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子どもの心を知ることができるアートセラピーとは?

掲載日: 2015年7月13日更新日: 2017年5月16日井上マサキ
「空の色を◯◯色に描いていると—」など、絵の内容から心理を読み解く心理学を見かけることがあります。子どもがなにげなく描いた絵にも、心の動きが現れているのかも? 絵を使った心理療法である「アートセラピー」の教室を開く、チャイルドセラピストの暁さんにお話をうかがいました。

絵から「読み解く」のではなく「引き出す」

絵から心理を読み解く手法には、どのようなものがあるのでしょうか?

「一般的なカウンセリングでは、川や家などを配置する『風景構成法』や、色彩やモチーフを使った手法があります。例えば、『チューリップ』は子宮を連想されることから『母親』を、『太陽』は遠くから見守ることから『父親』を表すとされています。」

ただ、 手法により解釈に幅があり、一概に「これを描いたらこれを表す」と決められるわけではないそう。

「例えば『カモメ』は『警告』を表すと言われています。カモメの鳴き声が不安に感じるかは人それぞれですよね。色彩でも同様です。『紫』は『体の不調』を意味すると言われています。しかし、同じ紫でも『お母さんが紫を好きで、幼い頃から紫の物が身近にあった』という人では、紫の印象が他の人と異なります。」

同じように見える絵でも、子どもの背景や気持ちはそれぞれ異なるもの。何をどんな色で描いたかより、描いた絵がその子にとってどんな意味があるか知ることが大切なのだとか。

「アートセラピーでは、自分で描いた絵について『なんていう名前かな?』『これからどうなるのかな?』など質問をすることで、その子がいま感じていること・思っていることを外に出すきっかけを作るようにします。小さい子は自分の気持ちを言葉にするのが難しく、自分でも表現できないモヤモヤを抱えていることがあります。そのモヤモヤを外に表に現す=表現するお手伝いをするのが、アートセラピーの役割です。」

子どもが描いた絵には、モヤモヤした気持ちがなんらかの形で現れるそう。自分が描いた絵について話すうちに、「こんな感じ」と感情を表す言葉が出てくるのだとか。絵から心理を導き出すのではなく、絵を通して会話を重ねていくことで、子どもの心理を理解できるということですね。

アートセラピーを実際に体験してみました!

実際に体験するのが一番、というわけで、筆者の息子(4歳)とアートセラピーを体験してみました。 まず、紙を半分に折って折り目をつけ、その上に水彩絵の具を垂らします。最初は戸惑っていた息子ですが、筆の先からポタンポタンと落ちるしずくをみて、「雨がぶつかったところみたい!」と楽しんでいます。2色の絵の具を垂らしたら、紙を折って魔法をかけます。チチンプイプイ〜。紙を開くと、綺麗な模様が!「パパはどうなるかな?」「すごいグチャグチャになるかも!?」とワクワクして、「混ざったね!」とビックリしていました。「何に見える?」と聞いてみると「雲みたい!」とのこと。雨から雲に連想が広がったようです。

暁さんによると「これは潜在意識に働きかけるロールシャッハテストの一種ですが、『もののカタチを上手に描かなければ』という心理的ハードルを取る作用もあります」とのこと。

筆者は絵が描くのが苦手なのですが、これなら筆の先からポタンポタンと垂らすだけなので、気軽にお絵かきができました。気負わず無心になれるので楽しいですね。
次はクレパスを使ったお絵かき。黒いクレパスで紙を6つに区切ります。このうち1つの区画を選び、子どもが好きな色で落書きをします。グチャグチャ〜。子どもの落書きが終わったら、大人が「その落書きが何に見えるか」を考えます。思いついたら、落書きにさらに描き足してイメージを近づけます。トトロのまっくろくろすけに見えたので、目を描き足してみました(中央下)。

今度は大人が落書きをする番です。思いつくまま、グニャグニャと線を描きました(中央上)。子どもにはネコに見えたらしく、目を描き足して「ここが耳みたいにピンとなってて、ここがしっぽ!」と説明してくれました。 「何色のネコ?」と聞いてみると、「んっと、青のネコ!」と青いクレパスで体を塗り始めます。「名前は何にする?」と言う質問には「あおねこ!黒猫のひっかけ」とのこと。思わぬところで”ひっかけ”という言葉が登場しました。5つの枠が絵で埋まったら、最後のステップ。5つの絵を使って子どもに物語を考えてもらいます。最初に出てくるのは誰かな?など、聞いてあげると話しやすくなるようです。結果、「まっくろくろすけ」と「あおねこ」と「ちょうちょが」、水色の「携帯型オバケ」をやっつけて、オバケは元の姿に戻り、最後にみんなでキャンディーをなめた!という、お話になりました(笑)

自宅で絵を描く時のポイント

最近、戦隊ヒーローに夢中な息子。その影響で「やっつける」という発想が出たのかな?と思いましたが、最後は仲良しになっているのが意外でした。

「『やっつける」なんて言葉が出ると、お母さんは『かわいそう』と言ってしまいがちですが、 親が答えを先回りせずにじっくり聞くのが大切です。子どもの話を聴く時は共感したり、合いの手を打ってあげてください。さらに質問をしたり、じっくり耳を傾ければ、“なにをやっつけたいのかな?”と探るチャンスにもなりますよ』

また、 親子でいっしょにお絵かきをするときのポイントは、その絵からお話しを展開していくことにあるそう。

「描いた絵から発想して『なんていう名前?』『これからどうなるの?』など、物語や関係を聞き出してみましょう。すぐに言葉が出てこなくても、誘導したりせずに待ってあげてください。言葉が出てこないということは、逆に考えれば一生懸命思考しているということ。思ってもみない発想や言葉が飛び出すことがありますよ。」

筆者の息子の場合、おばけをやっつけた後に一緒に仲良くなっているので、単純に暴れて終わりではなく、友だちになりたい気持ちがあるのかもしれません。 子どもが一生懸命考えて話してくれる物語や登場するキャラクターから、日常会話ではわからない、深層心理を知ることができるんですね。

逆に注意するべきポイントもいくつかうかがいました。

  • 評価しない:上手い下手は関係なく、なにを描こうとしているかが大事。評価を気にして絵を描くのではなく、“本音“で描けるといいそうです。
  • 決めつけない:「ネコを描いたんだね」など、横から口を出さないようにしましょう。ネコではなく、オリジナルの生き物かも。子どもの自由な発想に任せましょう。
  • やり方を教えない:「星はこうでしょ」など、なるべく誘導をしないように。画材の使いかたなど、より表現が広がる方法については教えてあげましょう。先導するのではなく、寄り添うイメージで。

この他にも、汚れてもいい服やスペースの確保など、絵を思いっきり描ける環境も作っておきたいところ。家が汚れるのでは…!と親がピリピリしていると、子どもものびのびと描けませんものね。

絵をコミュニケーションのきっかけに

こういったアートセラピーはお母さんにもオススメなのだとか。暁さん自身も育児で悩んでいる時にアートセラピーに出会い、心が軽くなったそう。

絵を描いてみると、自分の気持ちの中のモヤモヤしたものがその絵に現れ、自分自身で『いまこんな感じだったんだ』と気づくことができるんですね。モヤモヤした形のないものを視覚化することで、気持ちが整理されて、次の一歩を踏み出すきっかけになります。とはいえ、あまり気負わずに、デトックスの一種と思って気軽に描けるといいですね。」

子どもが日頃どんなことを感じているのか。対話して聞き出すのは難しいですが、親子で一緒に絵を書きながら会話をすることで気付かされることもありそうです。親子のコミュニケーションツールとして、絵を描いてみるのはいかがでしょうか。

※参考書籍

お話を聞いたのは…

  • 暁~Akatsuki~ さん

    チャイルドセラピスト。ジュエリーデザイナーとして活動する中、育児に悩み、アートセラピーとの出会いで、子どもとのコミュニケーションがスムーズになったことに感動。もっと多くの人に、気軽にアートセラピーを体験してもらえるように、アートセラピー絵本『海を飛ぶたね』を出版。7月にはNYCにてワークショップ開催予定。長津田のわいわいアリスでは、無料体験レッスン随時受け付け中。

  • 暁~Akatsuki~さんの公式サイト
  • わいわいアリス
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ライター紹介

井上マサキ

1975年生まれ。小学生の娘と保育園の息子を持つ二児の父です。SE時代に会社で男性初の育児休暇を取得。フリーライターに転身後も家事育児を続け「ほぼ主夫」状態に。IT、ネット、スマホが得意分野。路線図が好きで、額縁に入れて飾るほど。

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