親のちょっとした行動で、子供の可能性を大きく狭めてしまうことがあるのをご存知でしょうか。普段よかれと思ってやっていることの中にも、実は意外な落とし穴があるんです。そこで、日常的についやってしまう、子供のやる気や自信を削いでしまう親の行動を「見守る保育」を実践してきた『金沢八景保育園』の園長、石井望さんに伺いました。
1:「ほらね」「だから言ったでしょ」などの否定的な言葉

「子どもってそういう言葉を言われるとすごく自信をなくすんですよね。子どもは大きな可能性を持って生まれてきたんです。だから何かにつけて否定するのは残念だと思います。」
「ほらね!」と言われた子どもは、その『ほら』が何を指しているのか分からず、自分のことを分かってくれていないと感じてしまうそう。
「親は物事を肯定的に捉えることによって、心に余裕が生まれます。それによって子どもがすることに対して『こうなるからやっちゃダメ!』とはすぐに考えずに、『あ、こうなるから見てよう』と見守ることができますし、実際そうなったときに『ほらね』じゃなくて『痛かったよね』って子どもに言える。心の余裕が言葉の余裕にも繋がるんです。」
まずは、親自身が子どもの気持ちに寄り添って接することが大切なんですね。
2:子どもがやろうとしていることを一から十まで教えてしまう
「よく公園で見かける光景なんですけど、子どもがアスレチックを登っているときに『ほら、右手かけて! 次は左手かけて!』って親が指示しちゃっているんですよね。子どもがチャレンジしたいと思ったことを大人の指示でやらせてしまうのは残念だなと思います。そういうときは、例えばアスレチックだったらお尻だけを支えてあげるなど、子どもが考えて行動するのをジッと待ってあげるといいと思います。落ちたら痛いですし、『かわいそうだな』って思うのは親心ですけど、どうすると落ちるのかという危機を察知する感覚を大人も子どもも持っていないといけないと思うんですよね。落ちることも経験で、子どもは経験がすべて生き方に繋がっていきます。」
大けがをしないように注意することは大事ですが、多少のけがは良い経験と考えて、助けすぎないことが良いようです。
3:ダダをこねられると何でも買い与えてしまう
これは、良くないとわかっていても、ついつい面倒になって買ってしまうことがあります。こういう時にはどうすればいいのでしょうか?「お店で『買って、買ってー!』とグズっている子どもを見かけますが、親が恥ずかしい思いをしたくないがために『分かった、分かった』と簡単に買い与えてしまうのは良いことではありません。まわりの人は迷惑に思うよりも、『大変だな』という思いで見ていると思いますし。そこはむしろダダをこねている子どもに対して『買わないって言ってるでしょ!』とプンプンしている親のほうが、親子間でしっかり闘っているんだなって思いますね。親が『ダメなものはダメ』と一貫した態度をとっていれば、子どもは『あ、ここでグズっても無駄なんだ』って分かります。」
簡単に買ってあげてしまうことで、子ども自身が、「本当に欲しいものは何なのか」「どうすれば買ってもらえるのか」などを考える習慣がつかない上に、我慢すること、物を大切にすることなど、生きて行く上で大切なことが身に付かなくなってしまうそうです。
4:食事の前に兄弟に均等におやつをあげる

「例えばおせんべいだったら、子どもがある程度大きくなったら1枚ずつあげるのは問題ないんですけど。小さいうちは、ひとつのものを兄弟・姉妹で分けて食べると良いんじゃないかなと思います。絆を深めることになりますし、自分たちで和解して納得しながら食べることができますよね。親は『1枚しかないから分けて食べてね』という一言で終わらせるんです。そうすれば、『1枚をどうやって分けようか?』と子どもたちなりに考えます。そして、それを見ていると、子どもたちの関係性もよく分かりますよね。豊かな世の中になったからこそ、ひとつのものを分け合う気持ちを育めると良いと思います。」
5:他人の子どもに干渉しない
公園などで遊んでいる時に、様々な子どもと接する機会がありますが、あまり干渉しすぎるのもよくないと、距離を置く親も多いと思います。でも、他人の子どもも同じ気持ちで見守ってほしいと石井園長は言います。「これはちょっとテーマから外れるかもしれませんが。公園で子どもと遊んでいるときに、よその子どもが遊具から落ちたのを目撃しても駆けつけないのはすごく寂しいですよね。見ず知らずの子どものことも我が子と同じように見守ってあげてほしいです。子どもは親のすることをちゃんと見ていてマネします。親が困っている人を助ける姿を見れば、子どもは自然とそれをお手本にしますよ。」
子どものやることに対して、先を見越して手や口を出す前に、子どもを信じて待つことも大切。親は子どもの気持ちに寄り添いながら、「見て、守る」という適度な距離感を保っていくことで、子どもの可能性を引き出すことができそうです。