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「動物園に行くと免疫力UP」は迷信! 専門家がアレルギーを解説

昨今、アレルギー疾患を持つ人は年々増えており、子どもも例外ではありません。その要因の一つに、生活環境から汚れが減っていることが囁かれていますが、実際に汚れと免疫はどのような関係があるのでしょうか。食物アレルギーが増えている理由や、アレルギーに対する体質が決まる年齢なども含めて、詳しく専門家に聞きました。

アレルギーってそもそも何?

小児ぜんそくや花粉症もアレルギー疾患なんです

そもそも、アレルギー疾患とは、どのような症状を指すのでしょうか。喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎もアレルギー疾患に含まれるのでしょうか。

アレルギー疾患には、狭い意味の定義と広い意味の定義があります。広い意味では食物アレルギーのほか、小児喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎もアレルギー疾患です

こう答えてくれたのは、国立成育医療研究センターで免疫アレルギー・感染研究部の部長を務める松本健治さん。

「一方、狭い意味でのアレルギーの定義は『特定の抗原(アレルゲン)に対する免疫応答(免疫の反応)が過剰なために、その人に不利益を生じる病態』です」

「具体的に言うと、食物アレルギーであれば、特定の食物に対して、かゆみや吐き気、下痢など、不利益な症状を起こすことを指します」

もう少し理解を深めるために、アレルギーの仕組みについて教えていただきました。

アレルギーの仕組みって?

人間の抗体には5つの種類がありますが、その中で即時型のアレルギーを起こす抗体が「IgE抗体」と呼ばれる抗体です。抗体は基本的に『一つの抗体に対して一つの物質しか認識しない』ので、たとえば卵に対するIgE抗体は卵にだけ反応します

アレルギーを起こすIgE抗体を持っているとどうなるのでしょうか。

「まず知っておいてほしいことは、人間の体にはマスト細胞と呼ばれる細胞があるということです。これは皮膚でも肺でも腸でも、身体中のどこにでもあるものです。このマスト細胞の中にヒスタミンという物質がたくさん詰まっているのですが、これが言うなれば爆弾になります」

「爆弾は導火線に火がついて爆発する仕組みですが、アレルギーの場合は、IgE抗体が導火線に、アレルゲンが火になります」

「IgE抗体は、マスト細胞の表面にびっしりと付きます。その状態で再びアレルゲンが入ってくると、火の役割を持つアレルゲンが、導火線であるIgE抗体にくっつきます。すると、だいたい1分間でマスト細胞が活性化し、爆弾であるヒスタミンが体内に撒き散らされます」

「ヒスタミンは血管に作用して血管を広げるため、皮膚で起こるとじんましんや腫れ、鼻で起こると鼻炎に、肺で起こると喘息になります

「これがアレルギーが起こる仕組みです。アレルギーは人によってアレルゲンが違いますし、マスト細胞は身体中に存在するので、どこに症状が出るかも人によるのです


原因がわからないアレルギーもある?!

アトピー性皮膚炎や喘息などは原因がわからないことも多いそう…

特定の物質に対するIgE抗体を持っている人が、アレルゲンに触れることで発症することがアレルギー疾患の『狭い』意味での定義なのですね。

「そうはいっても、アトピー性皮膚炎や喘息などは、原因がわからないことも多く、IgE抗体がなくても起こるケースもあります。これが『広い』意味でのアレルギーの定義に関係します」

「たとえば、喘息の診断は、(1)肺や気管支など、空気が通る穴が時々狭くなって息が苦しくなることが何度も繰り返されること、さらに、(2)その原因がマスト細胞の活性化に対して起こっていたら喘息と診断されます」

「ですが、マスト細胞の活性化は、IgE抗体が原因とは限らないのです。ですから、小児喘息の子どもの中には、IgE抗体がある子もいれば、ない子もいるのです。同様に、アトピー性皮膚炎もアレルゲンが見つからない場合があります」

「つまり、アレルゲンが特定される場合と特定されない場合があり、アレルゲンが特定されない場合は、『○○アレルギー』とは言いにくいけれども、広い意味でとらえると、喘息やアトピー性皮膚炎もアレルギー疾患といえるのです」

血液検査は確定材料にはならない

アレルギーの検査では血液を調べますが、それでもアレルゲンがわからないのでしょうか。

血液検査は診断の助けにはなりますが、確定材料にはなりません

「IgE抗体は確かに血液中に流れていますが、マスト細胞の穴にくっつく力が強いため、血中で検出される前にマスト細胞にくっついてしまうことがあります。ですから、IgE抗体の数値が低い、または高いからといって診断はできません」

「そのような意味では、実は食物アレルギーもIgE抗体の値で診断するのは難しいのです。症状も合わせて診断するしかありません」

花粉症は比較的アレルゲンが特定しやすいそうですが、喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーに関しては、血液検査がすべてではないのですね。


清潔志向がアレルギー疾患の原因にも!?

きれいにしすぎるのも良くない!?

では、そのアレルギーを持つ人は昔に比べて増えているのでしょうか。

「先進国に関していうと、増えていることは間違いありません。東京で言うと、20代の若者の10人中9人は花粉やダニ、食物など、何らかの物質に対してIgE抗体を持っていることがわかっています」

「増えているのは、喘息、花粉症、食物アレルギー。アトピー性皮膚炎は、理由はわかりませんが減少傾向です」

喘息、花粉症、食物アレルギーが増えている原因は何なのでしょう。自然に触れる機会が減ってしまい、清潔志向が進んだことがアレルギーの増加につながった、という意見もありますが…。

「それも一つだと思いますし、ほかにも食事や腸内細菌層なども関係していると考えられています。特に、ダニや花粉のような吸い込むアレルゲンは、細菌が多い環境にいるほど、それらに対するIgE抗体を作り出しにくくなるという論文が海外で出ています。ダニや花粉を細菌と一緒に吸い込むと、免疫の反応としてIgE抗体を作りにくくなるのです」

では、細菌がある程度ある環境の方が、アレルギーを防げるのでしょうか?

「理論的にはそうです。とはいえ、ダニや花粉と一緒に細菌を吸い込んだことで良い結果が生まれたという論文もありません。それに、細菌が多すぎると感染症にかかるリスクも上がります。どの程度の衛生環境がアレルギー発症に効果があるのかは、現時点ではお答えしにくいですね」

「動物園でアレルギーの免疫ができる」は本当!?

「1歳未満の赤ちゃんを動物園に連れて行くと免疫力があがる」は迷信!?

子育てをしているパパママの中には「1歳未満の赤ちゃんを動物園に連れて行くと免疫力があがる」という話をよく聞くそうですが、本当なのでしょうか。

「結論から言うと、『アレルギーの発症を抑えるために動物園に行く』ことは、私は勧めません。なぜなら、吸い込むタイプのアレルゲンと細菌を一緒に吸うとIgE抗体を作り出しにくくなるとはいえ、何度も繰り返して肺に入れる必要があります。動物園に数回行った程度で効果があるとは思えませんから、勧める理由がないといえます」

「似た話で、犬を飼うと良いという話もあるようですが、これは海外で『大きな犬を2匹以上飼っているとアレルギーになりにくい』という論文があります」

「ただし、日本は高温多湿で、さらに靴を脱いで室内に上がりますので、そもそもの生活環境が違います。さらにこの研究でも、アレルギーが減ったのは10%以下。ですからこちらも、アレルギーの発症を抑えるという目的では、勧められるものではありません」

アレルギーを防ぐには?

では、花粉症や喘息を防ぐために、できることはないのでしょうか。

(1)ある程度の日光に当たること

体内のビタミンDが活性化するとIgE抗体が作られにくくなります。このビタミンDを活性化させる要因の一つが日光です。ただ、どの程度日光を浴びればいいのか具体的な研究はされていませんので、現時点では『ある程度』としかお答えできません」

(2)地中海食

地中海食とは、野菜・果物・魚介類をたくさん食べる食事のことで、アレルギーを起こしにくくするということがわかっています。ただ、こちらもどの程度の量をどのような頻度で食べればいいのかについては、まだわかりません。取り入れると効果が期待できる、ということです」

適度なお散歩や、野菜・果物・魚介類を取り入れた食事は、パパママの健康にも良さそうですね。


食物アレルギーが増えている理由とは

最後に、食物アレルギーが増えている理由も聞かせてください。

「一番の理由は、おそらく乳幼児期に卵や牛乳、ピーナッツなどを食べないからと考えます。親御さんが怖がって食べさせないのだと思いますが、今は食べさせない方がアレルギーに対して良くないことがわかっています」

「そしてもう一つの理由が、赤ちゃんの顔にできる湿疹です。湿疹ができている場所に食べ物がつくと、その食べ物に対するIgE抗体ができやすくなります

「また、湿疹があると、その後喘息にもなりやすいことがわかっています。赤ちゃんの頃に湿疹があり、IgE抗体がたくさんできている人は、湿疹がない人に比べて10倍くらい喘息になりやすいという論文があります」

アレルギーに対する体質は3歳ごろまでに決まる

「食物アレルギーを防ぐためには、まず生後6カ月くらいからいろんなものを食べさせること。食べさせる食品は、加熱したものを微量から始めればいい」と松本さん。そして、湿疹ができないように、できたらすぐに治してあげることが大切だと言います。

「湿疹は(1)生まれた時の免疫の影響、(2)顔を掻いてしまうこと、(3)皮膚の保湿因子が少ないことの3つが主な原因とされています」

「そして、家庭で気をつけてあげられることは(1)掻かないようにサポートすること、(2)皮膚が乾燥しないように保湿剤を塗ることの2点です」

保湿剤を塗ることは、アトピー性皮膚炎を防ぐ効果も期待できます。実際に私たちが行った研究でも、生まれてすぐから全身に保湿剤を塗った赤ちゃんは、塗っていない赤ちゃんに比べて30%程度アトピー性皮膚炎になりにくくなる、という結果が出ています

「ただし、日光に当たることや地中海食を取り入れること、保湿剤を塗るなどのアレルギー対策は、3歳ごろまでに行った方が良いでしょう。人間は1歳〜3歳の間に、多くのアレルギーに対する体質が決まってしまうとされていて、4歳以上になると、アレルギー疾患の発症は阻止しにくいと思われます」

子どもが3歳未満なら、お散歩や食事、保湿について見直して、できるだけアレルギーを防げるようサポートしてあげたいですね。

お話を聞いたのは…

  • 松本 健治さん

    国立成育医療研究センター、免疫アレルギー・感染研究部部長。医学博士。高知医科大学卒業。

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ライター紹介

近藤 浩己

1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。

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