6歳未満の子どもを車に乗せる際、使用することが義務づけられているチャイルドシート。実は、幼児用チャイルドシートを使用している人の半数以上(52.8%)が正しく取り付けていないことが明らかになりました(2015年警察庁、JAF調査より)。そこで、チャイルドシートの選び方や正しい使い方について、TAKATA広報部の菱川豊裕さんに伺いました。
チャイルドシートは乳児用・幼児用・学童用の3種類

子どもの成長に合せて選ぶチャイルドシート。どんな種類があり、どのように選べば良いのでしょうか?
「チャイルドシートは、子どもの体重や体格によって種類や使い方が変わります」と菱川さん。
「大きくは新生児〜1歳頃までを対象にした『乳児用(ベビーシート)』、1歳頃〜4歳頃を対象にした『幼児用』、3歳頃〜12歳頃を対象にした『学童用(ジュニアシート、ブースターシート)』の3種類があり、乳幼児兼用、幼児学童兼用などの兼用タイプもあります。」
乳児の場合、車の進行方向に対して後ろ向きに取り付け、幼児になると前向きに取り付けて使用します。
「乳児用チャイルドシートだけ後ろ向きに取り付けるのは、赤ちゃんの首への負担を少なくするため。赤ちゃんは体にくらべて頭が大きく、新生児の頃は首の筋力で頭を支えられません。そのため、後頭部から背中にかけての広い面積で、衝突時の衝撃を分散して受け止められる後ろ向きチャイルドシートに乗せた方が、首への負担が少なくなります。」
チャイルドシートを買い替えるタイミングは?

それでは、どのタイミングでチャイルドシートを買い替えれば良いのでしょうか?
「チャイルドシートには適応する体重以外にも、参考年齢、参考身長が明記されていることがありますが、年齢、身長はおおよその目安。体重に合せて選びましょう。」
国内では1台のチャイルドシートで、乳児用と幼児用が兼用できる 「乳幼児兼用タイプ」が主流です。使える期間が短い乳児用シートに対して、乳幼児兼用タイプでは乳児のときは後ろ向き、幼児になったら前向き、と向きを変えて長い期間使えるというメリットがあります。ただし、乳児用単体と比べると、兼用タイプは大きく、重くなりがち。
使用頻度や何台の車で使うか、兄弟の有無など、ご家庭の状況にあわせて検討しましょう。
6歳を過ぎても学童用シートを使用
チャイルドシートの使用の義務づけは、6歳未満の幼児までですが、「6歳を過ぎても身長145cmぐらいまでは学童用シートを使用してください」と菱川さん。
「シートベルトは身長140cm〜150cm以上の乗員に適合します。シートベルトは胸郭や骨盤といった骨格に作用するように着用しなければなりませんが、体格の小さな子どもがシートベルトを着用すると、肩ベルトが首にかかったり、腰ベルトがお腹にかかったりして大変危険です。」
6歳の平均身長は約120cm。6歳を過ぎでも身長が145cmになるまでは、学童用シートを使い続けましょう。
取り付けは後席に。乳児用シートは助手席に取り付けNG
チャイルドシートは、どの席に取り付けたら良いのでしょうか?
「実は、シートベルトは、衝突時に衝突エネルギーを吸収するために適度に伸びるようになっています。そのため、チャイルドシートを使っていても、前席との間隔が狭いと、ベルトが伸びた際に子どもの頭が前席にぶつかってしまう場合があります。幼児用(前向き)チャイルドシートやジュニアシートを取り付ける際は、なるべく前席との間隔を広くすることが重要です。」
「衝突事故の際に1番安全な座席は、前面衝突からも側面衝突からも離れている後部中央席。ただし、シートベルトが2点式であったり、シート形状にチャイルドシートが合わなかったりして、うまく取り付けられないことが多いです。また、スペースの問題から左右の座席に大人の乗員が乗れなくなってしまうことがあります。その場合は、運転席の後ろか助手席の後ろの座席で、前方に広いスペースが確保できる方に取り付けましょう。」
助手席を利用しても問題ないのでしょうか。
「エアバッグが付いている助手席に乳児用(後ろ向き)チャイルドシートを取り付けると、エアバッグがふくらむ衝撃でチャイルドシートをはじきとばし大変危険です。乳児用チャイルドシートを助手席に取り付けて事故に遭い、エアバッグが作動し子どもが亡くなった事故が、日本でも数件起きています。」
「助手席は後部座席に比べ、事故の際の被害が大きくなりやすいので、幼児用(前向き)チャイルドシートや学童用シートでも助手席には取り付けず、なるべく後席に取り付けるようにしましょう。」
なかにはエアバッグが作動しないようにできる「カットオフスイッチ」がある車種もありますが、切ったつもりが切っていなかったということもあるので、注意が必要です。
シートベルトにたるみが出ないよう、しっかりと固定
「安全な席にチャイルドシートがあっても、間違った取り付け方をしていると期待した保護効果が得られません」と菱川さん。
「警察庁とJAFの調査によると、全体の半数以上の乳児用と幼児用のチャイルドシートが、取扱説明書通り正しく取付けられていませんでした。」
【参考】PDFデータ:チャイルドシート使用状況全国調査(2015)「乳児用、幼児用ともに、間違った取り付け方で一番多いのが、シートベルトの締め付け不足で、約8割の方が、シートベルトでチャイルドシートを十分に締め付けられておらず、グラグラしたチャイルドシートに子どもを乗せています。この状態では、せっかく使っていても、事故の際にチャイルドシートごと大きく移動して、前席などの車内構造物に子どもがぶつかり、怪我をする恐れがあります。」
「ポイントは、シートベルトにたるみが出ないよう、チャイルドシートに体重をかけて座席に押さえつけながら取り付けること。チャイルドシートを前後左右にゆすり、3cm以上動かなければOKです」
シートベルトを使わず取り付け簡単な新タイプも

現在は、シートベルトを使わずに固定できるISOFIX(アイソフィックス)チャイルドシートがあります。
「ISOFIXとは、1999年にISO(国際標準化機構)で国際規格化された、新しい固定方式。車についているISOバーにチャイルドシート本体のコネクターを連結すればいいだけなので、簡単にミスなく取り付けることができます。シートベルトを使用しないため、衝突時にチャイルドシートが前方移動する心配もありません。」

ISOバーは2012年7月以降に発売された乗用車には必ずついていて、これより前に発売された車種にもついている車がいくつもあるそう。チャイルドシートを選ぶ際は、チャイルドシートメーカーのホームページや店頭にある車種別適合表を見て、自分の車にしっかり固定できるものを選びましょう。
使用時はハーネスやシートベルトの締め付け、位置を確認
乳児用・幼児用チャイルドシートのチェックポイント
いざ子どもをチャイルドシートに乗せる際に、気をつけたいのがハーネスの締め付け方と肩ハーネスの高さだそう。
「事故などが起きたときに、子どもの移動量を少なくするために、子どもをチャイルドシートに座らせたら、アジャストベルトで肩ハーネスを調整し、子どもの鎖骨と肩ハーネスの間に指1本が入る程度まで、締め付けましょう。」
「後ろ向きの乳児用モードで使用する場合は、子どもの肩と同じか、肩よりやや下の位置に、肩ハーネスの高さを調整します。」

「前向きの幼児用モードの際は、子どもの肩と同じか、肩よりやや上の高さになるように肩ハーネスの高さを調整してください。」

最近はワンタッチで肩ハーネスの高さを調整できる便利なチャイルドシートもあるので、賢く選びたいですね。
学童用シートのチェックポイント
学童用シートの場合には、シートベルトが子どもに正しく着用されているかチェックしましょう。
「子どもを乗せた際に、肩ベルトが首にかからず肩の中心を通っているか、腰ベルトが腰骨を通っているかを確認しましょう。また、肩ベルトと腰ベルトが正しくジュニアシートのベルトガイドを通ることが大切です。シートベルトの緩みやねじれがないかどうかも確認しましょう。」

子どもを守るためにも、正しくチャイルドシートを選び、使い方をマスターしましょう。