ついつい子どもが夢中になってしまうテレビやゲーム。「1時間だけね」なんて約束をしても、なかなか守ってくれなくて困ります。どうすれば、子どもはすんなりとテレビやゲームをやめてくれるのでしょうか。専門家に聞きました。
子どもにはテレビやゲームをやめる理由がない

そもそも子どもはなぜ、テレビやゲームをなかなかやめられないのでしょうか。
「『楽しいからやめられない』ということもありますが、『面倒なことを後回しにしたい』という気持ちもあります。」
こう答えてくれたのは、谷町こどもセンター(大阪市)で所長を務める、臨床心理士の日下紀子さん。ただこの心理は、子どもに限らず、大人にも当てはまると言います。
「例えば、しなければいけない用事があるのに、ついダラダラとテレビを見続けてしまったりすることはありませんか?億劫なことを後回しにしたい心理は、大人も子どもも同じです。」
とはいえ大人の場合、社会的な役割や責任を自覚しているため、面倒でも「今、するべきこと」を判断して、行動に移せるのだそう。また、後回しにすることで、余計な手間が増えるなどの予測が立てられるうえ、面倒なことをやりきった後の達成感なども経験しているので、気持ちを切り替えやすいのだそうです。
「大人に比べて、そうした経験が少ない子どもからすれば、今見ているテレビやゲームをやめてまで、他のことをする理由がないのです。」
確かに、これといった用事がなければ、大人だってテレビやゲームからはなかなか離れられないもの。責任を感じる必要がない子どもなら、なおさらやめにくいのも納得です。
約束を理解できるのは3歳くらいから

でもママからすると、せめて「○時までね」などの約束は守ってほしいところです。何歳くらいになれば、子どもは約束を守れるのでしょうか。
「守れるかどうかは別として、約束そのものは3歳頃から理解できるようになります。約束はルールと同じ。つまり、幼稚園などで『食事の前に手を洗う』『おもちゃは順番に遊ぶ』などができていれば、ママとの約束も基本的には理解できています。」
ただし、特にゲームは興奮を誘うように作られているものが多いため、「もっともっと」という気持ちになりやすく、なかなかやめられないのが難しいところだと日下さん。さらにテレビも、ママが食事の準備をする間などに時間つぶしで見せてしまうと、子どもが自発的に見始めたわけではないので見終わった後の満足感なども少なく、余計に気持ちの切り替えがつきにくいと言います。
「テレビやゲームの場合は、約束を守れるかどうかに焦点を当てるのではなく、与え方や、気持ちを切り替えやすい約束の仕方を考えたほうがいいと思います。」
そうしたことを見直すだけでも、子どもの気持ちの切り替えがスムーズになるそうです。
ゲームの内容を理解した上で約束
では具体的に、テレビやゲームは、どんな与え方や約束の仕方が良いのでしょうか。
「まず大前提として、与えるテレビやゲームの内容を、ママが把握しておくこと。そうすれば、満足感を得られるところに時間を設定して、具体的な約束ができます。」
内容を知らないまま「1時間だけね」など言うと、盛り上がっているシーンでいきなりテレビやゲームを取り上げてしまうことも。すると「今いいところなのに!」と子どもは不愉快になってしまいます。
「大人だって、ドラマなどのクライマックスシーンでテレビを切られると腹が立って気持ちの切り替えが難しいですよね。でも、内容を知っていれば、『○ 話まで』『この敵を倒すまで』など、キリがいいところに約束を設定できます。」
また、例えば食事の準備をする1時間の間にDVDを見せるのなら、1時間で終わるもののなかで、子どもに選ばせるのが良いそう。
「キリよく見終わるのはもちろん、自分が『見たい!』と思ったものなら満足感が得やすいので、気持ちも切り替わりやすいと思います。」
「ママが内容を理解する」「子どもに選ばせる」「内容に合った約束をする」の3つがポイントなのですね。
パパママと一緒にゲームをすればすんなりやめる!?

さらに日下さんは、「パパやママも一緒にゲームを楽しめば、より切り替えがスムーズになる」と話します。
「子どもは、パパやママと遊ぶのが大好き。なので、パパやママと一緒に楽しめば、二人で遊ぶことが楽しいからこそ、親がやめれば子どももやめようという気持ちになりやすいはずです。それに、『やめるの残念だよね』という気持ちも共感してあげられますし、共通の話題も増える。ただし、パパ・ママのほうが夢中になりすぎないように注意してくださいね(笑)」
約束は約束!泣いてもブレないこと
約束の仕方を工夫したり、一緒にゲームを楽しんだりすれば、子どもも気持ちの切り替えがスムーズにいきそうです。でも、こうした対応をしても子どもがテレビやゲームから離れてくれないときは、どうすればよいのでしょうか。
「そのときは、『約束だから』とテレビを切ったり、ゲームを取り上げたりしてかまいません。泣いたからといって時間を延ばすと『泣けばいいんだ』と思ってしまいますから。イニシアチブはあくまでママが取ってください。」
子どもの気持ちを理解してあげるのは大切ですが、約束は約束。「あとちょっと」など、具体的でない約束はせず、ママ自身がブレないことが大切です。
ゲーム機は親が管理する
最後に日下さんは、ゲーム機を与える年齢についてもアドバイスをしてくれました。
「ゲームの多くは、そもそも興奮を誘うように作られています。興奮を鎮めるのは大人でも簡単ではない。だから、気持ちのコントロールが上手にできはじめる小学生くらいまでは、できればゲーム機は与えないほうがいいと思います。」
すでに与えてしまっている場合は、管理は必ず親がするよう徹底したほうが良いと日下さん。
「興奮を誘うものを与えっぱなしにして、急に『やめなさい』は酷なこと。ゲームをするときだけ渡して、終わったら親が預かるようにしてください。勝手にダウンロードなどができないようパスワードの設定も忘れずに。DVDも同様に、子どもが勝手に操作できないように管理してあげてくださいね。」
大人でさえ夢中になってしまうことが多いテレビやゲーム。約束の仕方はもちろん、与え方や管理の仕方も改めて考えたいですね。