子供のために絵本を選ぶ時、種類が多すぎてどれにすれば良いのか店頭で悩み込んでしまったりも…。そんなときに参考にしたいのが「絵本のプロ」の意見。そこで千代田区立千代田図書館で、児童や保護者向けのサービスや選書なども行う大塚桂子さんに、年齢別のおすすめ絵本について伺いました。今回は4歳編として「友達関係を学べる絵本」を紹介します。
4歳児に絵本を選んであげる際のポイント
まずは、4歳児に絵本を選ぶ際に、心に留めておくべきことについて聞きました。
「4歳は、その後の読書習慣が身につくかどうかを左右する時期と言われています。だから、本嫌いな子にさせないことが何より大事。押し付けは禁物です。お気に入りの絵本ばかり読んでもらいたがり、他の本に興味を持たないのも悪い事ではありません。とにかく、お子さん自身が興味を持てるものを選ぶことが最優先だということを念頭に置いてください」(大塚さん)
以上を前提としつつ、友達関係を学べるような絵本としておすすめしてくれたのが以下の5冊となります。
4歳児におすすめ!友達関係を学べる絵本
『三びきのやぎのがらがらどん』

(ノルウェーの昔話より 絵:マーシャ・ブラウン 訳:せた ていじ/福音館書店/1100円+税/発売年月:1965年7月)
一緒に暮らしている、仲良しで名前も同じな三匹のやぎ「がらがらどん」。餌を探しに山へ向かうとそこには恐ろしい化け物、トロルが。小さい2匹のがらがらどんは機転を利かせて身を守りつつ、一番強い3匹目のがらがらどんに勝負を託します。
<選んだ理由>
4歳児であれば、友達との関係を学ぶこともさることながら、まず悪者は懲らしめられ、正義は最後に勝つという「勧善懲悪」を理解して欲しいところ。いかにも恐ろしい姿に描かれたトロルは、悪役として不足はありません。その上で、三匹の友達の絶対的な信頼関係があってこそ、悪者に勝てるということを学んでほしいと思います。
『しんせつなともだち』

(作:方 軼羣 訳:君島久子 画:村山知義/福音館書店/800円+税/発行年月:1987年1月)
雪の中、食べ物に困っていたうさぎがカブを2つ見つけました。一つ食べて、もう一つはきっと同じように困っているだろう友達のロバくんの留守宅に。そこに帰ってきたロバくん、やはり食べ物を見つけたあとだったので、カブは他の友達のところへ。うさぎがはじめにあげたカブ、最後は誰のところに行き着くのでしょうか?
<選んだ理由>
タイトルそのままに、友達に親切にしてあげる話なのですが、それが「とりわけ良い事」であると大げさに強調されていないのがポイント。親切の連鎖が最後に輪になってつながるオチに、やさしい気持ちにさせられます。親切は回り回って自分に戻ってくる、ということに気づくことができるお話しです。
『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』

(文・絵:バージニア・リー・バートン 訳:村岡花子/福音館書店/1200円+税/発行年月:1961年8月)
ちいさな機関車、ちゅうちゅう。機関士のジムをはじめ、みんなに大事にされながら、客車や貨車を引いています。あるとき、重い荷物を引くのが嫌になり、暴走し逃げ出してしまいます。やがて古い線路に迷い込んで、動けなくなってしまったとき、周りのみんながとった行動は?
<選んだ理由>
やんちゃでわがままで、それゆえに失敗してしまう主人公に自分を重ね合わせるお子さんもいることでしょう。共通点を見出せる絵本は、没入しやすいのです。このお話では、誰しも一人ではなくまわりと関わって生きていることが分かるようになっています。また、この絵本はモノクロで渋い味わいの絵であることも特徴的。書店、図書館ではあまり目立たない、こうした渋めの絵の絵本も一度は手にとっていただきたいので候補として挙げてみました。
『ふわふわくんとアルフレッド』

(文・絵:ドロシー・マリノ 訳:石井桃子/岩波書店/800円+税/発行年月:1977年6月)
アルフレッドの友達、おもちゃのくまのふわふわくん。赤ちゃんのころからずっと一緒だったのに、新しいとらのおもちゃ、しまくんがやってきてからというもの、ふわふわくんはまるで相手にされません。そこでふわふわくんは、アルフレッドを試します。二人の関係はどうなるのでしょうか。
<選んだ理由>
新しいおもちゃが来ると、大事にしていたはずの古いおもちゃをないがしろにしてしまう。これを友達にやってしまったら、とても寂しいことですよね。子どもにとっては、友達を大事にすることを学べる絵本。親にとっては子ども時代のそんな切ない思い出が蘇る絵本です。
『しろいうさぎとくろいうさぎ』

(文・絵:ガース・ウィリアムズ 訳:松岡享子/福音館書店/1100円+税/発行年月:1965年6月)
広い森に住んでいる、白いうさぎと黒いうさぎ。いつものように二匹で仲良く遊んでいると、黒いうさぎはなんども悲しそうな顔をしながら何やら考えごと。心配になった白いうさぎが、なにを考えているのかを聞くと帰ってきた答えは…。
<選んだ理由>
作中では仲良しのうさぎは「けっこん」するのですが、子どもに友達のかけがえの無さを感じさせるのにも良い絵本だと思います。いつもいつもいつまでも、ただ一緒にいたいと思える気持ち。読み聴かせるママ、パパもお互いが出会った頃を思い出すかもしれません(笑)。
以上が、4歳児向けの友達関係を学べるおすすめの5冊でした。
最後におまけで、大塚さんが4歳児に一押しの「とにかく子どもが純粋に楽しめる絵本」も1冊紹介しましょう。
『ふしぎなナイフ』

(作:中村牧江/林建造 絵:福田隆義/福音館書店/800円+税/発行年月:1997年2月)
見開きのページには、写真のようにリアルに描かれたナイフとたったひとことのセリフのみ。ふしぎなナイフがまがる、ねじれる、おれる、われる。のびて、ちぢんで…。さあ、最後はどうなるのでしょうか。
<選んだ理由>
ナイフがありえない形状に変わっていくだけのお話しですが、なぜか子どもは大好きです。大人はつい絵本に学びや意味を求めてしまいますが、純粋に絵や言葉を楽しんだり、想像を巡らせたりするのも、絵本の楽しみ方。絵本の読み聞かせ会でも大人気の本です。絶対にウケると保証しますよ!
ちなみに、4歳ぐらいから、自分でひらがなの絵本を読める子どもは出てくるものの、絵本は文字を追うのではなく“絵を読む”べきもの。物語に集中し、楽しむことができるように、親による読み聞かせはせめて6歳ぐらいまではそのまま続けるべきとのこと。いずれ読んであげたくてもできなくなるわけですから、たとえ忙しくとも読み聞かせの時間を大切にしてあげたいものですね。