かけっこが遅い、逆上がりができない…。どうしてうちの子、運動オンチなの? そんな悩みを持つ親も多いのではないでしょうか。「重心がどこにあるか」によって体の動きの特性を4つのタイプに分類した「4スタンス理論」。この考え方を知れば、わが子が運動に前向きになるばかりでなく、そもそも運動ベタは親の思い込みに過ぎなかった、と気づくかもしれません。
先生の言う通りにやっているのに上達しない、好きな選手をマネてみてもうまくいかないという経験はありませんか? 私たち親にもきっと心当たりがあるはずです。
体の動きの特性を4つのタイプに分類した「4スタンス理論」。考案したフィジカルアドバイザーの廣戸聡一さんによると、体の重心がどこにあるかによって、4つのタイプに分かれるそう。「人それぞれ、その子に合った動きがある」と強調します。「その子にとって自然な動きができるようになれば、無駄な動きは減り、安定感や集中力が生まれ、より能力を発揮しやすくなります」。
廣戸さんのもとに一流のスポーツ選手や音楽家が訪れるのは、そんな「自然な動き」を取り戻すため。「彼らはいろいろな人からいろいろな指導を受けてきています。多少不自然な動きでも彼らは能力があるためにできてしまう。でも長年続けていくと無理がたたってスランプに陥ったりするのです。作り込んでいたものを外してあげるのが私の仕事」と廣戸さん。
生まれ持った「自然な動き」に注目した4スタンス理論。子どもの運動能力向上に生かすことはできるのでしょうか。

また、この4つのタイプを知ることによって、動きのタイプも知ることができるそう。A1とB2のクロス型は、体の前面を中心として、体幹を交差させる動きが得意。また、A2とB1のパラレル型は、体の背面を中心に、体幹の同じ側(右と右あるいは左と左)を使う動かし方が得意。子どもがどのタイプかを知っていれば、不自然な動きを繰り返し練習する、といったことにならずに済むでしょう。では、どのようにタイプを判定するのでしょうか。
タイプ判定の際、子どもに活用できるわかりやすい例として廣戸さんがあげたのが、徒競走のスタート時の姿勢です。
気を付けの姿勢から「ヨーイ」の合図で、どのように構えの姿勢をとりましたか? 足を一歩後ろに引いたなら、重心が前足にかかるAタイプ。足を一歩前に出したら、重心が後ろ足にかかるBタイプです。より速くスムーズなスタートをきるために、以下を念頭に置いて親はサポートすることができます。
このように、かけっこのスタートの場合、重心がつま先なのかかかとなのかにより、スタートのしかたを変えることで、勢いよく飛び出すことができるようになります。また、クロス型かパラレル型かにより、走る時の腕の振り方が違い、走る時の理想的なフォームは上の4つのタイプによって変わるのだとか。
走る以外にも、ジャンプや逆上がり、ボールの投げ方など、さまざまな運動において、重心の位置による4つのタイプと、クロス型かパラレル型かを意識することによって、自分が持っている力を無理なく発揮できる方法があるというわけです。
ただし、「親が子どものタイプを判定するのは容易ではありません」と注意を促す廣戸さん。判定する際、正しい前提条件が必要だからです。言葉のかけ方ひとつでも、「どちらがやりにくい?」と伝えるべきところを「どちらがやりやすい?」と伝えてしまえば結果は変わってきます。
また「さあチェックしよう!」と言うと、人は身構えてしまうもの。間違った結果をもとに親が指示・指導しようとすれば、子どもの能力の芽をつぶしてしまうことになりかねません。
「もし、うまく判定できなかったとしても、子どもがどのタイプに属するかを知ることが大事なのではなく、この子にはこの子のタイプがあるんだと受け止めることが大事」と廣戸さん。いろいろな判定方法を試してみて、わが子のだいたいの傾向がつかめればいいなという気持ちでいたほうがいいかもしれません。
「たいていの場合は、子どものほうがうまくできます。子どもには、子どもの体のルールがある。成長過程で骨格が不安定な分、体全体のしなやかさを使ってゴロゴロします。一方、大人は力づくで転がろうとするから、できない。そして、『もう年だ』なんて言い訳したりします(笑)」
子どもと大人の体の動きは違う。また、子ども一人ひとりの動きのタイプも違う。親はそれを理解し、あれこれ口出ししない我慢する心が肝心、と廣戸さんは話します。親が「自分はこうしてできたから、子どももできるだろう」として教えると、子どもの体の特性に合わないことを教えていることになりかねないということ。
「子どもが歩いたり走ったりするのは、教えるわけでもなく自然に始めるでしょう。こうした原始的で基本的な動きは、ほぼ間違っていません。自然と、自分の体に合った動き方をしているんです。乳幼児の頃と同じように、親は自分と動きが違うなあと思っても何も言わずじっと見守ることが大事。子どもと一緒に体を動かしてみて、こうやったらできるかも!と子ども自身が発見する機会をたくさん作ってあげること。これが子どもの運動能力向上につながっていくのです。」
一流選手も支持する「4スタンス理論」とは?
一生懸命やっても上達しないワケ

体の動きの特性を4つのタイプに分類した「4スタンス理論」。考案したフィジカルアドバイザーの廣戸聡一さんによると、体の重心がどこにあるかによって、4つのタイプに分かれるそう。「人それぞれ、その子に合った動きがある」と強調します。「その子にとって自然な動きができるようになれば、無駄な動きは減り、安定感や集中力が生まれ、より能力を発揮しやすくなります」。
廣戸さんのもとに一流のスポーツ選手や音楽家が訪れるのは、そんな「自然な動き」を取り戻すため。「彼らはいろいろな人からいろいろな指導を受けてきています。多少不自然な動きでも彼らは能力があるためにできてしまう。でも長年続けていくと無理がたたってスランプに陥ったりするのです。作り込んでいたものを外してあげるのが私の仕事」と廣戸さん。
生まれ持った「自然な動き」に注目した4スタンス理論。子どもの運動能力向上に生かすことはできるのでしょうか。
自分のタイプを知れば、無理なく能力を発揮できる
「重心のあり方」で4タイプに分かれる
立った時、歩いた時、しゃがんだ時、足のどの部分に重心がかかっていますか? 4スタンス理論では、重心が「つま先にあるのか、かかとにあるのか」「内側にあるのか、外側にあるのか」によって以下の4つに分類されます。
- A1タイプ・・・つま先・内側重心タイプ(クロス)
- A2タイプ・・・つま先・外側重心タイプ(パラレル)
- B1タイプ・・・かかと・内側重心タイプ(パラレル)
- B2タイプ・・・かかと・外側重心タイプ(クロス)
また、この4つのタイプを知ることによって、動きのタイプも知ることができるそう。A1とB2のクロス型は、体の前面を中心として、体幹を交差させる動きが得意。また、A2とB1のパラレル型は、体の背面を中心に、体幹の同じ側(右と右あるいは左と左)を使う動かし方が得意。子どもがどのタイプかを知っていれば、不自然な動きを繰り返し練習する、といったことにならずに済むでしょう。では、どのようにタイプを判定するのでしょうか。
かけっこのスタートで、足を出す?引く?
気を付けの姿勢から「ヨーイ」の合図で、どのように構えの姿勢をとりましたか? 足を一歩後ろに引いたなら、重心が前足にかかるAタイプ。足を一歩前に出したら、重心が後ろ足にかかるBタイプです。より速くスムーズなスタートをきるために、以下を念頭に置いて親はサポートすることができます。
- Aタイプは…進行方向前足を軸足にするとスタートをしやすい
- Bタイプは…進行方向後ろ足を軸足にするとスタートをしやすい
このように、かけっこのスタートの場合、重心がつま先なのかかかとなのかにより、スタートのしかたを変えることで、勢いよく飛び出すことができるようになります。また、クロス型かパラレル型かにより、走る時の腕の振り方が違い、走る時の理想的なフォームは上の4つのタイプによって変わるのだとか。
走る以外にも、ジャンプや逆上がり、ボールの投げ方など、さまざまな運動において、重心の位置による4つのタイプと、クロス型かパラレル型かを意識することによって、自分が持っている力を無理なく発揮できる方法があるというわけです。
日常の動作を観察することによってタイプを判定
4つのタイプを判定するためには、さまざまな判定方法がありますが、日常の動作を親が観察することでも判定することができるとか。それは、タイプによって、体の動かし方に違いがあるからだそう。例えば、コップを持つときにどの指を中心にして持つか、ノートを取る時にノートを正面に置くか、斜めに置くかなど。こうした日常のさまざまな動作から、4つのタイプを判定することができます。(具体的な判定方法は「4スタンス倶楽部」参照)ただし、「親が子どものタイプを判定するのは容易ではありません」と注意を促す廣戸さん。判定する際、正しい前提条件が必要だからです。言葉のかけ方ひとつでも、「どちらがやりにくい?」と伝えるべきところを「どちらがやりやすい?」と伝えてしまえば結果は変わってきます。
また「さあチェックしよう!」と言うと、人は身構えてしまうもの。間違った結果をもとに親が指示・指導しようとすれば、子どもの能力の芽をつぶしてしまうことになりかねません。
「もし、うまく判定できなかったとしても、子どもがどのタイプに属するかを知ることが大事なのではなく、この子にはこの子のタイプがあるんだと受け止めることが大事」と廣戸さん。いろいろな判定方法を試してみて、わが子のだいたいの傾向がつかめればいいなという気持ちでいたほうがいいかもしれません。
子どもも大人も、個々人で体の動きは違う
廣戸さんが主催する子ども向け運動教室では、親子で一緒に、体を伸ばして転がる「ゴロゴロ遊び」から始まります。「たいていの場合は、子どものほうがうまくできます。子どもには、子どもの体のルールがある。成長過程で骨格が不安定な分、体全体のしなやかさを使ってゴロゴロします。一方、大人は力づくで転がろうとするから、できない。そして、『もう年だ』なんて言い訳したりします(笑)」
子どもと大人の体の動きは違う。また、子ども一人ひとりの動きのタイプも違う。親はそれを理解し、あれこれ口出ししない我慢する心が肝心、と廣戸さんは話します。親が「自分はこうしてできたから、子どももできるだろう」として教えると、子どもの体の特性に合わないことを教えていることになりかねないということ。
「子どもが歩いたり走ったりするのは、教えるわけでもなく自然に始めるでしょう。こうした原始的で基本的な動きは、ほぼ間違っていません。自然と、自分の体に合った動き方をしているんです。乳幼児の頃と同じように、親は自分と動きが違うなあと思っても何も言わずじっと見守ることが大事。子どもと一緒に体を動かしてみて、こうやったらできるかも!と子ども自身が発見する機会をたくさん作ってあげること。これが子どもの運動能力向上につながっていくのです。」
写真提供/REASH PROJECT