小学生など子どもの遊びとしてすっかり定番化した一輪車。友人が乗っているのを見て、「乗ってみたい」と子どもが言ったときに、うまく教えられない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、公益社団法人「日本一輪車協会」下山和大さんに、上手な教え方から練習にふさわしい場所、車体の選び方まで、一輪車を楽しむために知っておきたい情報を教えてもらいました。上手に乗るための6ステップも参考にしてください。
何歳から乗れる? 車体の選び方は?

まずは一輪車の基礎知識をおさえておきましょう。
一輪車は何歳から乗れる?
自転車よりも難しそうに感じる一輪車ですが、何歳から乗れるものなのでしょうか。
「2歳半くらいから練習を開始することは出来ます。ただ、2歳半くらいから始める子は、上にきょうだいがいるなど、自然と乗る環境にある場合がほとんどです」
「ですから、自転車と同じように、本人が『乗りたい』『チャレンジしてみたい』という気持ちになったときが始め時です。無理に乗せることはやめましょう」
子どもの気持ちを大切にして、やる気になった時に親がうまく誘ってあげるとよさそうですね。では、どのくらいの練習で乗れるようになるのでしょうか。
「1日2時間〜3時間程度の練習をした場合、小学1年生くらいだと早い子で2日〜3日で乗れるようになります。乗り方のアドバイスを理解するのが難しい未就学児は、かなり時間がかかります」
上手な車体の選び方は?
車体はどのような基準で選ぶと良いのでしょうか。
「タイヤのサイズは、子どもの身長を目安に選びます。小さな一輪車で練習しても上達しないので気をつけましょう。サドルの高さは、おへその下にくるように調節してください」

種類もたくさんあるようですが、おすすめはありますか?
「ホイールが樹脂製のものと、スポーク製のものがあります。値段は高くなりますが、乗りやすさとしてはスポーク製のものを選ぶといいと思います。安定感もあり、タイヤを踏み込む力が少なくてすみます」
「また、選ぶ時は一輪車を逆さにして、タイヤを回してみてください。勢いよく回るものを選んだほうが、練習効率があがります」
子どもの体に合った車体を選ぶことは納得ですが、タイヤがよく回るタイプがより良いというのは意外に知らないポイントですね。
どんなところで練習すればいい?
車体を選んだら、次は練習場所を探します。一輪車の練習場所にはどのようなところを選べばよいのでしょうか。
「凹凸がなく、車通りのないところで、壁やフェンスなどつかまるところがある場所を選びます。自転車同様、安全な場所を探すのはもちろんなのですが、一輪車の練習には『つかまる場所』が必要です。校庭であれば、鉄棒やジャングルジムなどにつかまって練習することができますね」
肩の高さくらいにつかまる場所があればいいそうなので、条件を満たす場所を探しましょう。
一輪車に乗ってみよう! 練習方法&コツを紹介

一輪車に乗れる場所が見つかったらいよいよ練習開始です。子どものころに一輪車に乗ったことがない、乗れるようにならなかったパパママは、子どもの練習を始める前に、あらかじめ一輪車が走行している映像などを見て、イメージを掴んでおくといいそうです。
準備:タイヤの空気&サドルの高さをチェック

「まずは、タイヤに空気がしっかり入っているか、サドルの高さが合っているかどうかを確認しましょう。一輪車は体重を一点で支えるので、タイヤの空気は手で押してもへこまないくらい、しっかり入れます」
STEP1:利き足をペダルにかける

「壁や手すりまたは補助者につかまり、利き足(最初にかけたいほうの足)のペダルを手前に持ってきて足をかけます。この時、つま先がまっすぐ前を向くようにします」
STEP2:ペダルを踏みこむ

「かけた足でペダルを踏み込みます。背中を真っすぐにして、前ではなく真上に伸び上がるようにするとうまく乗れます。最初のうちは片方の手を壁や手すり、もう片方の手を補助者が支えると良いでしょう」
STEP3:ペダルが「水平」になることを意識する

「乗車後、ペダルが水平になるように上の位置にあるペダルを踏み込みます。ペダルが水平になると、安定してグラグラしにくくなります」
STEP4:半回転ずつ、一気に漕ぐ
「ゆっくり踏み込むとバランスを取るのが難しいので、勢い良く漕ぐことがポイントです。ペダルの位置は水平から水平へ。水平になったら止まり、また水平へ、をくり返しながら進む練習をしましょう」
STEP5:1回転に挑戦する
「半回転ずつ漕げるようになったら、次は1回転に挑戦しましょう。1回転ができたら連続回転、というように徐々に距離を伸ばしていきます」
STEP6:車体から降りる
「一輪車から降りるときは、ペダルを上下の位置にして、上にある足を前か後に降ろします。前に降ろすときはサドルの後ろを、後ろに降ろすときはサドルの前を押さえながら降りましょう」
練習を始める年齢によっては、親が言っていることを理解できないこともあるので、子どもの年齢によってわかりやすい声のかけ方が大切です。また、練習時に注目するポイントも教えてもらいました。
【練習時に注目しておくポイント】
- 補助者が支える位置は、子どもの肩の高さ。子どもの手を持ち上げたりせず、補助者の手に子どもの手を乗せる感じにしましょう。
- 親は補助をしながら、子どもの背筋が伸びているか、まっすぐ前を向いているかなど姿勢をチェックしましょう
- 失敗して後ろに落ちているうちは、腰が引けているのでまだ乗れない状態です。おへそを前へ出す感じで乗るように声をかけてあげましょう。
- 前に落ちるようになれば、あと一息です。ペダルを漕ぐ勢いの調節がうまくいけば、乗れるようになります。
親子のコミュニケーションにもピッタリ! あきらめない心&想像力も身につく

うまく乗れるようになるまで補助が必要な一輪車の練習は、親子のコミュニケーションにもピッタリなのだそう。
「子どもの成長と共に、手をつなぐ機会も減ってきますよね。少し寂しいと感じているなら一輪車の練習はいい機会です。特にお父さんは、一輪車の練習ではとても頼りにされますよ。親子のスキンシップやコミュニケーションをとるのに、一輪車は大いに役立ってくれます」
また、うまく乗れるようになるまでに時間がかかる一輪車の練習では、あきらめない心が身につくとのこと。
「あきらめないでくり返し練習すれば、一輪車も必ず乗れるようになります。がんばって乗れるようになったなら、一輪車以外のことに取り組むときにも簡単にあきらめなくなります」
「一輪車は、小さなステップの積み重ねで乗れるようになるので、自分なりの目標を決めて、コツコツ練習できるのもいいところです。できるようになることが少しずつ増えていき、その度に達成感が味わえます」
ある程度乗れるようになってくると、いろいろな乗り方にチャレンジするようになるそうです。
「友達と一緒になって楽しい乗り方を考えたり、難しい技に挑戦したりと、子どもならではの想像力で楽しめるのも一輪車の魅力ですね」
幼少期の一輪車との出会いは、今後の子どもの人生にも良い影響を与えてくれそうです。
奥深い一輪車の世界!
乗れるようになるまでは、根気強く練習を続けることが必要な一輪車ですが、一度乗れるようになるとどんどん楽しくなっていきます。実は、一輪車にはいろいろな競技があり、大会も開かれていることをご存知でしょうか。
「一輪車にはスピードを競い合うトラックレースやマラソン、音楽に合わせて美しさを競い合う演技など、さまざまな競技種目があります。毎年行われる『さわやか全日本一輪車競技大会』には、未就学児から80代の選手まで幅広い年齢層が参加しています」
トラックレース
100m、400mなどの走行レースや片足走行、タイヤ乗り、スラローム、障害レースなどがあります。2017年大会では小学生男子の優勝は小学6年生で100mのタイムが15秒98でした。全体では、2017年に高校2年生男子が出した12秒81がチャンピオン記録です。
マラソン
42.195kmのフルマラソン、ハーフマラソン、10kmや5kmなど長距離走のタイムを一輪車で競い合います。2016年大会で、小学6年女子がフルマラソンを2時間14分06秒という驚異的な記録を出して優勝しています。現在の日本記録は、2016年に成人男性が記録した2時間1分45秒です。
演技部門
フィギュアスケートのように音楽に合わせて、いろいろな技を披露する人気競技です。ソロ、ペア、グループ別に演技をします。演技の大会は出場するために映像審査による予選がありますので、出場できる選手は全員レベルが高い選手です。
いずれの種目も、選手達の技術の高さに驚くこと間違いなしです!
「乗れるようになったらそれで終わりではなく、さらに上を目指せるのが一輪車の面白いところです。中には、世界中を一輪車で旅をする人もいるほどです。一輪車のクラブチームも全国にたくさんありますので、興味があればぜひ調べてみてください」
一輪車は自転車と同じように、あきらめなければ必ず乗れるようになるとのことですので、上手に声かけをしながら練習を続けられるように導いてあげたいですね。