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子供に多い「ヒトメタニューモウイルス」とは? 症状&予防法も

掲載日: 2020年1月6日更新日: 2020年1月6日岡本有紗

子供がかかりやすい感染症として、最近よく聞く「ヒトメタニューモウイルス感染症」。長くて覚えにくい名前ですが、実際どんな感染症なのでしょうか。

今回は、国立成育医療研究センター感染症科・小児科医の船木孝則さんに、ヒトメタニューモウイルスの症状や原因、子供にかかりやすい理由などを聞きました。

ヒトメタニューモウイルスとは?

すごく覚えにくい「ヒトメタニューモウイルス」とは、そもそもどんなウイルスなのでしょうか。

「『ヒトメタニューモウイルス』は、2001年にオランダの研究者によって発見されたウイルスです。世の中には見つけられていないウイルスがまだまだたくさんありますが、技術の進歩の恩恵を受けて、近年は新たなウイルスがどんどん確認されるようになってきました。ヒトメタニューモウイルスも、その流れの中で見つけ出されたものです」

ヒトメタニューモウイルスは、その遺伝子や構造などが、すでに知られている『RSウイルス』ととてもよく似ているため、同じ『ニューモウイルス亜科』に分類されました」

「実際に、風邪に似た症状が出ること、小さな子供がよく感染し、おおむね5歳までの間に誰でも1回は感染すること、年齢が小さいほど重症になりやすい傾向があることなど、RSウイルスと同じ特徴を持っています

1歳未満の赤ちゃんは要注意!冬に流行るRSウィルス感染症

「流行期についても同様の傾向があります。国立感染症研究所のデータから日本でのここ数年の傾向を見ると、ヒトメタニューモウイルス感染症は、春先から5、6月くらいの間に患者数が多くなっています

「一方、RSウイルス感染症の流行は、ヒトメタニューモウイルス感染症よりやや早く始まり、冬場から初春に多い感染症ですが、近年は秋口にも見られるようになってきています」

症状は年齢で異なる! 小さな子供は要注意!

では、ヒトメタニューモウイルスに感染すると、どんな症状が出るのでしょうか。

おもな症状は、鼻水や咳、たんなどのいわゆる風邪症状です。ほかにも、発熱したり、時には発疹が出たりすることもあります」

1歳未満の子供は重症になりやすく、炎症が細い気管支にまで及んで、『細気管支炎』という状態になることもあります。その半面、年長ぐらいになると症状が軽い傾向があります。場合によっては、感染していても症状が出ない『不顕性感染(ふけんせいかんせん)』で済むこともあります

「なお、大人も感染することはありますが、症状があっても鼻風邪程度で終わることが大半です」

かかった年齢によって、症状に大きな違いがあるのはなぜでしょうか。

ウイルスには、おたふくかぜや水ぼうそうのように『1回かかれば以降はかからない』ものもありますが、ヒトメタニューモウイルスは違います。毎年繰り返し感染したり、1シーズンに何回もかかる可能性もあります

「ですが、そのように感染を繰り返すことで、だんだん免疫が獲得されていきます。結果として、年齢が上がるほど症状が目立たなくなるのではないかと考えられています」


ヒトメタニューモウイルスの効果的な治療法は?

では、感染した場合の効果的な治療法はどういったものでしょうか?

ヒトメタニューモウイルスには特効薬がないので、治療は症状に応じて行う対症療法が中心です。熱がつらければ解熱剤、咳がひどければ咳止めというように、そのときの症状の重さなどの状況に応じて薬が処方されます」

「ただ、仮に感染しても、水分がしっかり取れていて、本人がさほどつらそうでなければ、そこまで心配しなくても大丈夫です。熱がなかったり、症状が重くなければ、登園・登校にも特に制限はありません

「逆に、重症になると、自分で呼吸するのがつらくなり、入院する必要が出てくることもあります。心配しすぎる必要はないですが、診断後、発熱が5日以上続いたり、どんどん症状が重くなったりする場合は、もう一度受診することをおすすめします」

予防は小さなことの積み重ねから

年齢によっては重症になってしまうだけに、感染しないようにすべきですが、どんな対策をすればいいのでしょうか。

「ヒトメタニューモウイルスは、感染した人の咳を浴びたり(飛沫感染)、鼻水やよだれに触れたりする(接触感染)ことでうつります。とはいえ、子供の集団生活の場で、感染した子供のよだれや鼻水、咳などを避けることは難しいでしょう」

「ですから、保育園や幼稚園から帰宅したときや、人混みに出かけたあとなどは、しっかりと石けんで手洗いをすることが大切です

「それから、大人は仮に感染しても鼻水が出る程度で終わるかもしれませんが、子供はそうではありません。気付かないうちに大人から子供にうつさないように、いわゆる『咳エチケット』を守りましょう

「咳が出そうになったらティッシュで覆ったり、脇に近い二の腕に口を押し付けたりすれば、周りにしぶきを飛ばさずにできます。もちろん、マスクも有用です」

感染対策は、まず大人からということですね。一応の流行期はありますが、年中かかる可能性があるそうなので、ちょっとした風邪症状でも十分気を付けたいものです。

お話を聞いたのは…

  • 船木孝則さん

    国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科医員。専門は小児科、小児感染症、感染症危機管理。2008年4月国立成育医療センター総合診療部レジデント、2010年4月国立成育医療研究センター総合診療部チーフレジデント、2011年4月国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科フェローを経て、2013年8月より国立成育医療研究センター生体防御系内科部感染症科医員。2016年4月より厚生労働省感染症危機管理専門家養成プログラム(IDES)。2019年4月より現職。

  • 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
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ライター紹介

岡本有紗

2児と猫3匹を育てるライター。メディカル系専門の広告制作会社でライティングと編集業務を経験後、出産を機にフリーに。得意分野はやはりメディカル系だが、いろいろな分野を経験し幅を広げたいというのが現在の目標。趣味はあえてチープな手段で行く一人旅(休止中)、特技はハモリと絶対音感。

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