくれていたそうです。『時間があったからやってみたの。この間やったからできると思って』と。今からお手伝いをしてもらっていれば、大きくなってこんなうれしいことがあるかもしれませんね」
今は技術の進歩や各メーカーの研究などにより、食器用洗剤は手肌にやさしいものがほとんどだそうです。ただ乾燥しやすいこの時期は、炊事用手袋を使用したり、食器洗いのあと手をよく拭き、クリームを塗ったりなど、手のケアをすることも大切とのこと。なるべく食器洗いの時間が短くなるような工夫をして、手荒れから手肌を守りましょう。