今年(2015年)6月1日に道路交通法(道交法)が改正されましたが、今回の改正では具体的にどのような点が変更になったのでしょうか? また、これから夏休みにかけては、親子共に自転車での外出が増える時期。安全に自転車に乗るためにはどんな点に注意したらよいのか、自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんに詳しくお聞きしました。
今回の改正の最大のポイントは、自転車に対する交通違反取り締まりの強化。その背景には、近年自転車の交通違反による事故が多発しており、死亡者が出るケースも増えているという深刻な事態があります。昨年度は全国で8,070件もの人が交通違反で検挙されており、その数は9年前の10倍以上にあたります。
そもそも自転車には自動車のような免許制度がなく、点数制が存在しません。そのため、自転車の交通違反には青切符(反則金、行政処分)がなく、赤切符(罰金、刑事処分)が適用されます。
赤切符を切られると、簡易裁判所に呼び出され、検察官による取調べを受けます。その結果、略式起訴されれば5万円以下の罰金が科せられ(罰金刑)、前科がつくことも。ですので、よほど酷い違反でない限りは、警察も取り締まりにくいという側面がありました。
今回の改正では、赤切符による取締りを受けた回数、交通事故を起こした回数の合計が、3年間のうちに合計2回以上となった場合、自転車運転者講習の受講が義務付けられました。講習時間は3時間、5700円程度の講習手数料を支払う必要があり、もしもこの講習を受講しなかった場合は、裁判所に呼び出されて5万円以下の罰金が課されます。
不起訴で罰金の支払いがなかった場合にも、違反1回としてカウントされるので、この講習を作ることで、今まで以上に多くの違反者を取り締まることができるようになった形です。
危険行為とは、「信号無視」、「歩道を徐行せずに走ること」、「自転車専用レーン以外の場所を通ること」など全部で14項目。
▼参考:自転車運転者講習制度/警視庁
この14項目以外にも、都道府県が独自に定めた道路交通規則によって禁止されている、傘差し運転や携帯電話を使用しながらの運転なども、状況によっては「安全運転義務違反」として取り締まりの対象となります。
自転車運転者講習の受講は14歳以上が対象なので、子どもを自転車に乗せて走る親はもちろん、中学生以上のお子さんにも十分関係のある話です。法改正により、取り締まりが厳しくなった今こそ、自転車ルールをしっかりと再確認しておきましょう。
「まず、なんといっても、子どもを自転車に乗せるときはヘルメットを被せること。1歳前後のお子さんも例外ではありません。自転車に乗る際は、年齡に関わらずヘルメットの着用が絶対です。」
「また、乳児(0歳児)は、自転車用のチャイルドシートには乗せられませんので、おんぶ紐などでおんぶしてください。前抱っこの自転車運転は、自治体によっては禁止行為とされているケースもあります。視界や足元の動きが遮られてしまいますし、万が一転倒した際、お子さんが下敷きになってしまう危険性があるので避けましょう。」
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県など多くの地域で、乳児はおんぶして自転車に乗ることと定められているので、注意しましょう。
運転中に気をつけることはどういった点でしょうか?
「自転車は道交法上『軽車両』となるため、車道の左側通行が原則です。どうしても車道が危険なため歩道を通行するときは、車道寄りを徐行(時速6〜8km程度)しなければいけませんが、子どもを乗せた状態で徐行するのはなかなか大変ですよね。特に、電動アシスト付き自転車の場合は加速しやすいので、できる限り車道を走り、歩道を通行する際は走行スピードを意識して運転してくださいね。」
▼参考:幼児2人との3人乗り自転車、安全に乗るための選び方と注意点は?
では、子ども自身が自転車を運転する場合、事前にしっかりと教えておいた方が良いポイントは何でしょうか?
「小学生以下の子どもは自転車での歩道通行が認められていますが、大前提は歩行者の安全を妨げないことです。いつでもすぐに止まれるくらいのスピードを心がけるよう、お子さんに伝えてください。」
「また、自転車の事故が最も発生しやすいのは『交差点』です。信号のない場所、車の往来が少ない路地などのT字路もそのひとつ。道が交差する場所では、その手前で必ず一時停止すること、そして左右の安全を確認してから横断や右左折することを、改めて教えてあげてください。」
警視庁で公開している自転車交通安全教育用のリーフレットには、小学生用のものもあるので、こうしたものを参考にしながら、お子さんにしっかりルールを教えましょう。
▼参考:自転車交通安全教育用リーフレット/警視庁
ここ数年、自転車と歩行者の事故が多発しています。2013年に出た判決では、事故当時小学5年生の子どもが加害者となり歩行者を死亡させてしまい、子どもの母親に9500万円の賠償命令が出されています。
子どもが何かしらの事故を起こした場合、保護者が『保護監督責任』を問われ、賠償支払いなどの責任を負わなくてはいけません。そんな万が一の事故に備えて、自転車保険に加入する親御さんが増えてきているようです。
「最近の自転車保険は、比較的安価で、高額賠償にも対応した内容を備えたものが増えてきています。ただし安価とはいえ、年間数千円から2万円ほど費用がかかるものが主流です。」
「もっと手軽に保険加入をしたい場合は、現在加入済みの地震保険、自動車保険などを見直してみるのも、ひとつの手です。オプションや特約、もしくはそれら無しでも、自転車運転中に物損、人身事故を起こした場合の損害賠償が含まれることがあるので、新たに自転車保険に加入するよりもお得なケースもあるんです。また、自身の入院治療などは、医療保険や共済などでも支払い対象となりますよ。」
なるほど! もしものときに備えて、自転車保険を検討したり、今入っている保険を見直すことも大切なんですね。
「ブレーキがかからない、整備不良の車に無防備に乗りたいと思いますか? 自転車も車の仲間である『軽車両』です。安全な走り方を心がけると同時に、安全な自転車に乗ることも忘れないでください。」
「自転車を購入する際は、しっかりとした知識や資格を持つ人がいる自転車専門店での購入をオススメします。そして、どんなに良い自転車を買ったとしても、常に万全の状態に整備しておくこと。最低でも年に1度は定期点検に出し、乗っていて何か異常を感じたら、すぐに自転車店でみてもらいましょう。」
「また、ついつい見落としがちですが、タイヤの空気を常に充填しておくことも大切です。空気圧が低い自転車は、ブレーキをかけてから完全に止まるまでの距離が数十センチも長くなってしまうという実験結果もあります。適正な空気圧を保っていたおかげで、数十センチの差で車に轢かれなかった、ということもあるんですよ!」
普段、特にメンテナンスをしないで乗り続けがちな自転車ですが、事故を予防する意味でも安全性を確保するのは大切なこと。今回の道路交通法改正をきっかけに、改めてお子さんと自転車のルールや安全性について見直してみませんか?
道路交通法改正で何が変わったの?

そもそも自転車には自動車のような免許制度がなく、点数制が存在しません。そのため、自転車の交通違反には青切符(反則金、行政処分)がなく、赤切符(罰金、刑事処分)が適用されます。
赤切符を切られると、簡易裁判所に呼び出され、検察官による取調べを受けます。その結果、略式起訴されれば5万円以下の罰金が科せられ(罰金刑)、前科がつくことも。ですので、よほど酷い違反でない限りは、警察も取り締まりにくいという側面がありました。
今回の改正では、赤切符による取締りを受けた回数、交通事故を起こした回数の合計が、3年間のうちに合計2回以上となった場合、自転車運転者講習の受講が義務付けられました。講習時間は3時間、5700円程度の講習手数料を支払う必要があり、もしもこの講習を受講しなかった場合は、裁判所に呼び出されて5万円以下の罰金が課されます。
不起訴で罰金の支払いがなかった場合にも、違反1回としてカウントされるので、この講習を作ることで、今まで以上に多くの違反者を取り締まることができるようになった形です。
危険行為とは、「信号無視」、「歩道を徐行せずに走ること」、「自転車専用レーン以外の場所を通ること」など全部で14項目。
▼参考:自転車運転者講習制度/警視庁
この14項目以外にも、都道府県が独自に定めた道路交通規則によって禁止されている、傘差し運転や携帯電話を使用しながらの運転なども、状況によっては「安全運転義務違反」として取り締まりの対象となります。
自転車運転者講習の受講は14歳以上が対象なので、子どもを自転車に乗せて走る親はもちろん、中学生以上のお子さんにも十分関係のある話です。法改正により、取り締まりが厳しくなった今こそ、自転車ルールをしっかりと再確認しておきましょう。
自転車に子どもを乗せて運転する時に親が注意すべき点
こうした禁止行為には、私たちの日常生活に密着したさまざまな行為も含まれていますが、特に小さな子どもを持つ親が注意すべきことはどんなことでしょうか?「まず、なんといっても、子どもを自転車に乗せるときはヘルメットを被せること。1歳前後のお子さんも例外ではありません。自転車に乗る際は、年齡に関わらずヘルメットの着用が絶対です。」
「また、乳児(0歳児)は、自転車用のチャイルドシートには乗せられませんので、おんぶ紐などでおんぶしてください。前抱っこの自転車運転は、自治体によっては禁止行為とされているケースもあります。視界や足元の動きが遮られてしまいますし、万が一転倒した際、お子さんが下敷きになってしまう危険性があるので避けましょう。」
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県など多くの地域で、乳児はおんぶして自転車に乗ることと定められているので、注意しましょう。
運転中に気をつけることはどういった点でしょうか?
「自転車は道交法上『軽車両』となるため、車道の左側通行が原則です。どうしても車道が危険なため歩道を通行するときは、車道寄りを徐行(時速6〜8km程度)しなければいけませんが、子どもを乗せた状態で徐行するのはなかなか大変ですよね。特に、電動アシスト付き自転車の場合は加速しやすいので、できる限り車道を走り、歩道を通行する際は走行スピードを意識して運転してくださいね。」
▼参考:幼児2人との3人乗り自転車、安全に乗るための選び方と注意点は?
子どもが自分で運転する場合は、こんな点に注意!

「小学生以下の子どもは自転車での歩道通行が認められていますが、大前提は歩行者の安全を妨げないことです。いつでもすぐに止まれるくらいのスピードを心がけるよう、お子さんに伝えてください。」
「また、自転車の事故が最も発生しやすいのは『交差点』です。信号のない場所、車の往来が少ない路地などのT字路もそのひとつ。道が交差する場所では、その手前で必ず一時停止すること、そして左右の安全を確認してから横断や右左折することを、改めて教えてあげてください。」
警視庁で公開している自転車交通安全教育用のリーフレットには、小学生用のものもあるので、こうしたものを参考にしながら、お子さんにしっかりルールを教えましょう。
▼参考:自転車交通安全教育用リーフレット/警視庁
万が一に備えて…自転車保険加入のススメ

子どもが何かしらの事故を起こした場合、保護者が『保護監督責任』を問われ、賠償支払いなどの責任を負わなくてはいけません。そんな万が一の事故に備えて、自転車保険に加入する親御さんが増えてきているようです。
「最近の自転車保険は、比較的安価で、高額賠償にも対応した内容を備えたものが増えてきています。ただし安価とはいえ、年間数千円から2万円ほど費用がかかるものが主流です。」
「もっと手軽に保険加入をしたい場合は、現在加入済みの地震保険、自動車保険などを見直してみるのも、ひとつの手です。オプションや特約、もしくはそれら無しでも、自転車運転中に物損、人身事故を起こした場合の損害賠償が含まれることがあるので、新たに自転車保険に加入するよりもお得なケースもあるんです。また、自身の入院治療などは、医療保険や共済などでも支払い対象となりますよ。」
なるほど! もしものときに備えて、自転車保険を検討したり、今入っている保険を見直すことも大切なんですね。
「安全な自転車に、安全に乗る」ことが大切!
最後に、遠藤さんが提言されている「安全な自転車に、安全に乗る」という点について、アドバイスをいただきました。「ブレーキがかからない、整備不良の車に無防備に乗りたいと思いますか? 自転車も車の仲間である『軽車両』です。安全な走り方を心がけると同時に、安全な自転車に乗ることも忘れないでください。」
「自転車を購入する際は、しっかりとした知識や資格を持つ人がいる自転車専門店での購入をオススメします。そして、どんなに良い自転車を買ったとしても、常に万全の状態に整備しておくこと。最低でも年に1度は定期点検に出し、乗っていて何か異常を感じたら、すぐに自転車店でみてもらいましょう。」
「また、ついつい見落としがちですが、タイヤの空気を常に充填しておくことも大切です。空気圧が低い自転車は、ブレーキをかけてから完全に止まるまでの距離が数十センチも長くなってしまうという実験結果もあります。適正な空気圧を保っていたおかげで、数十センチの差で車に轢かれなかった、ということもあるんですよ!」
普段、特にメンテナンスをしないで乗り続けがちな自転車ですが、事故を予防する意味でも安全性を確保するのは大切なこと。今回の道路交通法改正をきっかけに、改めてお子さんと自転車のルールや安全性について見直してみませんか?