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保育者と保護者が共同で運営する「共同保育所」って?

掲載日: 2015年10月7日更新日: 2015年10月7日井上マサキ
保育園の運営方法にはさまざまなものが存在します。そのうちの一つが「共同保育所」。その魅力はどこにあるのでしょうか。練馬区にある「共同保育所ごたごた荘」を訪ね、共同保育所の特徴やメリット、普段の保育の様子を伺いました。

「共同保育所」は保護者と保育者が本音で話し合える場所

今回訪れた「共同保育所ごたごた荘(以下、ごたごた荘)」は、東京都が独自の基準で設置した「認証保育所」。保育者と保護者が話し合う場が多く設けられ、共に運営に関わっています。話し合う内容は運営方針や要望、行事、設備、食べ物など様々です。

その歴史は古く、設立されたのは33年前。「ごたごた荘」の設立にも関わった代表の遠藤さんは、元々は認可保育園の保育士だったそう。

「保育士として働くなかで、“先生と園児”という関係が、ちょっと窮屈に感じていました。子どもから教わることもたくさんあるし、もっと子どもと対等に接したい。同時に、保護者の方とも自由に意見を交わしたい。そんな時、同じ想いを持つ保護者に出会うことができました。一緒に話し合うなかで、子どもと保護者と保育者が本音を出し合い、共に解決を探る“育ち合い”の場を作ってみようという事になったんです。」

保育者と保護者が対等に運営に関われるのが、共同保育所の最も大きな特徴であり、魅力と言えそうです。

共同保育所で育む「縦」と「横」のつながり

異年齢保育による「縦」のつながり

「ごたごた荘」は住宅地の一画にあり、一見普通の民家風。子どもたちの元気な声に迎えられて中に入ると、年長さんから小さい子まで一緒の部屋で遊んでいます。まるで大家族のようです。「ごたごた荘」では0歳~1歳が2階、2歳~5歳が1階で、年齢が異なる子どもたちが同じ部屋で一緒に過ごしているそう。こうした小規模の異年齢保育も、共同保育所が持つ特徴の一つです。

5歳の男の子に「小さい子とケンカしたりしない?」と聞くと、「小さい子って、上(2階)の?」という返事が。小さい子=赤ちゃんであって、同じ部屋にいる子達の年齢差は気にしていない様子。

「年下と遊んでいる、という意識はないかもしれませんね。一般的な保育園だと、大人数の同年齢が集まるので、不得意なことを『同じ歳なのにできない』と比べてしまいがちです。異年齢の子どもが混ざり合うと、自分より年上・年下で比べなくなるので、その子の在り方をそのまま受け入れるようになります。」

“年齢”という枠を取り払うことで、子どもの個性を大切にできるのも魅力の一つなんですね。

保護者同士や地域という「横」のつながり

また、異年齢保育の取り組みは保護者の方にもメリットがあるのだとか。

「一般的な保育園だと、異年齢の親同士が知り合うということが少ないですよね。ここでは年齢や性別がバラバラの子どもたちが一緒に過ごす様子を見て『◯歳になったらこんな感じ』『女の子が生まれたらこんな感じ』というイメージが湧きやすいですし、先輩パパママと知り合えば育児の相談もできます。園と現役・卒園保護者と有志でメーリングリストを作って情報交換をしたりしていて、卒園してもいい関係が続いています。」

「ごたごた荘」にお子さんを預けている保護者の方にもお話をうかがいました。共同保育所に決めたきっかけはなんだったのでしょうか?

「保育園を探している時にこちらを見学したら、子どもたちがとてもフレンドリーだったんです。すぐに手をつないでくれて、そのままうちの子どもは初めての泥んこ遊びをしました(笑)。異年齢との関わりを通して、子ども自身が小さい子どもと遊んだり、面倒を見たりするのに慣れているんだと思います。」

また、別の保護者の方からは、親同士の「絆」について聞かせていただきました。

「設備や行事など、保護者と保育者で話し合いをすることも多いのですが、そのたびに顔を合わせるので保護者同士がとても仲良くなりました。パパ同士の繋がりも生まれて、近所で飲みに行ったりもしています。地域のコミュニケーションとしても、大きな絆になっていると感じます。」

異年齢保育による「縦」のつながりと、保護者同士や地域という「横」のつながりが生まれるのが、共同保育所の魅力と言えそうです。

子どもたちの自主性を大切に過ごす共同保育所の一日

取材に伺った日は、2歳~5歳の子どもたちが近くの畑に練馬大根の種を植えに行く日でした。みんなで手をつないで出発です。お兄さんお姉さんが道路の外側になるよう手をつないでいます。手をつなぐ人は決まっていないので「あの子がいい!や、この子はいや!などドラマも生まれます(笑)。」とのこと。ルールは最小限にして、あとは子どもの自主性に任せるスタイルなんですね。
近くの区民農園に到着! 保育士さんがあらかじめ耕してくれていた畑に、みんなで大根の種を植えます。「ごたごた荘」には園庭がないので、近くの公園や森にみんなで行くのが日課。草花遊びや栗拾いなど、季節を感じながら自然の中で遊んでいます。地域の人とのつながりも強く、畑に来る途中も住民の方と挨拶を交わしていました。種まきが終わったら周辺の草刈りのお手伝い。段々子どもたちの行動も自由になってきて、シソの葉っぱを取ったり、ママゴトを始めたり、虫取りをしたりと様々。年齢がバラバラなので、遊び方も違ってくるんですね。0歳~1歳の子どもたちは別の公園で遊んでいました。よちよち歩きの子や、三輪車を練習する子など、こちらも様々です。子ども8人に大人4人がついています。こうして手厚い保育ができるのも、少人数保育ならではのメリット
「ごたごた荘」に帰ってきました。手を洗ったり、汗をかいた衣服を着替えたりするだけで大騒ぎです。小さい子の支度を手伝う姿も見られます。同じ部屋で過ごす中で、自然と小さい子をいたわったり、大きい子を見習ったりできるようになるのだとか。
みんな揃ってお昼ご飯です。食べるペースや話題、箸の使いかたなどもバラバラなので、自然に年齢が近いグループに別れて座っているようです。さっき採ったシソの葉っぱもさっそくご飯に添えられていました。お兄さんお姉さんたちはいち早くおかわりをしています(笑)。

このあとパジャマに着替え、布団を敷いてみんなでお昼寝をしました。小学校入学前になると大きい子はお昼寝をしなくなるので、小さい子の寝かしつけを手伝うそうです。「小学校入学前の子たちにはお兄さん/お姉さんの意識を持ってもらうようにしています」と遠藤さん。こうした関わり合いができるのも、共同保育所ならではです。

異年齢保育であり、保護者と保育者が共に運営にかかわる共同保育所は、一般的な保育所とまた違った魅力があります。保育園選びの際に選択肢にいれてみてはいかがでしょうか。

お話を聞いたのは…

  • 共同保育所ごたごた荘

    NPO法人「ごたごた荘」が運営主体である共同保育所。1982年に保護者と保育者の有志によって認可外保育園として設立。2010年に東京都の認証保育所となる。「ごたごた荘」の名前は『長くつ下のピッピ』に出てくる同名の家から。

  • 共同保育所ごたごた荘

ライター紹介

井上マサキ

1975年生まれ。小学生の娘と保育園の息子を持つ二児の父です。SE時代に会社で男性初の育児休暇を取得。フリーライターに転身後も家事育児を続け「ほぼ主夫」状態に。IT、ネット、スマホが得意分野。路線図が好きで、額縁に入れて飾るほど。

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