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子供もアレルギー&花粉症治療できる! 「舌下免疫療法」とは?

掲載日: 2018年10月23日更新日: 2018年10月23日近藤 浩己

花粉症などのアレルギー対策の1つとして注目が高まっている「舌下免疫療法」。これまで、11歳以下の子どもは適用外でしたが、2018年からはそれ以下でも治療が可能になっています。そこで、どんな治療法なのか、どういったアレルギーに効果的なのかなど、舌下免疫療法の基本を専門家に聞きました。

そもそも「免疫療法」って何?

そもそも、「免疫療法」とはどういった治療法なのでしょうか。

「アレルギーを起こす原因であるアレルゲンを少しずつ体内に取り込むことで、アレルギー反応が起こりにくい体質に改善する治療です。薬で症状を和らげる対処療法とは違い、根治が期待できるのが免疫療法です」

そう答えてくれたのは、日本耳鼻咽喉科学会などの専門医で、ゆたクリニック院長の湯田厚司先生。

免疫療法にはいくつかの方法があり、代表的なのは、アレルゲンの入った薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」。一方、薬を舌の下に投与するのが「舌下免疫療法」です。

舌下免疫療法は、注射による痛みがなく、皮下免疫療法よりも副作用が少ないのがメリット。2017年までは、12歳以上でないと適用されなかったのですが、2018年から12歳未満の子どもも適用可能になりました

治療は5歳前後になってから

12歳以下ということは、1歳の子どもでも療法を受けられるということでしょうか。

「適用年齢で考えれば1歳の子どもでも受けられます。ただ、舌下免疫療法で用いる薬は、12歳以上であれば錠剤、液体の2種類から選べますが、11歳以下の子どもの場合、錠剤のみになります」

「この錠剤を舌の下に1分間保持してから飲み込むのですが、そうした投与法をきちんと守れるのはだいたい5歳頃からでしょう。個人差はありますが、子どもがまだ小さくて投与方法を守れない場合は、効果も期待できなくなります」

子どもが正しい治療法を守れるようになったら、開始できるということですね。ちなみに、錠剤はどんな味なのでしょうか。苦いと子どもが嫌がりそうですが…。

「錠剤はまったく味がないので、子どもでも嫌がることはないはずです」

痛みも苦さもないのであれば、抵抗なく子どもが続けられそうです。


花粉症やアレルギー性鼻炎にも効果あり

では、舌下免疫療法で効果が期待できるアレルギーには、どのようなものがあるのでしょうか。

現在使用できる治療薬は、スギ花粉症用と、ダニによるアレルギー性鼻炎用の2種類です

まずは、日本人に最も多いとされる2つのアレルギーが、舌下免疫療法の適用になったのだとか。効果はどうなのでしょう?

「私のデータでは、スギ花粉症の場合、薬を服用する対処療法よりもアレルギー症状が抑えられているという人が多いですね。ダニによるアレルギー性鼻炎に関しても同様に、高い効果が出ています」

「ただ、アレルギー性鼻炎の場合は、ダニ以外のアレルギーを併せ持っている人もいます。その場合は、ダニによる症状にしか効果は期待できない、ということは知っておいてほしいですね」

治療期間は長期! 3年〜5年の継続を視野に

痛みも苦味もなく、高い効果が期待できるという舌下免疫療法。メリットばかりに感じますが、治療を開始するにあたり、注意点はあるのでしょうか。

(1)副作用について

「まずは、少ないとはいえ副作用の可能性を知っておくことです。口の中にアレルゲンを入れるわけですから、当然、口がかゆいとか、口が軽く腫れる程度の副作用は起こり得ます。ただ、2週間ほどで症状がほぼ出なくなるケースが多いので、さほど心配することはないと思います」

(2)治療開始時期&期間は?

「この療法は、3年〜5年くらいかけて体質を改善していくものです。私のデータでも、1年〜2年で治療をやめてしまった人は、アレルギー症状の再発率が高い。効果が出るまでにも最低3カ月はかかりますから、長いスパンでの治療計画を立てておくことが大切です」

効果が出るまでに最低3カ月かかるということは、スギ花粉症の場合、いつ頃から治療を開始すれば良いのでしょうか。

「スギ花粉は、目安として2月の頭から飛び始めます。ですから、できれば11月中には治療をスタートしてほしいですね」

(3)ダニによるアレルギー性鼻炎の場合は?

ダニだけのアレルギー性鼻炎ならいつ開始しても良いですが、実はダニによるアレルギー性鼻炎の人は、スギ花粉のアレルギーも併せ持っている人が多いです

「ダニのアレルギーだけだと思っていても、調べてみると、スギ花粉のアレルギーも出てしまった、という人は少なくないのです。ですから、その場合はやはり、11月中には治療をスタートした方が良いですね」

とはいえ、舌下免疫療法は、病院でアレルギー検査を行ってからでないと治療を開始できないので、子どもが鼻炎に悩んでいるのなら、その原因物質をきちんと知れるきっかけにもなりそうです。


治療費は毎月3,000円前後が目安

治療費の目安についても教えてください。

スギ花粉症、ダニによるアレルギー鼻炎のどちらも保険適用ですので、通常の3割負担で考えて、毎月2,500円〜3,000円くらいが目安ですが、これはスギ花粉症、アレルギー性鼻炎、どちらか一方のみ治療の場合です」

「スギ花粉症とアレルギー性鼻炎の両方の治療を同時に行った場合は、費用は先ほどの1.5倍になります。ただ現状では、スギ花粉症とアレルギー性鼻炎、両方の治療を一度にスタートすることはまだ勧められていません

「ですから、両方のアレルギーを持っている場合は、より症状が強い方から治療を開始することになります」

「片方の治療を始めてから、のちにもう片方の治療を加えることはできるのですが、これは医師の考え方によって変わります。まずは医師に、治療方法について相談、確認してみましょう

また、舌下免疫療法は認可制で、医師が治療薬を処方するには専門の登録が必要なのだとか。とはいえ現在では、かなりの数の耳鼻科、小児科、内科に広がっているので、治療を受けられる病院は割と見つかりやすいそうです。

痛い治療が苦手な子どもにはもってこいの舌下免疫療法。子どものアレルギー症状に悩んでいるなら、ぜひ、近くで治療を受けられる病院を探してみてはいかがでしょうか。

お話を聞いたのは…

  • 湯田厚司さん

    医学博士、日本耳鼻咽喉科学会専門医。日本アレルギー学会専門医・代議員。日本頭頸部外科学会頭頸部がん専門医。日本鼻科学会代議員、三重県耳鼻咽喉科医会理事。昭和63年、三重大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科入局。平成7年から2年間、米国ジョージタウン大学内科アレルギー部門客員研究員を務める。平成12年には、東京大学医学部形成外科文部省内地研究員としても活躍。平成21年、三重大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科准教授、三重大学附属病院教授を併任。平成23年、ゆたクリニックを開設。

ライター紹介

近藤 浩己

1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。

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