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「子供と汗」の最新&正しい知識! 多汗症&無汗症&臭い対策も

掲載日: 2020年1月14日更新日: 2020年1月14日近藤 浩己

大人に比べて、子供は汗っかきのイメージ。少し遊んだだけなのに、子供が汗びっしょりのときがよくありますよね。

そこで今回は、子供の汗のメカニズムや、発汗の適正量について、中京大学スポーツ科学部スポーツ健康科学科の松本孝朗教授に聞きました。

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子供の発汗量は大人の半分程度

どうして子供はあんなに汗をかくのでしょうか。

「結論から言いますと、『子供は汗っかき』というのは正しくありません」

そもそも身体にある汗腺(汗が出る穴)の数は大人も子供もほぼ同じで、成長とともに皮膚が伸びて、穴が大きく広がるだけです。さらに子供は、汗をかく能力も未発達。汗腺がまだ小さいこともあり、皮膚1cm×1cmの面積から出る汗の量も、大人の2分の1程度の量しか出ていません

「汗腺から汗が出るのは、皮膚の奥にあるスポイトから水が出ているイメージです。このスポイトが子供は小さく、水を出す能力も低いので、まだ上手に汗をかけないのです」

子供は汗っかきのイメージでしたが、実は大人よりもかいていないとは驚きです。

子供の発汗能力は思春期まで未熟!

では、子供が汗っかきに見えてしまうのはなぜなのでしょうか。

「暑い場所に対応するには体温調節が必要ですが、それには2つの方法があります。1つ目は発汗で、皮膚の上で汗が蒸発するときに、熱を奪って身体を冷やします」

「2つ目は、皮膚の血流量を増やして皮膚の温度を上げることです。熱は、温度が高いところから低いところに移動するので、皮膚と周りの空気の間に温度差ができれば、熱が体外に放出されて身体が冷えます」

「ですが、子供は発汗能力が未熟なので、2つ目の皮膚温度を上げる方法に依存せざるを得なくなります。それによって、皮膚の温度が上がれば顔も赤くなります。そのため、すごく汗をかいている印象に見えるのかもしれません

「また、体重1kgあたりの皮膚の体表面積(皮膚の表面積)が大人よりも大きいことも要因の一つだと思います。体表面積は、体の凹凸が大きいほど値が大きくなるもので、同じ1kgの粘土でも丸い形と凹凸のある形では、凹凸のある形の方が体表面積は大きくなります」

「大人は体が大きい分、この値が小さいのですが、子供は体が小さいので凹凸が多く、体重あたりの体表面積も大きくなります。この値が大きいほど外気温の影響をより受けやすいので、大人に比べて熱しやすく冷めやすい体と言えます。そのため、暑い環境では、大人よりも体温が上がりやすいのです」

では、何歳くらいになれば、上手に汗をかけるようになるのでしょうか。

思春期を迎えるまでは大きな変化はないでしょう。男の子ならぐっと身長が伸びて声変わりが始まる時期、女の子なら初潮を迎える時期に汗腺も発達し、大人レベルの発汗能力に達します


子供の汗っかきはいる? いない?

結局のところ、個人差なども含めて、子供の汗っかきは「いない」のでしょうか。

思春期以前では、あまり差はないと思いますし、小さな子供で極端な汗っかきも少ないと思います。ですが、思春期以後は個人差が結構出てきます。たとえば男女で言うと、女性は男性ホルモンや筋肉量が少ないため、男性の半分程度しか汗をかきません。

「ほかにも、運動習慣がある、暑い場所にある程度いるなど、汗をよくかく環境にいる人は、よりたくさん汗をかける体になっていきます」

生活環境でも随分差が出てくるのですね。一部では「汗っかきは3歳までに決まる」という声もありますが、本当でしょうか。

1950年代の生理学が少し間違って伝わっているのでしょう。当時、熱帯から寒帯までのいろいろな環境で育った成人を対象に、皮膚1cm×1cm内の汗腺密度が調べられました。すると、たとえば同じ日本人でも、熱帯で育った人と、寒帯で育った人では汗腺密度に差があることがわかりました」

「さらに、乳児・幼児の能動汗腺(汗をかく力のある汗腺)の発達を調べた別の研究では、2歳までは汗腺の数の増加が認められたものの、そこで発達が頭打ちとなった。この2つの結果を合わせ、2歳までの環境が大事と言われるようになったのです」

「ですが、最近の研究では、『大人になってからでも汗腺密度が変わる』という結果が出ています。日本で育った人が熱帯地域で数年暮らすと、その地域の人の汗のかき方に近づいていくし、その逆も然りということです。こうしたことから、『汗腺の発達は2歳までにある程度決まるけれど、大人になってからでも環境の影響を受ける』と私は認識しています

2歳を過ぎても、大人になってからでも、環境次第で上手に汗をかける体に近づけられるのですね。

汗はたくさんかくほどいいの?

では、汗はたくさんかく方がいいのでしょうか?

「基本的にはイエスです。たくさん汗をかけるということは、汗をかく能力が高いということですからね。ただし、汗をかいた分、しっかり水分補給をしないと脱水症状を起こすので、子供の場合は特に注意してあげてください」

汗をかきすぎる「多汗症」という病気もあると聞きますが…。

手のひらと足の裏に大量の汗が出る『手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)』ですね。これは、体全体の汗の量は普通なのに、手のひらと足の裏からは滴るほどに汗が出る病気です

「100人に1人くらいの割合で見られますが、命にかかわるような病気ではありません。本人は人の目が気になって困ることもあると思いますが、汗をかけないよりはよほど良いです」

逆に、汗をかけない病気もあるのですか?

『無汗症』という病気で、全身が汗をかけなくなります。汗がかけないということは、熱を体外に放出できないということですから、少し運動しただけでも熱中症で倒れてしまうのです。非常に稀な病気で、冬でもお風呂の湯に浸かれずに水のシャワーで済ますことになります。専門の病院での治療が必須です

汗をかけないことは、身体にとって大変なことなのですね。汗の量が少ない人も気をつけた方がいいのでしょうか?

「普通に運動や入浴ができているのなら心配はいりません。汗の量が少ないという程度なら、個人差の範囲です」


汗のかきやすい身体の作り方

思春期までは発汗能力が未発達とはいえ、できることなら上手に汗をかける身体にしたいもの。親がサポートできることはあるのでしょうか。

暑さや寒さの両方の環境に、ある程度さらしてあげることです。『暑熱順化(しょねつじゅんか)』と言って、人は春先から夏に向けて少しずつ暑さにさらされることで、夏に汗をかきやすい身体に変わっていきます

「小学生は、登下校や体育の授業でそういった環境に置かれているので大丈夫でしょう。小学生以下の子供であれば、季節を問わず、外で遊ぶ機会をある程度作ってあげることで、遊びの中で暑熱順化ができていきます」

親として注意することはあるのでしょうか。

「真夏などは様子をよく見てあげることが大事です。顔を真っ赤にして汗をかいていたら、服を1枚脱がせる、日陰に移動する、水分補給をさせるなどのサポートが必要です」

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「あと、汗をかいたあとは、早めにシャワーを浴びさせるのがベターです。皮膚にいる常在菌は、汗に含まれる糖質や皮脂をエサに繁殖し、アトピーの原因物質や臭いの元になる物質を作り出します。汗そのものは無臭ですし、刺激性もありませんから、菌が繁殖する時間をできるだけ短くすれば、皮膚を清潔に保てます

できるだけ外で元気に遊ばせて、遊び終わったらシャワーを浴びる。これだけで、熱中症や臭い対策にもつながるのですね!

お話を聞いたのは…

  • 松本孝朗さん

    中京大学スポーツ科学部スポーツ健康科学科教授。医師、医学博士、スポーツドクター。長崎大学医学部を卒業後、長崎大学医学部附属病院等にて内科医として勤務。長崎大学熱帯医学研究所助手、愛知医科大学医学部助教授を経て現職。専門分野は環境生理学、運動生理学、スポーツ医学など。環境生理学の中でもヒトの暑熱適応を主テーマとして取り組む。最近は運動・スポーツ・健康を中心に、運動時のヒトの体温調節、運動後の疲労回復法、熱中症の予防、オリンピック・パラリンピックの暑熱対策など幅広い研究を行っている。

  • 中京大学スポーツ科学部
  • 研究課題

ライター紹介

近藤 浩己

1974年生まれ。ライターズオフィス「おふぃす・ともとも」のライター。トラック運転手からネイルアーティストまでさまざまな職を経験。しかし幼い頃から夢だった「書くことを仕事にしたい!」という思いが捨てきれずライターに。美容・ファッション系ライティングが得意だが、野球と柔道も好き。一児の母。

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