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103万の壁&130万の壁って何? 知識ゼロでもわかる「収入の壁」

掲載日: 2018年3月6日更新日: 2018年3月6日岡本有紗

マネーのプロが解説する「お金と子育て」の話。第13回は「ママの収入」についてです。現在またはこれからパートなどで働くママなら、税金などの支払いが発生する「収入の壁」は気になるもの。とはいえ、壁を越えないような働き方は本当に得なのでしょうか? 

どのような壁があるのか、各壁の条件や負担の内容などとあわせて、専門家の意見を紹介します。

収入の壁とは「税金の壁」と「社会保険の壁」

収入面に関係する「〇〇の壁」にはどんなものがあるかおさらい!

お話を聞いたのはファイナンシャル・プランナーの小川千尋さんです。

よく「○○円の壁」という言葉を聞きますが、具体的にはどういうものなのでしょうか?

夫婦の一方が会社などで働き、もう一方がパートやアルバイトとして働いている場合、後者の年収がある一定以上になると税金面などでの優遇が受けられなくなります。その境界線となる金額が、一般に『○○円の壁』と呼ばれています

「この壁はひとつではなく、大きく分けると所得税や配偶者控除といった『税金の壁』、社会保険料を自分で払う必要が生じる『社会保険料の壁』があります。その『壁』の金額は次の通りです」

(1)103万円の壁

税金の支払いが発生する境界線です。これ以上の年収になると所得税が発生します。また、配偶者控除(38万円)を受けることができなくなるため、夫が支払う所得税や住民税が増額になります」

(2)130万円の壁(一部の方は106万円)

いわゆる『扶養家族』の要件から外れ、社会保険への加入義務が発生する境界線です。年金、健康保険などの免除がなくなります」

「なお、基本的には年収130万円が壁ですが、次の条件に該当する方の場合は、106万円以上の年収で加入の義務が生じます

<年収106万円以上で加入義務が生じるケース>

  1. 労働時間が週20時間以上
  2. 月の収入が88,000円以上
  3. 社会保険に加入している社員が501人以上いる企業に勤める
  4. 1年以上雇用される見込みがある

なるほど。(1)、(2)のどちらでも、今まではなかった支払いが発生するという意味で、家計に影響しそうですね。

「そうです。ただ、(1)の夫側の税負担は、今後、軽減される方もいるはず。というのも2018年からは、現行の『配偶者特別控除』の枠が拡大されるからです

配偶者特別控除とは、妻の年収が103万円を超えたときに夫側に適用される控除。現行の場合、控除の適用範囲は103万円以上141万円未満。控除額は妻の年収に応じて3〜36万円でした。

「しかし、2018年からは、配偶者特別控除の適用上限が201万円に。それに伴って、妻の年収150万円までは、配偶者控除と同額である38万円が夫側から控除されるようになったのです

とすると、妻側の年収が夫の税負担に及ぼす影響は、気にするほどのものではなさそうです。

家計への影響が大きいのは、社会保険料の支払いが必要になる130万円(106万円)の壁でしょうね。越えた金額の度合いによっては、越えないよう調整して働いた場合より、かなり手取りが減った印象になるかもしれません」


「壁を越えない働き方」、そのメリットとデメリット

「壁を越えない働き方」という考え方がありますが…

収入の壁を中途半端に越えて、手取りを減らすくらいなら、「働き方を調整して、それ以下の収入に抑えよう」という考え方があります。

「それは多くの方が考えるようですね。ただ、どんなことにも良い面と悪い面があるものです」

特に、社会保険料の境界線となる『130万円(106万円)の壁』を越えるか越えないかは重要なので、メリットとデメリットをしっかり考えて選んだほうがいいと思います

130万円を超えない働き方のメリット

「やはり『今このとき』の手取りを減らさずに済むこと。働いたのに手取りが減るとどうしても損をした気持ちになりますが、壁を越えなければそういう状況にはならないので、モチベーションを保てます」

130万円を超えない働き方のデメリット

保障に乏しいことです。130万円を超えて働くときは自分で厚生年金保険や健康保険に加入するので、例えば長引く病気になったら傷病手当金が受けられるなど、保障が大きくなります」

なるほど。確かに扶養の立場だと、そうした保障はありません。

私がそれ以上に重要だと思うのは、年金の額への影響です

「自分で年金を納めれば、将来もらえる年金の金額は多少なりとも増えますよね。年金は、支給され始めたら生きている限りいただけるお金。たとえ今現在の世帯収入が減っても、将来の支給金額が上がるように働いておいた方が、先々のメリットは大きいというのが個人的な考えです」

要するに、130万円の壁を越えるか越えないかは、「今」を重視するのか「将来」を見据えるのかにつながるということ。どちらを選ぶかはママ自身や家庭の状況で変わりそうです。


どこまで働けばプラスに? 壁を越えて目指すべきところは?

手取りをプラスにしようと思ったら…?

たとえ将来にとってプラスだとしても、壁をちょっと越えたがために手取りが減ったら、やっぱり悔しくなるのが人情ですが…。

あくまで状況的に可能ならですが、いっそ少々のマイナスは将来回収できると考えて、気にせずどんどん働くという選択肢もあるかと思います

仮にどんどん働くなら、社会保険料や税金を支払ってもマイナスにならないラインに到達したいもの。具体的にはどのくらいの年収が目標になるのでしょうか。

「複雑になりますので詳しくは述べませんが、ボーダーラインは150万円以上。手取りをプラスにしようと思ったら、それより10〜20万円くらい多く稼ぐことが条件になると思います」

つまり、年収160万円〜170万円以上を目指したいということですね。

「そうですね。ただ、ママにはいろいろと、働きにくい事情もありますよね。たとえば子どもが小さくて預け先がないとか、あっても長時間は預けられないとか、育児のほかに介護も担っているとかケースもさまざまです。難しい場合は160万円以上を目指すといっても困難なので、壁を越えないよう調整して働く選択も必要かもしれません」

とはいえ、事情がある場合はともかく、「個人的には、壁を越えないようにと仕事を控えるのはもったいないと思います」とのこと。

今まで働き方をセーブしてきたけど、本当はもっと働けるし、働きたい——もしそんな方がいらしたら、一度将来まで考えて、現状の働き方を見直してみると良いのではないでしょうか。

お話を聞いたのは…

  • 小川 千尋さん

    ファイナンシャル・プランナー、子育て・教育資金アドバイザー、終活コンサルタント、エディター&ライター、整理収納アドバイザー2級、ハッピーエンディングプランナー。1994年AFP資格取得。独立系ファイナンシャル・プランナーとして、主にマネー誌、一般誌などのマネー記事の編集・執筆・監修・セミナー講師などで活動。オールアバウトのガイドも務めている。親の生命保険に詳しい。

ライター紹介

岡本有紗

2児と猫3匹を育てるライター。メディカル系専門の広告制作会社でライティングと編集業務を経験後、出産を機にフリーに。得意分野はやはりメディカル系だが、いろいろな分野を経験し幅を広げたいというのが現在の目標。趣味はあえてチープな手段で行く一人旅(休止中)、特技はハモリと絶対音感。

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