寒さが増し、こたつでみかんが食べたくなる季節がやってきましたね。みかんはとても馴染みのある冬の定番フルーツ。でも、種類や保存法など、意外と知らないことも多いのではないでしょうか。そこで、みかんに関する雑学を専門家に聞いてみました。“みかんの達人”になって、親子の会話を盛り上げましょう。
そもそもみかんって何種類くらいあるの?

伊予柑やポンカンなど、みかんによく似た果物はたくさんの種類がありますが、一般的に「みかん」と呼ばれるものは一体、何種類くらいあるのでしょうか?
「みかんは『かんきつ類』に分類されていますが、かんきつ類は、世界中で何千種類もあると言われています。そのうちの一つである『温州(うんしゅう)みかん』のことを『みかん』と呼びます。日本では100種類以上の温州みかんが生産されています。ただ、スーパーなどでは、品種名で販売されていることは少なく、『愛媛みかん』など産地名で表したものがほとんどです。」
そう話すのは、みかん研究所の所長、中田治人さん。みかんの産地として有名な愛媛県では、約40種類の温州みかんが作られているそうです。
おいしいみかんができる条件とは?
ところで、なぜ愛媛県ではみかんの生産が盛んなのでしょうか?
「みかん作りには、年間の平均気温が15度以上あり、冬の最低気温が氷点下5度以下にならないことが条件になります。だから、九州から瀬戸内、東海など、暖かい地域で作られています。」
みかんの生産には、温暖な気候が大事なんですね。
「そして日照時間が長いことも大切です。同じ地域でも、南向きや東向きの傾斜地のほうがみかん作りに向いています。また、水はけの良さも重要ですね。水はけが良い土壌のほうが、みかんの甘みが強くなるんですよ。」
皮と実の間に隙間があるのはなぜ?
過度の水分は甘さだけでなく、みかんの形状にも変化をもたらします。皮をむくとき、実との間に隙間が開いているみかんがありますが、これは水分過多によるもので、本来は隙間がないのが良い状態なのだそう。
「隙間が開いているものを『浮き皮果実』と言います。果実の着色が始まってから収穫までの間、暖かく雨量が多いと、皮が成長しすぎるため、皮と実の間に隙間ができてしまいます。程度がひどいものだと、残念ながら長持ちしません。」
そのため、皮の成長を遅らせるための薬剤を散布したり、着色の進んだものから早めに収穫したりするなど、浮き皮果実を作らない工夫をしています。現在、みかん研究所では、こうした気象条件や温暖化に対応できる新しい品種の開発が進んでいるそうですよ。
え?新品種誕生には何十年もかかる!?
みかんなどのかんきつの品種は、どのように開発されているのでしょうか?
「花(めしべ)に別品種の花粉を交配し、種を作り出します。この種の一つひとつが新品種候補になるんです。1年間に1,000種もの新品種候補を育成しています。しかし、そのうち品種登録されるのは数年間に一つです。」
「みかんは種をまいたらすぐに実がとれるわけではありません。種から育てた苗を接ぎ木し、初めて実をつけるまで5年〜6年ほどかかります。その後、果実の特性調査や地域への適応性など、数年かけて評価し、審査を経て、新品種として登録されるまで、15年〜20年もかかるんですよ。」
「さらに、登録された新品種を農家が栽培し、生産ラインに乗せるまでに数年かかるため、一般的に、消費者の元に新品種が届くのは、交配してから25年〜30年かかっているのです。」
こんなにも長い年月と労力が費やされていたのですね。
ちなみに、愛媛県が開発した新品種「紅まどんな」と「甘平」は、品種登録されるまで、それぞれ15年〜16年かかっています。「紅まどんな」は、果肉が極めて柔らかくゼリーのような食感、「甘平」は、糖度が高く、しゃきっとした食感が楽しめるのが特徴です。


おいしいみかんの見分け方は?
このように、品種によってさまざまな食感の違いはありますが、同じ品種・同じ産地の中で選ぶなら、次のようなことが「おいしいみかん」の条件になるのだそうです。
- オレンジ色が濃い
- 形が平ら
- 枝の切り口(果梗)が細い
- 皮の表面にある粒状の細胞(油胞)が小さくて多い
しかし現在、全国の主なみかん産地では、外観の大きさ・色・形・傷に加え、光センサーによって糖(甘さ)・酸(酸っぱさ)もチェックして選別しているため、同じ品種・同じ産地のみかんであれば、味に大きな差はないのだとか。
「同一の等階級(秀・優・良やL・M・Sなど)であれば、品質のばらつきはほとんどありません。つまり、スーパーなどで並んでいるみかんは、産地や品種が同じであれば、おいしさはほとんど同じということになります。」
おいしさが均等になるように、出荷の際に手間暇かけて選別されているというわけですね。
みかんを揉むと甘くなるって本当?

よく、みかんの皮をむく前にもむと、甘くなると言いますが本当でしょうか?
「甘くなるというよりも、すっぱさ(酸味)が減る、というのが正解です。みかんを揉んで外的ストレスを与えると、その傷を修復しようとしてクエン酸を消費します。このクエン酸はみかんのすっぱさの元なので、クエン酸が消費された結果、甘みを強く感じやすくなるのです。」
ただ、皮を揉んだみかんは、ストレスがかかっているため、そのまま放置すると傷む原因に。みかんの皮は食べる直前に揉むのが良さそうです。
みかんが長持ちする保存法は?

「みかんは収穫後も呼吸をしています。そのため、保存するときは通気性の良いものに入れるのがベター。ネットに入っている場合は、そのままでOKです。ビニール袋に入っている場合は、ダンボール箱や紙袋などに移し替えたりすれば、比較的傷みもなく、長持ちします。保存温度は常温(5度〜10度くらい)が最適。暖房が効いている場所での保存は避けてください。」
ただし、あまり長く置いていると、水分が少なくなり、果肉がパサパサになってしまいます。
「おいしくいただくためにも、購入後は1週間から10日以内に食べ切るのがおすすめです。一度にたくさん買うよりも、こまめに買い足すほうが、みずみずしいみかんが食べられますよ。」
以上、専門家に聞いた「みかん雑学」はいかがでしたか? みかんについて、いろんなことがわかると、食べるのがいっそう楽しくなりますね。お子さまとお話ししながら、冬の風物詩「こたつでみかん」を楽しみましょう。